VPoEとは?CTOやEMとの違い、VPoEになるための3ステップを解説
組織には様々な役職がありますが、ここ数年で「VPoE」という新たな役職が誕生しています。VPoEの仕事内容や年収について分からないという方もいるのではないでしょうか。
この記事ではVPoEとCTO・EMとの違いを紹介するとともに、求められるスキルについてもあわせてご紹介します。
また、記事内で解説する「VPoEになるための3ステップ」を読めば、VPoEへ歩を進められるでしょう。VPoEに興味のある方はぜひ最後までお読みください。
VPoEとは
VPoE(Vice President of Engineering)とは、技術部門においてエンジニアをマネジメントと統括をする役職を指します。最近、CTOと似ている役職として話題になる機会が増加しています。
VPoEはマネジメント責任者として、エンジニアが円滑に仕事できる環境作りや、十分な開発ができる技術力向上のための採用や指導、環境改善などを行うことによって、組織のパフォーマンスを最大化することが仕事です。
VP(Vice President)とは、部長・課長・次長職のことを指し、上級の管理職をサポートする役割を担っています。VPoEの役割は、他のマネージャーと協力してエンジニアリングプロジェクトの範囲と品質を調整し、監督することだと言えます。
VPoEの仕事内容
VPoEの仕事内容は、マネジメント責任者としてエンジニアをサポートすることです。エンジニアチームの育成を行うことで、会社としてエンジニア組織の能力を向上させるためにマネジメントをすることが主な役割です。
業務の範囲は広く、採用や人材育成、広報、働きやすい環境づくりなど、チームを強化させることを目的としたあらゆる役割を担っています。
また、自社の営業や人事、法務などのトップとの連携を図ることもVPoEの大切な役割であり、社内の業務が円滑に進むよう幅広くコミュニケーションをとることが求められます。
一般的に、会社の方針はCEOやCTOを含む会社の上層部による会議で決定されますが、VPoEは会議で決まった方針に対して実現可能なレベルにエンジニアチームの構築を行います。
VPoEの年収
VPoEはまだ日本に浸透していないポジションでもあるため、年収についてのデータは多くありませんが、VPoEの年収の中央値は約900万円(※1)と言われています。
日本のITエンジニアの平均年収が約400万円であるため、VPoEの年収は高い傾向にあります。年収が高くなりやすい理由は、採用基準が非常に厳しく、高いスキルや経験が要求されるからだと言われています。
また、企業の規模によってはさらに高い年収が期待できるでしょう。例えば、社員が1,000人規模のメガベンチャー企業では、年収の範囲が1,000万円から1,500万円に達する場合もあります。
(※1)当社調べ
VPoEとCTO・EMの違いは?
VPoEと間違えられやすい役職として、CTO(Chief Technology OfficerまたはChief Technical Officer)とEM(エンジニアリングマネージャー)があります。
CTOとは最高技術責任者のことを指し、技術面の最高責任者として、企業の経営に関わっていくのが仕事です。EMとは、プロジェクトの技術的なことの管理をしていくのが仕事です。
それぞれの違いを、以下で詳しく解説していきます。
VPoEとCTOの違い
役割の違いは次のとおりです。
VPoE:エンジニアの管理や人事に関する役割
CTO:企業の技術戦略を担当し、技術面での活動を統括する役割
VPoEとCTOでは、技術系組織のトップというイメージは似ていますが、両者には明確な役割の違いがあります。
VPoEは、エンジニア組織のマネジメントといった人事的な役割で、CTOは、企業の技術面に関する活動を統括する役割です。
CTOは、商品やサービスを開発したり、技術に関する経営的な意思決定を行ったりする役職です。大規模な組織では、エンジニアに直接的な指導をすることは少なく、新しい技術の導入やイノベーションの推進といった、企業全体での戦略の立案と実行を担います。
小規模組織であるスタートアップ・ベンチャーでは、CTO自身が現場のプロジェクトに携わり、エンジニアの採用や育成を行うなど、CTOとVPoEの役割を同時に行う場合もあります。
しかし、プロダクト開発にだけ力を入れ過ぎて人材マネジメントが疎かになっては、組織が健全な状況とは言えません。技術職のトップであるCTOに技術に関する役割に集中してもらうためにも、他部署との連携やエンジニアの採用などの業務を担うVPoEが求められます。
