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【United we stand】セリエA第28節インテル-サッスオーロ レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回はセリエA第28節、延期分のインテル−サッスオーロのマッチレビューです。
●スターティング
・インテル選手交代
59分、エリクセン➤センシ
70分、ガリアルディーニ➤ヴェシーノ
77分、ラウタロ➤サンチェス
・サッスオーロ選手交代
75分ロジェリオ➤キリアコプロス
75分トリアン➤ハラスリン
80分ボガ➤オッデイ
90分キリケシュ➤カラモコ
●前半−サッスオーロにリスペクトを
インテルは絶対的な主力のブロゾヴィッチとバストーニをサスペンションで欠きます。
中でも最終ラインはコラロフとダンブロジオも怪我が完治しておらず、深刻な人員不足が懸念されていました。
が、そんなインテルよりも遥かにエマージェンシーの警報が鳴り響いているのがサッスオーロ。
負傷離脱、Covid-19陽性等で複数名が欠場。特に痛いのは下記リスト×印の面々でしょうか。
・サッスオーロの出場時間トップ10と出場可否
1位コンシーリ ◯
2位フェラーリ ×
3位ロカテッリ ×
4位ベラルディ ×
5位ジュリチッチ ◯
6位カプート ×
7位ロジェリオ ◯
8位マキシム・ロペス ◯
9位キリケシュ ◯
10位トラオレ ◯
まさに満身創痍なわけですが、ひとつ忘れてはならないのがロカテッリ、ミュルドゥル、フェラーリはクラスタ発生(疑惑?)のアズーリの一員で陰性判定ですが感染拡大防止の為、起用しなかったということ。
ここにしっかりとリスペクトをしつつ、1.5軍のようなサッスオーロにインテルとしてはしっかりと勝たなければいけない一戦でした。
●前半−動と静のコントラスト
前半のポイントはなんといってもサッスオーロのビルドアップ設計とそれに対するインテルのアンサーでしょう。
まずはサッスオーロの設計から見ていきます。
超が付くほど流動的でしたが、基本は以下のスキームだと解釈しました。
✔︎右SBトリアンが上がってSH化。
✔︎左SBロジェリオが内にしぼってHV(3バックの左右CB)化。
✔︎2DHと合わせてM字型のビルドアップユニットが形成される。
✔︎右SHのトラオレはフリーマン。右よりも中央に位置することが多い。時には左にも。
フォーメーション的に表すと4-2-3-1→3-4-2-1へと可変するイメージです。が、上図のように分かりやすい配置ではありません。あくまで共通認識の為の表現として捉えてください。
核となっていたのは左SBロジェリオ。
SBとCBのハイブリッドタスクは欧州の「THE・トレンド」ですね。
彼が良かったのはHVとしてビルドアップに貢献するだけでなく、ボールが巡回して「今度は左から攻めようぜ!」って時にスムーズにSBのタスクをこなした点。
また、トラオレをフリーマンとしましたが、真にフリーマンなのはジュリチッチかもしれません。
降りて、膨らんではボールを引き出し、ビルドアップユニットを助ける。
ボールを運び、たたいてはチームを押し上げる。
もちろんアタッキングユニットとしてチャンスメイクも。
トラオレはジュリチッチのフレキシブルな動きを呼応して、足りないレーンを満たしている印象を受けました。
これが”超流動的”のメカニズムなんですが、左サイドは割と静的でした。
理由はボガの存在でしょう。彼は左サイドで個の打開力という基準点に。
デ・ゼルビ監督としては、ボガにはむしろ自由に動いて欲しくなかった。「そこにいる」という安心感が欲しかった、と。
・本節のヒートマップ
画像上:ボガは左サイドを主戦場にしていることが分かります。
画像下:フリーマンと表現した反対のトラオレ。プレーエリアの差は歴然です。
SofaScoreを引用。
動と静のコントラストが光るポジショナルプレー
対するインテルはどう守ったか?
ぶっちゃけ、特別なことはしていなかったように思います。
✔︎ルカクとラウタロは対面のCBを見つつ、DHのパスコースを背中で徹底的に切る。
✔︎前からプレスは好条件のみ。基本的には5-3ブロックを確実にセット。
✔︎中盤3枚はサッスオーロの基準点乱しに振り回されることなく配置で守る。
ハイレベルなポゼッションサッカーのサッスオーロ相手にハイプレスのリターンを求めるなんて欲張りなことはしない。
むしろ攻撃力(カウンター)アップの為に引いておきたい。サッスオーロは勝手にボールを握って進軍してくるわけですから。
ということで、成熟の域に達した5-3ブロックの組織的守備を徹底しますが、もう少し分解して見ていくと、中盤3枚が効いている感想を抱きました。
ガリアルディーニとエリクセンはサッスオーロのフレキシブルな動きに惑わされず、しっかりと配置で守備。
ガリアルディーニはやっぱりオーガナイズドに守るのが上手ですね。人を掴むというより空間をうまく掴むというか。
エリクセンも常に状況把握して立ち位置をアジャストしていたのが印象的でした。
バレッラはその膨大な運動量でチームとして配置で守るけど、要所要所の球際厳しいプレスでプレー制限をするという両立を体現。
上述のようにボガはサッスオーロの中ではポジションが静的なので、人に対してハードに付けるバレッラが対面だったのは効いていたと思います。
と、このようにインテルとしてはいつも通りの配置なんだけど、結果的にそれがサッスオーロ対策に。でもって、そのクオリティは相変わらず高い。
そのポゼッション率やシュート数から一見、サッスオーロが鬼攻めしているように見えるかもですが、中身はインテルの掌の上にあったように感じます。
ジュゼッペ・メアッツァでとにかく勝てなかった難敵サッスオーロですが、やはり今は比較的与し易い相手かと。
●前半-スカウティングがどハマり
サッスオーロの珠玉のポゼッションサッカーにインテルは明確な回答を示します。
狙いは一つ。右CBキリケシュの横のスペース。
そこに右サイドや中央からのスウィッチ(ここでは、一発サイドチェンジと思ってください)がとことん刺さりました。
なぜスペースが空くのか?
