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【天秤の錘を持っていたのは】セリエA20-21第2節 インテル−フィオレンティーナ マッチレビュー 9/29追記あり

こんにちは!TORAです🐯

ついに!セリエA 20-21シーズンが開幕しましたね⚫️🔵

昨季ELの影響で初戦の相手は第2節のフィオレンティーナ。いきなりの難敵をジュゼッペ・メアッツァに迎えます。

●スタメン

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●前半-新戦術は相性悪し

開始わずか3分、ビラーギのクロスがゴール目の前のボナヴェントゥーラに。横のクアメにプレゼントパスをしてごっつぁんゴール。
まるで練習のようななんとも気の抜けた失点を早々にしてしまいます。

さて、この失点がそうであったように先ず目についたのはインテルの新しいビルドアップ。
そして、フィオレンティーナとの相性の悪さ、です。

インテルのビルドアップはブロゾヴィッチ、バレッラ、エリクセンの3人の組み立て方が昨季とはまた違う印象を受けました。

ポジションという概念よりもタスクという概念を優先しているように見えます。その目的はWBをより前に押し出すことと推察します。

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✔エリクセンは膨らんだり、降りたり。基本的にスペースを見つけてボールを要求。
✔バレッラは最終ライン落ちとフォローの走り込みが印象的。右サイドを活性化させる。
✔ブロゾヴィッチは上下動が目立つ。あまりレーンを変えずビルドアップの基準点に。

エリクセン(トップ下)が下がったり膨らんだりする組み立ては昨季も見られましたがオプションの域は出てなかったと思いますし、何よりこの動きはバレロに分がありましたよね。

なので、エリクセンがスムーズにプレーできていた点は◎。チームへの順応を期待できるものでした。

この新しいビルドアップにハキミを獲得し、ペリシッチを戦力としてカウントしたコンテ監督の目論見が詰まってそうですね。

しかし、新しい試みはサイドの展開を得意とするフィオレンティーナにWB裏のスペースという格好の餌を与えてしまうことにもなりました。

今日のフィオレンティーナのボール非保持はトリノ戦で見せたプレッシングを封印し、5-3のブロックをセットしてから人に対し強めの圧をかけて襲い掛かる組織的守備でした。

インテルの新しいビルドアップはフレームこそできているものの練度はまだ追いついていない印象です。おかげで連携ミスが多発、中盤でのロストが多くなると一気にサイドを使われるシーンが散見されます。

フィオレンティーナのボール保持とポジティブ・トランジションにおける狙いは基本的に共通しています。

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✔リベリを中心としたサイド攻撃。
✔ゆえに左で数的優位をつくり一気に押し上げる形が多い。

リベリはボールを引き出し、そこから前を向くのが上手い。ドリブルで運べるし、剥がせるし、溜めることもできる。本当に素晴らしいプレーヤーですね…!

トリノ戦では微妙でしたが、今回はチームの中心を担っていましたし、カストロヴィッリとのコンビネーションも抜群でした。

インテルがボールを持った(持たされた)ことも相まって、フィオレンティーナの組織的守備は迎撃体勢を保てて質が担保できていました。からのサイド攻撃を中心とするポジティブトランジションは非常に効果的。

上述の失点シーン、入口となったのもネガティブトランジションからWB裏のスペースを突かれた形です。

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ここ、ちょっとコンテ監督に苦言を呈したくて。フィオレンティーナのスタイルとクオリティを考えれば、あまりにリスクマネジメントを怠り過ぎたのでは?と考えます。

ビルドアップのスキーム自体はいいんです。トライする価値があったシステムと思います。

しかしながら、被カウンターというリスクが当然ある訳なのに、WBにまだ本システムで未知のペリシッチとサイドを変えたヤングに加え、強度に欠けるエリクセンとブロゾヴィッチの併用。

