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【右に新しい鼓動】CL23-24 グループステージ第3節 インテルvsザルツブルク レビュー

こんにちは!TORAです🐯

今回はCLグループステージ第3節インテルvsザルツブルクのレビューです。


●スターティング

●前半-今季初となる4-2-3-1採用

本試合で最初に触れるべき点はザルツブルクの選手配置

3−5−2に対して噛み合いやすい4-2-3-1を採用してきました。

ザルツブルクはCLしか追えていないのですが、彼らの基本配置は4-4◆-2で、スタッツサイトFBrefで確認すると今季ここまでは一貫。

4-1-2-1-2って結局4-4◆-2では?笑

ということで、今季初となる4-2-3-1配置は『インテル対策』と推断できるでしょう。

その狙いはシンプルにプレスの噛み合わせかと。

3-5-2と4-2-3-1はバッチリ噛み合う

ザルツブルクは積極的な前からプレスでお馴染み。前節レアル・ソシエダ戦の前半は連動性に欠け、解説の方も(だいぶ歯に衣を着せつつ)苦言を呈するほどでしたが本節はしっかり修正してきました。

立ち上がり、インテルはボール保持局面で勢いに押され、非保持局面でも腰が引けて低重心。ボールも主導権も握られる中、わずか3分に本試合初となるシュートを許します。

難しい角度でしたがこの後に訪れるゴールよりもインテルを崩せていたシーン。パヴァールは良く粘って並走しましたし、ゾマーも甘いコースだったとはいえ勢いを殺すセービングが流石でした。

●前半-新たな鼓動の右サイド

入りが悪く、レアル・ソシエダ戦がフラッシュバックしてしまいそうなインテルでしたが、高い勉強代は活かされました。オープニング被シュート後からすぐに盛り返していきます。

取り上げたいのは右サイド

タイミングとダイナミックが高次元で同居する『PA内強襲』のアビリティを持つも、それに傾倒している感が強いフラッテージ(お前はそれが武器なんだからひたすらやり続けろ!って言われるのかもだけど)。

加入して直ぐに個人戦術も個人性能もそのレベルの高さを見せつけるも、どうしても時間の積み重ねが必要な連携・相互理解面が足りないパヴァール(以前noteに書いたけどガゼッタも指摘していた)。

エンポリ戦ではダルミアンが入るユニットでしたが、左に比べブレーキになっていたと言わざるを得ない内容で苦戦の大きな原因となっていました。

本節の右WBはダルミアンではなく、プレス耐性が懸念視されるドゥンフリースだったので実はかなり心配していたのですが、見事、裏切ってくれました。

フラッテージがフラッテージしていた上で、
右に高い機能性を生み出せた

これが本当に意義深く、本節の肝と見ています。

ファクトをいくつかに分解して見ていきましょう。

・フラッテージここにあり

最終的にフル出場だったフラッテージ。

FBrefによると、そのボールタッチ数は24回

45分で交代した対岸のムヒタリアンが31回、84分で交代したFWのラウタロが27回なので、知らない方が見たら「最前線のポストプレーヤーなのかな?」と思われる少なさです。

インクルソーレ(襲撃者)ここにあり。

このボールタッチ数だけで、今日は特性全開で戦っていたことが分かりますね。結果的に2点に絡み、成果もきっちり残すわけですが中盤選手がFWよりもボールタッチしない事実はビルドアップで誰かが何かをした補填を内包します。

・アクセントで効いた縦の入れ替わり

まず言及したいのは同サイドを担当するCBパヴァールとWBドゥンフリース。彼らによる縦の入れ替わりによる守備基準点ズラし。

「パヴァールが上がって、ドゥンフリースが最終ラインの担保になる」というムーブに意図を感じられる再現性がありました。

効果的な縦の入れ替えでマンツーマンを乱す

事実、パヴァールはこの試合最もボールタッチし、最もキャリーした選手に。

ただ「再現性がある」としましたが、あくまでこれはアクセント

主に主導権を取り戻す際のアクションとして熱心でした。ドゥンフリースを最終ラインに落とすのは今季の活躍を鑑みれば勿体無いと断じれますからね。

続いて、補填のメインとなったファクトを見ていきましょう。

・補填のメインは二重構造

フラッテージをフラッテージさせるためのメインとなった土台は二重構造。

ⅰ)ツートップが積極的に降りてきてフラッテージ分を補填

ⅱ)チャルハノールとムヒタリアンによるフォロー設計

前者、配置上は左のサンチェスが右に降りてきてボールに絡むことが多かったです。このタスクはもちろんハイブリット型のテュラムでもできますが、「サンチェスを起用した意味を見出せた」ことが大きいですね。これぞターンオーバー。

後者は例えるならばコンテ時代の中盤構成。ブロゾヴィッチとエリクセンが横関係になり、いわゆるダブルボランチっぽくなることでバレッラを高めに押し出すL字型の位置関係を今日は彼らがやったということ。

「これは絶対に記事で取り上げたい!」と思いながら見ていて、sofascoreの前半終了時点での平均ポジションを抜かりなく保存しておきました。

前半終了時点でのインテルの平均ポジション

フラッテージは24回というボールタッチ数の少なさのアリバイ証明をするかの如く、前線並みの高さでプレーしていたことが分かります。

チャルハノールも同じくですが、これはボール非保持(前からプレス)もリンクした平均位置かと。

セリエA公式だと保持・非保持で分けてデータ見れるんですが、これはCLなので確認できずで残念(文量の関係でインテルがどう前プレしたかは扱わないですw)。

選手位置をボール保持局面のみでさらに表すなら下記のようなイメージでしょう。

ムヒタリアンとチャルハノールが横関係

地味に見逃せないのが、カルロス・アウグスト

パヴァールがここから周囲にパスを預けて上がる保険として最終ラインをカバーできるようにバランスを取っていましたが、この絶妙な位置取りこそモンツァ時代に感じた彼の真価ですね。インテルではゴリゴリなプレーが目立ちますが笑