それはサッスオーロの設計上の理由です。
上述で紹介した図を活用して見ていきましょう。
・どうしてもCB横が空くサッスオーロ、その一
✔︎バランスの取れた3バックではない為、右SBトリアンが上がった裏のスペースはどうしても空く。
・どうしてもCB横が空くサッスオーロ、そのニ
✔︎左SBロジェリオがSBとして攻撃参加をすれば、2CBと右SBトリアンはスライドして3バック風味に移行。
✔︎結果、やっぱり右が空く。
ということで、特に右CB(右HV)横のスペースはサッスオーロの設計上、どうしても無理がかかる箇所でした。
それに加え、インテルの実行力がとにかく秀抜。
ゆえ、まぁーサッスオーロに刺さりました。
守→攻のシームレスさ
コンテ監督が発していたとし、DAZN解説の北川さんも何度も仰っていた「シームレス」というキーワードに応えるが如く、インテルは再現性のあるカウンター&スウィッチを披露。
5分の決定機はハキミが逸してしまいましたが、10分、すぐに同じ形で得点に昇華させました。ちなみのこの2つのシーンは「どうしてもCB横が空くサッスオーロ、そのニ」から生まれてます。
インテルのスカウティングがどハマり。
この試合を語る上で、ここは絶対に外せません。というわけで尺をうんと使ったので、インテルのボール保持とサッスオーロの非保持は省略笑
●後半-またも密集
後半、デ・ゼルビ監督はディテールに変化を出してきました。
✔︎ハイプレスの頻度を増やす。
✔︎全体も前傾姿勢が増え、インテル陣内は渋滞に。
✔︎その中でチームを”やや左寄り”に(特にDH)。
✔︎右に”ややアイソレーション”を生み出す。
またも密集発生
この状況下で輝いたのはサッスオーロのマキシム・ロペス。
狭いエリアでの状況把握、選択、プレースキル。頭ひとつ抜けてましたね。
個人的にマキシム・ロペスって、オンザボールよりも”実は”オフザボールの方が上手くない?とか思ってたんですが、やっぱり普通にオンザボールの方が怖かったです笑
特に右の”ややアイソレーション”を活かすスウィッチはカウンターとポゼッションというシチュエーションのちがいはあれど「前半のお返しだぜ!」感がありました。
前半とは異なり、文字通りポゼッションで”支配”される展開になりましたが、67分カウンターでラウカクが蜂の一刺し。
PA内で倒れたラスパドーリ。PKをアピールするサッスオーロの選手たちだけ時間がフリーズしてしまいました。
その隙にラウカクが抜け出す、抜け目のなさと決定力。にじゅうまる◎。
その後の失点ではインテル守備陣がごちゃっとしてフリーズしてしまうんですけど笑
ま、あれはトラオレのシュートを褒めるべきですね。素晴らしいコントロールでした。あと、直前のハキミの危険なロストにコラ!と少し喝を。
●後半−コンテ監督の交代策を考察
さて、本項ではコンテ監督の交代策をフォーカスします。
特にエリクセン▶︎センシの交代。
これにより中盤は
左からガリアルディーニ、エリクセン、バレッラの並びから
左からセンシ、バレッラ、ガリアルディーニの並びへ。
これは考察しがいがありますね。
考量の結果、守備力アップが主目的、と解釈しました。
サッスオーロの”やや左寄り”に対応する為、基準点乱しに対応できていたガリアルディーニを右へ。
右の”ややアイソレーション”対策にフレッシュでプレスの出足が速いセンシ。揺さぶられても多少の無理は効くはず(センシに多少の無理って表現は用いたくはないけど笑)。
また、センシはカウンター時に左のセカンドターゲット役も期待されていたでしょう。
中央にバレッラという強度を加えれば「あ、サッスオーロのディテール変化に対応する為のものだったんだ」というのが見えてきます。
カウンターの土台を作り直す
ボール保持にフォーカスしたのであれば、左からガリアルディーニ、センシ、バレッラが適当かと思いますが、コンテ監督は攻撃力の為に非保持の土台を作り直した、と睨みました。
実際、交代後からは二次攻撃、三次攻撃の頻度や質は低下させることに成功したと思います。
しかし、この時間帯で残念だったのはポジティブトランジションという炭酸の気が抜けてしまったこと。
代表ウィーク明け、しかもミッドウィーク。当然、責められませんけどね。
ただ、事象としては前半の津波のような速度と迫力は低下。特にトランジションの瞬間、スタートの部分は顕著に思えます。そう考えると試合終盤のバレッラのフルスプリントのポジトラは改めて驚愕しますね笑
また、その後にガリアルディーニに代えてヴェシーノを投入した点も消化できていません。この配置だと考え方の中心はガリアルディーニな気がします。