僕はこれを迂闊だ、と言わざるを得ません(3CBのスタメンはやむを得ずの側面が強いので触れません)。

●前半−行き詰まる左サイド

サイドについては言及しておきたい点がもう1つ。

試合前にペリシッチへの不安を呟いたのですが…

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残念ながら現実になってしまいました。

ペリシッチは個の攻撃性能は素晴らしいものがありますが、戦術面における汎用性が低く感じます。具体的にボールの引き出し方があまりに単調。
基本的にサイドベタ張りです。そこから上下動をするか、チャンネルを狙うか。このパターンくらいしかありません。勿論、中に全く絞らない訳ではありませんが効果的な動きはほとんどない、と言っていいレベルです。

フレキシブルなオフザボールで数的優位や位置的優位の創造を狙うコンテの遅攻において、ペリシッチは”現時点”でインテルのシステムに合っていない、と言わざるを得ません。

動きの少なさで守備の基準点を乱せず行き詰まる左サイド。これもまた、フィオレンティーナの組織的守備を破れない一要因でした。素人目で見ても明らかですが、これにコンテ監督が気付かない訳はありません。

ペリシッチを信じてた!と言われればそれまでですが、もしかしたらもっと戦術的な側面もあったのではないでしょうか?

僕が思うにペリシッチはもしかしたらクロスターゲットだったかもしれないですね(冗談に思われるかもですがけっこう真面目です笑)。

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✔ペリシッチに求めたのは組み立てや崩しではなくフィニッシュワーク。
✔実際、前半のヤングはファー、というかキエーザのところを狙うクロスが多かった。
✔ペリシッチ起用だけでなく、ヤングをチョイスしたのもここに理由があるかも。

皆さんはどう思いますでしょうか?

・・・とまぁ、こんな訳でインテルはポゼッションこそ大きく上回りますが決定機には繋げられません。
逆にフィオレンティーナにはあわや2点目というビッグチャンスも献上。

落胆したままハーフタイムを迎えようとした45+2分。

自陣からエリクセン→ルカク→バレッラでカウンターを発動。最後はラウタロがこれぞストライカー!といった形で決め切ります。

ゴラッソのラウタロは当然として、エリクセンのパス判断と精度、バレッラのロングドリブルからの引きつけパス。スキルが詰まった得点でしたね。

ロスタイムでの貴重な得点で前半を1-1で折り返します。

●後半−ファンダメンタルの実行力

後半、変化を出してきたのはインテルです。

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✔︎エリクセンの動きを減らし、シンプルなトップ下に。
✔︎これで中盤の3枚はベーシックな△に。
✔︎バーティカル(縦方向)の意識を強め、シンプルにスペースを突くプレーを増やす。

前半に事前準備していた戦術が思うようにハマらないと、後半は一転してシンプルに。選手の個と即興のハーモニーで殴ってやるぞ!というのはコンテ監督あるあるですね。

幸い、52分にラウタロの素晴らしい粘りからチェッケリーニのオウンゴールを誘発できました。
僕はこれで前に出ざるを得ない、前半のようにガチガチには守れないかな?と思いましたが浅はかでした。

フィオレンティーナは慌てずに、けれども諦めることなくハードにプレーできていましたね。
また、戦術的にも大きな変化はありませんでした。初志貫徹です。

その姿勢は57分に報われます。
インテルが押し込み前がかりになっているところをすかさずカウンター。カストロヴィッリのスルーパスにリベリが反応。素晴らしいキープで溜めると駆け上がってきたカストロヴィッリにラストパス。新10番はこれを冷静に流し込みました。

さらに63分、リベリに自陣でボールを持たれるとするするとダンブロージオを躱してパーフェクトなスルーパス。これに反応したキエーザがしっかり決めて2−3と逆転されます。

3得点ともカウンターから生まれました。試合におけるファンダメンタル。すなわち動作スキルや状況判断、戦術理解がとことん徹底されてます。

僕の愛読書に「サッカーの内容は決定機で判断すべし!」というお言葉があるのですが、この試合はまさに当てはまりますね。ポゼッションもシュート数もインテルが上ですが、決定機そして内容はこの時点ではフィオレンティーナが勝っていました。

この時点では。

●後半−カオスとドラマ

さて、ここから試合はさらにうねりをあげます。
コンテ監督は(珍しく)比較的早い段階から交代策のカードを切り続けます。

64分、エリクセン→センシ、ヤング→ハキミ
スモールスペースでもプレーできるセンシと圧倒的なスピードを誇るハキミ。質的優位を生み出せる2人の投入で早速リズムが良くなると…