VPoEとEMの違い
役割の違いは次のとおりです。
VPoE:企業全体のエンジニアリング部門を統括し、戦略的な役割を果たす(役員層が多い)
EM:特定のエンジニアリングチームを管理し、日々の運営やプロジェクトの進行を果たす(マネージャー層が多い)
VPoEとEMは、開発環境をより良いものにしてエンジニアチームの成長を支えるという共通の役割を担いますが、両者には明確な役割の違いがあります。
VPoEは、エンジニア組織全体のマネジメントといった経営視点を交えた戦略的な役割で、EMは、技術面からの業務改善や、プロジェクトマネジメントなどにも取り組む日々のプロジェクトを担う役割です。
ITベンチャー企業などでよく見られますが、職位で見るとVPoE > EMになります。
EMの仕事内容は企業によって業務範囲は異なりますが、採用活動から職場環境の改善、プロジェクトがスムーズに進むように働きかける、といった主にプロジェクトのマネジメントを行います。
VPoEに求められる4つのスキル
VPoEに求められるスキルは、以下の4つです。
経営的な視点
リーダーシップ能力
マネジメント能力
課題解決能力
それぞれ詳細を確認していきましょう。
1.経営的な視点
VPoEには、経営的な視点を持つことが求められます。VPoEの最終的な目標は、事業の成長につながるエンジニア組織を作ることであるため、最終目標を達成するためには経営状況を考慮し、的確な判断を下す能力が必要です。
経営的な視点で事業の課題を把握し、それをエンジニア組織の管理に反映させることで、重宝されるVPoEになれるでしょう。
エンジニアに経営層の方針や戦略を理解してもらうためには、自分自身が方針や戦略を理解しておく必要があります。技術的な側面だけでなく、より大きな視点で事業全体を捉える能力も必要になるでしょう。
2.リーダーシップ能力
VPoEには、リーダーシップ能力が求められます。エンジニアが困難に直面しても迅速に対処し、エンジニア組織全体で課題解決に取り組めるように方向性を導くためには、チームメンバーを励まし、ビジョンを明確に提示する能力が必要です。
エンジニアに単に指示を与えるのではなく、それぞれのエンジニアが自ら考え行動できるように導くことで、リーダーシップを発揮できるVPoEになれるでしょう。例えば、マネジメントとコミュニケーションを通じて、一方的に部下の状況を聞くだけでなく、リーダーとしてエンジニア組織に求めることを明確に伝え、方向性を示します。
エンジニアのモチベーションを向上させるためには、信頼を得られるような日々のコミュニケーション能力も重要になるでしょう。
3.マネジメント能力
VPoEには、マネジメント能力が求められます。EMは個々のプロジェクトのマネジメントを主に担当することが多いですが、VPoEはエンジニア組織全体をまとめて、課題を解決できるようにチームを運営する役割があるため、広い範囲に渡ったマネジメント能力が必要です。
エンジニアが最大限に能力を発揮できるよう、仕事量のバランス調整や要望の理解に細心の注意を払い、組織内の小さな変化にも気を配る必要があります。そのためには、エンジニア組織やチームメンバーに対する深い理解と、より良いチーム作りに向けた意欲が重要です。
VPoEは企業の全体的な経営戦略を実行する役割を担いますが、個々のエンジニアの状態やスキル、適性を把握し、適切な指導や問題の改善策を提案することも不可欠です。
4.課題解決能力
VPoEには、課題解決能力が求められます。エンジニアリングチームを経営方針に沿って運営する際には様々な課題が発生するため、原因を特定して課題を明確に把握し、効果的な解決策を見つけて実行する能力が求められます。
プロジェクトに遅れや問題が生じた場合、人員の調整や配置変更、環境設備のための設備投資を行う対応が必要です。問題をいち早く特定するためには、チームメンバーへのヒアリングが欠かせません。また、様々なプロジェクトに携わって経験を積むことが、VPoEにとって必要なことです。
課題解決能力を身につける具体的な方法は、以下の3つが挙げられます。
物事に疑問を持つ癖をつける
ロジカルシンキングを身につける
問題や原因を紙に書き出す
日常で起こる出来事に対して疑問を持ち、「なぜ?」と考える癖をつけることで、問題が生じた際に迅速に対処する準備ができます。
ロジカルシンキングは、因果関係をうまく把握したりプロセスを適切に組み立てたりといった作業に役立つ思考法のため、問題解決の際にも役立ちます。
