2021.8.3 見えない相手を予測する
2021.8.3 男性 27歳 美容師
「お互いの元々の出会いは絵画ですね。表参道のギャラリー。あの時「絵、値段、高!」と思って買えなかったんですよ。今、知り合いがニューヨークにいて。その子は墨絵みたいな作品を描いていて、値段は(表参道のギャラリーで販売していた作品の)半額くらいで「買えるな」と思って買って。けど、北沢さんに「(表参道の)あの絵買った方がいいよ」とか言って買わせておいて、自分は買わないで他の人の絵を買うという。そこは懺悔として謝っておこうかなと。
出身は九州です。田舎ですよ。大阪・福岡に行くくらいなら東京でしょ、みたいな感じで青山・表参道だろうみたいな。そこしか知らない部分もありましたし。けど、ここに来たら来たでいろんな人がいるなと思いましたよ。知らないゾーンの人達がいっぱいいるから。いろんな所から集まっている人が多いですし、かなり勉強している人達が多いです。自分の知らないようなことや知識を持っている人が多いので。その人たちと渡り合うとなると自分もちゃんと勉強しないと。会う人が皆、鋭いんですよ。そういう人って、同じような鋭い人たちの中で生活してきたからこそそうなっているので、自分もそういう人と会うとなると今のままでは駄目だなと思います。僕は美容がメインなんですけど、それだけ勉強すればいいわけじゃなくて。北沢さんと会ったのも、絵が好きだというのがあったからですよね。例えば軽井沢の話題が出た時に「へー、そうなんですね」という反応しか返せない奴だったらどうしますかという話になってくる。そういう絶妙なニュアンスの話ですよね。
うちのお店、変な人は来ないんですよ。(僕のような)こんな奴によく皆優しくしてくれるなと思いますよ。それって、(僕が)ガツガツしてないし、お金が欲しくてやっているわけではないというか。お金がないと生活できないですけど。見え見えな欲というのがあまり出ていないからかな、とか。
僕のインスタ。最近法則に気づいてしまったんです。僕のインスタを見ているのは女子が多いので、女の子のことを書くと皆コメントしない。分かってもらえそうなことを敢えて投稿すると、こんな投稿にコメントするの?みたいな。結構複雑で、返信してほしくてコメントする人もいれば、コメントしたいだけの人もいますし、気を遣ってコメントしてくる人もいますし。コメントしないけど、(僕のことが)大好きな人もいる、みたいな。いろんなパターンがあって、予測しないといけない推理小説みたいな感じですよ。なんだか悪徳っぽいんですけど、結構気を遣うんですよね。見えない人たちを予測して、(彼女たちが)どう思っているかを当てないといけないわけですよ。毎週火曜日の夜は4.5時間使って全員分(の投稿を)見るんですよ。休みの日にやるので時間の無駄ではないかと思うんですけど、でも損するものでもないんですよ。たかが一生の時間の週1、5時間。そこで勉強をすればまた違うのかもしれないけど。
僕は、始まりも終わりもない世界、という、そこがテーマなので。だから僕は滅びないんですよ。そう言うと、皆、ポカーンとするんですよ。生まれている限り、死を迎えますから。終わりがあるっていいですよ。今のまま、200年後も300年後も自分の生きてきた履歴が残って評価され続けるのって結構苦痛ですよ。リセットされるのが一番いいです。
常に握手をして人と別れます。コロナ禍で握手って、「え、この人握手するの?」みたいな。いろいろと勉強している人たちって握手したがりませんか?留学していた人とか。そういう世界で生きている人たちって礼儀として握手をするものなのかなって。日本にはあまりそういう文化はないですけど、そういうゾーンの人たちと日々接していると握手する機会は多い。僕は一般人だけど、いいところは真似しておこうと。
僕、もともと体育会系なんですよ。格闘技が好きでやってきた方で、細そうに見せかけて痛みに強い。見た目は草食系かもしれないけど、意外とがっつりしてるんですよ。しばかれて生きてきたから、めげないです。折れて悪いことがあったとしても、そこにも意味があるなと勝手に解釈したりします。」
この記事はBE AT TOKYOのプロジェクト、【BE AT TOKYO DIARY】で制作しました。
※感染症等の対策を十分行った上で取材しています。