ヴェシーノならそのタスクを全うできると思ったか。異なるタスクでテコ入れをしたかったのか。
この辺は首を傾げたままです。今回、試合の振り返り視聴をせず執筆してるので、もう一回見れば発見があるかもだけれども。
皆様はどうお考えでしょうか?ご意見ございましたらコメントやTwitterのリプや引用リツイートを頂けると幸いです。
・スコア
インテル2-1サッスオーロ
(10分ルカク、67ラウタロ、85分トラオレ)
●雑感−団結して立てた
上述の通り、”試合のレビュー”のポイントはインテルのカウンター&スウィッチですが、”本記事”として最も強調したいのはここからです。
本節は
左WBのファーストチョイスを譲ってしまったヤング、
すっかりサブメンバーのガリアルディーニ、
活躍はするがスタメンには至らないダルミアン
など、絶対的な主力を欠く中、絶対的な主力になれない選手たちの活躍が目を惹きました。
目立つ活躍はなかったかもですが、個人的に戦術的な観点からだとこの試合にガリアルディーニは欠かせなかったと評価しています。
個のパフォーマンスで言えば、ヤングとダルミアンは秀逸。
特にダルミアンは崩しやカウンターのトリガーに、ビルドアップの逃げ道になる選手の予防的マーキングが抜群で、サッスオーロの攻撃のポイントや守備時のセーフティーさを根本から断ち続けました。
バストーニの不在を一切感じさせませんでしたね。このパフォーマンスをされるとコラロフやダンブロージオはちょっと焦るのではないでしょうか笑
前回のレビューは
今こそ、チーム全員で勝点3を積み上げていかなければ。
と結んだのですが、本節はまさにそれが実現となりました。
United we stand, divided we fall.
団結すれば立ち、分裂すれば倒れる。
次回もチーム一丸となって勝点3を取りにいきましょう!
FORZA INTER!!⚫️🔵
●4/9追記 サッスオーロのビルドアップについての補足
「サッスオーロのビルドアップユニットは両SBが内寄りに絞ってDHと多角形を作っていたように見えたし、そういった意見も目にしました。」
とのお声を頂きました。
図解するとこんな感じ。
シーズン前半戦のレビューより抜粋。
これはサッスオーロの最もプレーンなやり方で、確かにこの”いつも通り”でビルドアップしてくるシーンも多々ありました。
ですので、解釈は全くもって誤りではございません。
けど、それを踏まえても、前半は僕が取り上げた右SBトリアンがSH化、左SBロジェリオのSBと左HV(左CB)の両立が戦術のメインだったかなぁ、と思っています(後半はそうとは言えない)。
これが、対インテル仕様なのか、ここ最近の傾向かは断言できませんけど。
このご意見を頂いてから確認したのですが、選手の平均ポジションデータにしっかりと反映されていました。
・シーズン前半戦(第9節)のサッスオーロの平均ポジション。
画像荒くてすみません。
セリエA公式HPから引用
SB(22番と6番)の位置を覚えておいてください。
ちなみに9節のレビュー執筆時にこのデータは見ていなかったんですが、レビュー内で「2DHはロカテッリ(73番)がボール引き出し。マキシム・ロペス(8番)は中盤と前線のリンクマン的。」と表し、2人の位置関係を斜めにしていたのですが、それもデータで後押しされてました。
すみません蛇足なんですが、なんか嬉しくて、ついお伝えしたかったんです笑
・シーズン後半戦(第28節)のサッスオーロの平均ポジション
セリエA公式HPから引用
もうSBの位置が明確に違いますね。
これはやはり、本節のサッスオーロ両SBは”いつも通り”のビルドアップもするけど、SHっぽく振る舞っていたことの後押しになってくれそうです。
とは言っても、29節は8節と比べ、全体が高めであることが示すように、サッスオーロが敵陣でプレーすることが多かった=後方からの丁寧なビルドアップの時間が少なかったことも察することができるので、実際の試合はこの図ほどのインパクトはないでしょう。
ということで、改めて”いつも通り”ビルドアップは誤りではありません。
いつも通り+αだったんでしょうね。
おそらくこれはサッスオーロのシーズンにおける成長に思えます。対インテル仕様ではないかと。ゆえ、スカウティングがハマったということでもありますが。
最後までご覧いただきましてありがとうございした🐯
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