74分、ブロゾヴィッチ→ビダル、バレッラ→ナインゴラン
インテリスタたちが夢に見た極道…ではなく強面コンビが早々に実現。2人は中盤に強度と安定をもたらします。

78分、ペリシッチ→サンチェス
この交代でインテルはフォーメーションが4−3−1−2に変化します。

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厳密に言えば、ここから先はインテルのハーフコートゲームと呼んでいい内容だったので(ヴラホヴィッチの決定機はあったけど)、2−3−1−4と表現していいかもしれません。笑


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✔︎ビルドアップ時はナインゴランかセンシが最終ライン落ち。
✔︎ナインゴランは守への切り替え時の保険がタスクがメイン。
✔︎センシは数的優位を作る為、ボール引き出しがタスクがメイン。

この超攻撃的システムは非常に流動的。センシとサンチェスはどうなっているのでしょうか?約束ごとがあるのでしょうけど、僕では正直分かりません。
このフットボールに再現性があるのだとしたら非常に大きな武器になりますね!

加えて、84分に攻撃の中心であったリベリが下がるとフィオレンティーナは機能不全に。ピッチにカオスが生まれます。

攻めに攻めてようやく迎えた87分、ビダルがルカクに楔を打つと→サンチェス→ハキミと繋ぎ、ダイレクトで折り返し。今日はとことん枠を捉えなかったルカクがようやくネットを揺らします。

ドラマはまだ終わりません。89分、ショートコーナからサンチェスのクロスにダンブロージオが頭で合わせて逆転!
インテルが劇的なシーソーゲームを制しました!

・スコア
インテル4−3フィオレンティーナ
3分クアメ、45+2分ラウタロ、52分、チェッキリーニOG、57分カストロヴィッリ、63分キエーザ、87分ルカク、89分ダンブロージオ


●雑感−天秤の錘は? 

どちらにも傾いた天秤は最終的にインテル側に錘がありました。その錘はなんだったのでしょうか?

僕は選手交代、というか選手層であると考えています。

ダンブロージオもインタビューで言及していましたね。

途中交代の選手たちのクオリティが試合の流れを変えた。

フィオレンティーナはキエーザ、そしてリベリの穴は埋められず。逆にインテルは流れを変えられる選手が揃っていた。
さらに5人交代も走るチームであるインテルにとっては追い風ですね。

5選手とも素晴らしいパフォーマンスでしたが個人的にはビダルとナインゴランの投入が最も大きなポイントだったと考えています。

ナインゴランはパスが合わなかったり、あっさりロストしたり、プレス躱されたりとミスが目立ちましたが気の利いたオフザボールと献身的なプレスバックなど、本質的な部分は評価に値すると思っています。フィットしたら面白そう。

逆に何故かすでにフィットした感があるのがビダル。高いプレー強度でフィルター役になりつつ、的確なパスでボール循環役とスイッチ役も兼任してくれました。タスクが多い!
特にフィルター役の面は終盤の超攻撃的なフォーメーションの中、なくてはならない貢献だと思っています。

センシをはじめハキミやサンチェスも非常に良かったですが、下地を作っていたのは彼ら、特にビダルかな、と。

●雑感−根本を考える

とはいえ手放しで喜べる勝利では当然ありません。4−3の逆転勝利は至高のエンターテイメントである一方、インテリスタたちの不満を爆発させてしまいました。
理由は3失点全てにフィオレンティーナを賞賛するだけでは足りない、こちら側の明確な落ち度があった点でしょう。

SNSでも多くの意見がありました。興味深く拝見していましたが、個人的にはいずれも正しいと思っています。

コラロフはプレーそのものだけでなく、プレーの姿勢もいただけないものでしたし(1失点目!)、

バストーニはよく頑張ってくれましたが、まだ中央を務めるには足りないものがあることを証明してしまいましたし、

ダンブロージオはリベリにちんちんにやられましたし、

中盤の選手も2失点目のブロゾヴィッチが代表例、プレー強度とリスクマネジメントが足りませんでした。

ただ、これらの根っこの部分ってなんなんでしょうか?デ・フライがいれば、シュクリニアルがいれば解決するものなのでしょうか?
僕としては答えはノーで、もっと抜本的な解決が必要と考察しています。

