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CTOは役員ではない?CEOやVPoE、他の役職との違いについて解説します
最近IT関連企業を中心に、「CTO」という役職を耳にすることが増えたのではないでしょうか。CTOとは、具体的にどのような役割を持っているのか分からないという方もいるでしょう。
この記事では、CTOに求められるスキルや他の役職との違い、昨今CTOと類似する役職として話題になっているVPoEについて解説しています。
CTOや他の役職に興味のある方はぜひ最後まで読んでみて下さい。
CTOとは「最高技術責任者」のこと
CTO(Chief Technology OfficerまたはChief Technical Officer)とは最高技術責任者のことを指し、技術面の最高責任者として、企業の経営に関わっていくのが仕事です。
CTOは、1980年代にアメリカ企業で登場した役職で、主な役割は技術的な方向性や研究開発を監督することです。最初は、研究開発ディレクターの立場を拡大した役割として生まれ、現在はIT関連企業を中心にCTOを設置する企業が増加しています。
CTOは実質的に経営陣の一員であるといっても過言ではありませんが、実は役員ではありません。ここでいう役員とは、会社法上の役員のことを指します。具体的には取締役・会計参与・監査役のことを指すため、CTOは役員ではないと言えるでしょう。
取締役の人数は会社により異なるため、過去には会社法第326条によって「取締役3人以上」と定められていましたが、現在では「取締役1人のみ」でもよいです。さらに現在の会社法では「CTOは取締役に就任すべき」と定められているわけではないため、CTOが役員ではないことも十分にあり得ます。
CTOに求められる5つのスキル
CTOは技術面の最高責任者として企業の経営に関わっていくため、責任重大な役割であり、多くのスキルを高い水準で求められます。ただし明確な定義は存在しないため、求められるスキルは企業によって異なります。
CTOが特に求められやすいスキルは以下の5つです。
リーダーシップ
マネジメント力
事業・経営面を含めたマクロな視点
技術の運用・活用するための思考力
柔軟なビジネス思考力
それぞれ詳細を確認していきましょう。
1.リーダーシップ
CTOにはリーダーシップが必要です。CTOは技術部の最高責任者として組織の上の立場になるため、リーダーシップスキルが求められます。
決定された技術戦略を適切に遂行するためには、技術チームが協力する必要があります。その協力を得るために、チームメンバーと積極的にコミュニケーションをとることによって、信頼関係を築いていくことが重要です。また、現場で働いている技術者のモチベーションを高めることで、技術者の能力を最大限発揮させる環境づくりが必要となります。
技術チームでの協力体制は、CTOのリーダーシップによって変わるため、高いレベルでのリーダーシップが求められることが多いです。つまり、技術チームからの厚い信頼や協力を得ながら、メンバーに対して適切な指導や支援を行い、技術戦略を実現させる力が求められると言えます。
2.マネジメント力
CTOにはマネジメント力が必要です。CTOは技術に関する最高責任者であるため、チームをまとめるマネジメント力が求められます。
チームメンバーの考えを把握し、チーム全体の生産性を最大化しなければなりません。つまり、自身の技術力や経験をもとに、具体的な運用方法を判断し、企業の利益を最大化させるマネジメント能力が求められると言えます。
3.事業・経営面を含めたマクロな視点
CTOは、マクロ的視点に立つことが必要です。技術を導入することで得られる利益や、利益を最大にする生産性向上のための方法を第三者視点で検討します。
つまり、技術開発や運用といった技術関連のマネジメント能力に加え、実際に利益を生み出す方法を考える力も求められると言えます。
4.技術の運用・活用するための思考力
CTOは開発した技術を企業戦略に沿って、最適に運用したり活用したりするための思考力が必要です。
技術の運用・活用には、費用やリスクなど様々な内容や条件が関わっています。つまり、様々な内容や条件から最善の方法を選び出す力が求められると言えます。
5.柔軟なビジネス思考力
CTOには柔軟なビジネス思考力が必要です。柔軟なビジネス思考力とは、技術分野に関して様々なトラブルに対処できる力のことを指します。
IT業界は変化が激しいため、技術の運用には様々な要素が関係してきます。つまり、固定観念を取り払い、様々な視点に立って技術を開発したり運用したりする思考力や柔軟性が求められると言えます。
さらに、長期的な見通しを行い、今後起こるであろう課題を想定して、開発の段階で想定される課題を解決しておく柔軟性も必要です。
CEOとは「最高経営責任者」のこと
CEO(Chief Executive Officer)とは、最高経営責任者を指します。CEOは経営の最高責任者であり、会社の経営方針や事業計画など、経営についての責任を負います。
アメリカでは企業のトップを担うポジションとされており、日本だと代表取締役が近いです。アメリカでは、企業の経営方針を決定する業務執行役員の最高責任者を指し、会長と兼任することもあります。