長々書いた上に重複になりますが、フラッテージがフラッテージした上で右の機能性を生み出した価値は甚だ大きい。バレッラが斜めに落ちるやり方とは文字通り180度異なる殴り方で相手のやりづらさと言ったらないでしょう。

先制点も左で作って中央レーンで刺し、流れの中で選手の左右も入れ替わってる部分がありますが、要は上図のボール保持図を圧縮したような配置で”戦術という殴り方”を遂行した末の得点と評価できます。

もちろんザルツブルクはフラッテージのこともしっかりスカウティングしているでしょうが、全体がここまでの練度だとは想定外だったのではないかと思えますね。

●後半-理想的な選手交代

HT、ムヒタリアンに変えてバレッラを投入。

前半にイエローを貰っていたことによるリスク管理が理由でしょうが、結果としてインテルがモードチェンジとなったことはザルツブルク目線で厄介だった。

本節のバレッラは今季のベーシックのひとつである『第二の心臓タスク』。ベーシックとしましたが、直近は発動していなかったので(やる必要がなかったので)2週間ぶりくらいかな。

前半でも取り扱ったボールタッチ数のスタッツを確認するとバレッラは45分で43回のタッチ。仮に前半から出場していれば(そして心臓タスクを90分やっていれば)、パヴァールと最多を争う数字だったはず。

最終ラインに降りて積極的にボールを引き出すバレッラ

彼が低めで引き取り手と出し手になってくれたことで、左CBバストーニと左WBカルロス・アウグストの解放が促されました。

前半は左よりも右にボールを集めていたインテルでしたが、この設計変化により後半は左の濃度が増加

この状況で前半とは逆。対岸の右WBが左のためにバランスを取る、それができるダルミアンの投入はいやらしい一手でした。

交代自体はコンディション管理が最大要因でしょうが、バレッラの交代同様に結果としてザルツブルクを悩ませたことでしょう。

カードやコンディション管理になりつつも、戦況に変化を付けられるのはなんとも理想的な交代策

後半は失点してしまいましたが、対応の甘さが一気に発火に繋がっており「崩された!やられた!」って感じでないのは救い。

勝ち越し弾は逆に向こうの甘さを突くカウンターパンチでしたしね。バストーニにあの場所であの空間と時間を与えたらそりゃ極上クロスが放り込まれるってもんです。バスト、失点の借りを返せてよかったね。

もちろん試合中はハラハラドキドキして見ていましたが、終わってみれば得点差以上の差があったと見ます。

新しい鼓動を生み、それに慣れさせなかったインテルの確度ある勝利

●雑感-マンツーマンやられますね

今季初となる4-2-3-1を採用し、マンツーマンでのプレスを謀ったザルツブルク。

直近ではトリノやサレルニターナも同様のアプローチでインテルに臨みました。

トリノはユリッチ印で元々マンツーマンですが、試合終了時に失神者を出すほど精力的。”いつも以上”であったことに疑いはない。

サレルニターナも「試合全体で4バックだった」と表現できるくらい3バックを崩すプレスをするのですが、対上位チームであるリスクを鑑みれば特別感はあったでしょう。

何が言いたいかというと、狙われてますよね

スカウティングで「(現状の)インテルにはマンツーマンプレスで挑むが良い」となっていると想定。考察しようとすると一記事分のボリュームになってしまうので、ここでは視点を絞りつつ超ざっくり記します。

一つ事実としてあるのがロングボールの減少

インテルは昨季に比べ、ロングボールが少なくなっています。言わずもがなのオナナロスに加えて、ブロゾヴィッチや非常に口惜しいですが元90番の影響もあるでしょう。

最終ラインへのダイレクトリスクが減ったこと。なんだかんだ新戦力が多く、戦術浸透や相互理解が序盤は浅いことが相手にマンツーマンプレスを選ばせる理由でしょうか。

レアル・ソシエダ戦がモデルケースになっていそう。サッカーの内容自体は黒星のサッスオーロを超えて今季ワーストなので。

加えて、インテルの撤退守備のフェーズを少なくすることも後押しになっているかと。5-3ブロックを崩すよりも手数かけずにスピーディーに攻めて、逆にインテル最終ラインを晒す。本節の失点は”正に”でした。

ボローニャ戦のザークツィ被弾もそうですが、最終ラインに一気に入れられた際の対応は明確な今季の課題。予防的マーキングが甘く、受けの段階で制限できていないので火種が多くてなくても発火を許してしまいます。

話を”インテルのビルドアップvs相手のハイプレス”に戻すと、この考察がある程度的を得ているようであれば、尚の事、本節の「フラッテージがフラッテージした上で右に機能性があった」ことが持つ意味に深みが出ます。

地上ルートが増えた今季、そのカードの枚数が増えることの意義を噛み締めることができた一戦でした。

現地はあまり評価が高くなかった試合ですが、個人的にはダービーに次ぐ拍手の大きさ。

以上!最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯

次回はローマ戦。

器が小さいもので、個人的には今季はダービー以上に勝ちたい試合です。とある選手にはここまで盛り上げてくれて感謝したいですね、するかい。

マジで頼むよ、インテル。

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