解決すべきは「攻→守のトランジション時にいかにリスクを低減するか」と断じます。
元々コンテのフットボールは裏返しされるのに脆いですが、3−4−1−2のフォーメーションと今日の選手配置によってファクトが改めて、そして強く顕在化しました。

具体的に言えば、「ボール保持における選手配置の練度」、「予防的マーキング」が主なトピックスになると考えています。

ここを深堀するともう一記事分のボリュームになるので今回は筆を置きますが、伝えたいことは下記の記事で多少触れているな、ということに気づきました。

未読の方はもちろん、既に読了して頂いた方も本試合後に見るとまた違って見えると思いますので宜しければ是非!

●9/29追記 ペリシッチのフィニッシャー役について

【前半−行き詰まる左サイド】の項にてペリシッチに求めていたのはフィニッシュワークだったかもしれない。と記しましたが、日が経ち、改めて本当にそうだったのではないか?という考えが強くなりました。

というのも、本試合の翌日に行われたバルセロナ−ビジャレアル戦のバルセロナも似た戦術を採用していました。

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Between The Postsより引用。

このパスマップが示す通り、バルセロナは左偏重のビルドアップシステム。ご覧の通りRSHのグリーズマンはビルドアップにおいての関与が著しく低いです

バルセロナはアンス・ファティ、アルバ、そして左に流れることの多かったコウチーニョの3人がクロスやキーパスを中央に送ることでゴールを狙います。

この際、グリーズマンはダイアゴナルなランニングからゴールを狙うフィニッシャーのタスクを担いました
結果、ゴールは他の選手でしたが役割はストライカーのそれです。

これを見て、「あ、コンテ監督もこのイメージだったのかな?」と改めて思った次第です。
狙いはもちろんキエーザですね。

キエーザを狙うなら、裏のスペースを狙ったり、ビルドアップのパス交換やドリブルで崩すなど、左から仕掛けたらいいのでは?とついつい考えちゃいますが、コンテ監督は左のキエーザを狙うからこそ右から攻めようと考えたかもしれません。

キエーザとペリシッチなら制空権は間違いなく後者に分があるでしょう。
またPA付近でダイアゴナルランに対応するのもキエーザにとってはややハードルが高そうです。

また、右がハキミではなくヤングなのも、コンテ監督としてはヤングの方がクロス精度に優れていると評価しているからと想定すると腑に落ちます。

結論、キエーザに対しフィニッシュの部分で1対1を作れば優位を生み出しやすい。ここが勝負どころだ!そう考えたのかもしれません。

もしこれが合っているとしたら、ビルドアップでペリシッチを責めるのは見当違いも甚だしいですね。丁重にお詫び申し上げます。

…と、それっぽく理論立てましたがもちろん推測の域は出ません。

バルセロナみたいに明確に左重視!ならこの説の後押しになってくれますが

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本試合のバルセロナは明確に左でのプレーが多いことがデータでも証明されている。WhoScoredより引用。

インテルは割とバランス良く攻めてるんですよね。試合を見ても左から前進しようとして行き詰まるシーンも散見されます(そして1失点目に繋がったり)。

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インテルはやや右寄りですが誤差の範囲内かなと思ってます。ちなみにフィオレンティーナはやっぱり左(リベリ)ですね。笑 WhoScoredより引用。

この追記でなにが言いたいかと言うと、

✔︎ペリシッチのビルドアップでの貢献については戦術面的には様子見。(個人のスキルや特性は除く)

✔︎コンテ監督はWBの使い方に変化を出して3-4-1-2をブラッシュアップしようもしているのかも。

✔︎次にペリシッチが起用された時には要注目。皆さんでわいわい意見交換できたらいいな!

です!


最後までご覧頂きましてありがとうございました🐯

Forza Inter!!⚫️🔵


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