CEOの役割
CEOの役割は、経営面の最高責任者として、企業の経営判断を行うことです。日本だと代表取締役が近いですが、厳密には違います。
代表取締役は経営に関する決定・執行の両方を取り仕切る立場であり、総合的に会社の経営に対する責任を負います。
これに対してCEOは、経営判断を行う人たちから選ばれた立場であり、経営に関する最高権力者の位置づけです。CEOの業務には、執行に関する業務は基本的に含まれていないため、あくまでも経営方針を決める立場です。
CTOとCEOの違い
責任範囲の違い
CTO:技術面に特化した責任を持ち、技術戦略の策定と実行を担当
CEO:企業全体の経営方針を決定し、企業全体の業績に対する最責任を負う
CTOとCEOの違いは、責任の範囲です。CTOは、企業の技術面に関する分野を統括する最高責任者であり、CEOは企業の経営方針を決める業務執行役員の最高責任者です。
CTOやCEOなど経営を任される役職は、責任の所在の明確化や業務の効率化を目的として、日本の企業でも導入が進んでいます。
なお、CEOの次の立場にあたる役職が、COO(Chief Operations Officer)です。
CTO・CEOと間違いやすい他の役職
CTO・CEOに似た言葉に、CIO・CFO・COO・CSO・CMOがありますが、それぞれ異なる役職です。
詳細を確認していきましょう。
CIO
CIO(Chief Information Officer)とは、最高情報責任者を指します。CIOは会社内の情報システムの最高責任者として、情報の関連業務を担当する役職です。
大手銀行のシステムトラブル発生により、顧客や社会に大きな影響を与えたことで、CIOの役割が重要視されるようになりました。企業がITを用いた経営を行う時は、情報についての専門家を経営として迎え入れる必要があります。
CTOは、企業の技術面に関する活動を統括する最高責任者として主に開発技術チームの問題解決をサポートする役職です。一方CIOは、企業の経営方針を決定する業務執行役員の最高責任者であり、社内のシステムや情報管理などの情報部門を担当します。
つまりCTOは、CIOよりも現場との距離が近い立場にあると言えます。
IT関連企業では、CTOとCIOの役割が重なっていることも多くあります。しかし、技術と情報のそれぞれの専門分野に精通する人材を採用したい場合は、CTOとCIOのどちらの役職も導入することが理想的です。
CFO
CFO(Chief Financial Officer)とは、最高財務責任者を指します。
CFOは財務の最高責任者として、会社内の資金を管理する役職です。
財務に関する業務にとどまらず、経営上の意思決定にも大きく関わるためCEOのサポートとして重要な役割を果たします。最終的な決断は、CEOが行います。
COO
COO(Chief Operating Officer)とは、最高執行責任者を指します。
COOはCEOが決めた会社の経営方針や事業計画を実現するため、日々の業務を執行する役職です。経営について、業務全般の執行に対して全責任を負います。
最高執行責任者という名の通り、経営ではなく実務側の最高責任者です。業務全般の執行を担当するため、社長が兼任する場合もあります。COOが社長の役割を担っている場合、CEOは会長である場合が多いです。
CSO
CSO(Chief Strategy Officer)とは、最高戦略責任者を指します。経営陣と一緒に企業の戦略を立てて、実行のプロセスを構築する役職です。
各事業部単位での戦略だけではなく、会社全体の中長期的な戦略を立てることも担っており、立てた戦略を通じて社内のシナジー効果を図ります。CSOは、状況に応じて早い判断が求められるため、幅広い知識・経験・スキルを持ち合わせている必要があります。
なお以下のように、CSOの略称を用いる別の役職があります。
Chief Scientific Officer:最高科学責任者
Chief Standardization Officer:最高標準化責任者
Chief Security Officer:最高セキュリティ責任者
Chief Sustainability Officer:最高サスティナビリティ責任者
CMO
CMO(Chief Marketing Officer)とは、最高マーケティング責任者を指します。マーケティングに関する業務を統括する役職で、市場や顧客の調査のほか、マーケティング戦略の策定・実行も担います。
2013年の経済産業省の調査を用いた論文によると、CMOが在籍している企業の割合は以下の通りです。
日本:0.3%(時価総額上位300社のうち)
アメリカ:62%(フォーチューン500社のうち)
欧米と比べると、日本でのCMOの割合は少ないと言えます。
VPoEとはエンジニア組織を統括する役職
VPoE(Vice President of Engineering)とは、技術部門においてエンジニアをマネジメントと統括をする役職を指します。最近、CTOと似ている役職として話題になる機会が増加しています。
VPoEはマネジメント責任者として、エンジニアが円滑に仕事できる環境作りや、十分な開発ができる技術力向上のための採用や指導、環境改善などを行うことによって、組織のパフォーマンスを最大化することが仕事です。
以前から、主に欧米でのVPoEは一般的でしたが、日本の企業でもメルカリ・Speee・Gunosyといった多くの会社でVPoEが設置されており、日本にも確実に浸透しつつあります。
VPoEの役割
VPoEの役割は、マネジメント責任者としてエンジニアをサポートすることです。エンジニアチームの育成を行うことで、会社としてエンジニア組織の能力を向上させるためにマネジメントをすることが仕事です。
業務の範囲は広く、採用や人材育成、広報、働きやすい環境づくりなど、チームを強化させることを目的としたあらゆる役割を担っています。
また、自社の営業や人事、法務などのトップとの連携を図ることもVPoEの大切な役割であり、社内の業務が円滑に進むよう幅広くコミュニケーションをとることが求められます。
一般的に、会社の方針はCEOやCTOを含む会社の上層部による会議で決定されますが、VPoEは会議で決まった方針に対して実現可能なレベルにエンジニアチームの構築を行います。
VPoEの主な役割は、以下の2つです。
パフォーマンス向上のためのサポート
他部署との連携のためのサポート
それぞれ詳細を確認していきましょう。
1.パフォーマンス向上のためのサポート
VPoEの役割の1つに、パフォーマンス向上のためのサポートがあります。
VPoEは全てのプロジェクトとエンジニアを把握し、プロジェクトの遂行に十分なパフォーマンスのチームを作り上げます。エンジニアひとり一人の課題や目的を理解し、それぞれのエンジニアが能力を発揮できるようにサポートします。
人手不足や能力不足があれば、新たな人材の採用や既にいるエンジニアの育成を行うことも重要な役割です。プロジェクトを効率良く遂行できるように各人材をまとめ上げて、組織としてのパフォーマンス向上を目指します。
2.他部署との連携のためのサポート
VPoEの役割の1つに、他部署との連携やコミュニケーションがあります。技術チームが行う業務において、常に各部署との連携が求められるため、コミュニケーションをとってサポートします。
例えば、人事異動・採用・育成においては人事部と、業務契約・知的財産の取り扱いにおいては法務部との連携が必要です。
また、営業部門が顧客の要望を受け取っていたにも関わらず、開発現場へ伝わっていない場合、製品仕様に関するトラブルが発生するかもしれません。発生してしまったトラブルはVPoEがマネジメント責任者として、責任を問われる可能性があります。
VPoEはプロジェクトを円滑に進め、企業戦略を達成するために、他の部署と協力しやすい環境づくりを行うことが重要です。
CTOとVPoEの違い
CTO:企業の技術戦略を担当し、技術面での活動を統括する役割
VPoE:エンジニアの管理や人事に関する役割
CTOとVPoEでは、技術系組織のトップというイメージは似ていますが、両者には明確な違いがあります。CTOとVPoEの違いは、役割の種類です。CTOは、企業の技術面に関する活動を統括する役割で、VPoEは、エンジニア組織のマネジメントといった人事的な役割を担います。
CTOは、商品やサービスを開発したり、技術に関する経営的な意思決定を行ったりする役職です。大規模な組織では、エンジニアに直接的な指導をすることは少なく、新しい技術の導入やイノベーションの推進といった、企業全体での戦略の立案と実行を担います。
これに対してVPoEは、部長クラスの中間管理職として、エンジニアリングチームを管理・運営し、プロジェクトを牽引する役職です。技術職のメンバーをまとめる役職であることから、エンジニアとしての経験があると良いですが、技術について精通していることは必須ではありません。
小規模組織であるスタートアップ・ベンチャーでは、CTO自身が現場のプロジェクトに携わり、エンジニアの採用や育成を行うなど、CTOとVPoEの役割を同時に行うケースもあります。
しかし、製品開発にだけ力を入れ過ぎて人材マネジメントが疎かになっては、組織が健全な状況とは言えません。技術職のトップであるCTOに技術に関する役割に集中してもらうためにも、他部署との連携やエンジニアの採用などの業務を担うVPoEが求められます。
まとめ
CTOは技術的な方向性や研究開発を監督することが主な役割で、CEOは会社の経営方針や事業計画など、経営についての責任を負うことが主な役割で、CTOとCEOの違いは責任の範囲にあります。
CTO・CEOに似た言葉に、CIO・CFO・COO・CSO・CMOがありますが、それぞれ異なる役職です。それぞれの役職のポイントは、以下の通りです。
CIO:会社内の情報システムの最高責任者として、情報関連業務を担当
CFO:CFOは財務の最高責任者として、会社内の資金の管理を担当
COO:経営について、業務全般の執行に対して全責任を負う
CSO:経営陣と一緒に企業の戦略立案、実行プロセスの構築を担当
CMO:マーケティングについて統括する役職で、市場や顧客の調査・マーケティング戦略の策定・実行を担当
昨今、CTOと類似する役職として、VPoEが話題になることが増えてきています。VPoEは、エンジニアの採用や育成・チーム編成を行い、組織としてのパフォーマンスを最大化することが主な役割です。
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