また、問題解決能力が向上するにつれて頭の中だけで考えられるようにもなりますが、はじめのうちは紙に書き出して整理することがおすすめです。紙に書くことで、問題の本質や解決策を明確にすることや、周囲の人への共有もしやすいため迅速な解決を目指すこともできます。
VPoEになるための3ステップ
エンジニアからVPoEを目指すことが一般的なキャリアプランになります。VPoEはエンジニア組織をまとめて、CTOをサポートする橋渡し役として重要な役割を果たします。そのため、必要な能力は多岐にわたり、VPoEのポジションになるまでには多くの時間と経験が必要です。
VPoEになるための具体的なステップは、以下の3つです。
高いエンジニアスキルを身につける
VPoEを募集している企業に転職する
起業する
それぞれ詳細を確認していきましょう。
ステップ1.高いエンジニアスキルを身につける
まずは、エンジニアとして高いスキルを身につけることが重要です。自身のスキルレベルを確認し、不足している部分を実務経験を通じて補強し、スキルアップを目指しましょう。
今勤めている企業が好きでなるべく長く働きたいという人は、現職場でVPoEを目指す方法が向いています。この方法は、ひとつの企業に長く在籍しているエンジニアであれば、その企業の考えやエンジニア組織の課題や強みを把握しやすいことがメリットとして挙げられます。
しかし、基本的にはVPoEのポジションが空くタイミングや、新たに設置される時を待たない限り、VPoEになることはできません。また、キャリアアップの転職であれば年収が上がることもありますが、現職場でVPoEになると、昇給などの恩恵は社内規程の範囲内となる場合があります。
現職場以外でVPoEを目指したい場合は、次のステップ2で解説します。
ステップ2. VPoEを募集している企業に転職する
次にVPoEを募集している企業を探して、転職を視野に入れてみましょう。
近年IT業界では、VPoEのポジションが求人として出ていますが、実際に設置している企業はまだ少ないです。求人には「テックリード候補」や「事業エンジニアリングマネージャー」「エンジニアリングリード」など、類似するポジションもあるため、VPoEという名前にこだわらず、自分のスキルや目標を踏まえて柔軟に検討してみましょう。
応募する際には、各企業が求める役割や業務内容をよく確認することが重要です。特にマネジメント経験や実務知識が必須条件とされることが多いため、適切な準備をしてから応募するのが得策です。
求人サイトや転職エージェントを活用し、自身のキャリア目標に合ったポジションを探してみましょう。
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ステップ3. 起業する
最後に紹介するのは、起業です。エンジニアとしての能力に自信があり、ビジネスプランを具体化できる人にとって、起業は一つの選択肢でしょう。
起業すれば自分が望む役職に就ける可能性があります。ただし、未経験から直接VPoEを目指すのは難しく、まずはインターンやアルバイトを通じて実務経験を積むことが推奨されます。
起業は豊富な経験や経営知識、明確なビジネスプランが必要ですが、自身のビジョンを実現するためにエンジニアチームのマネジメントに携わることができます。スタートアップと同時にVPoEになる道も開けますが、リスクとハードルは高いことを理解しておくべきです。起業することで自らの企業でVPoEとして活躍するチャンスがある一方で、十分なスキルと経験が必要です。
求人応募と並行して、起業を検討するのも有効なキャリアパスですが、事業運営に必要な幅広いスキルを身につける必要があります。
VPoEを実際に導入している例
日本国内の企業ではCTOが一般的になりつつありますが、VPoEを導入している企業はまだ少数です。その中でも代表的な例として、株式会社メルカリが挙げられます。
VPoEを導入している企業の多くは、主にIT分野のスタートアップ企業です。現在VPoEとして活躍している人材の多くは、以前他社でCTOを務めた経験を持っていることが多いです。これらのVPoEは、新卒でその企業に入社したわけではなく、大手企業からベンチャー企業までさまざまな分野や段階で技術力を築き、実績を積んできた人材です。
企業が成長するためには、技術的な知識だけでなく、組織全体の課題も同時に解決していく必要があります。近年では働き方の改革により、エンジニアが働きやすい環境を重視する傾向が強まっています。例えばリモートワークやフレックスタイム制、コミュニケーションツールの改善など、考慮すべき点は多岐にわたります。
従来は人事や総務など他の部署との協力が必要だった課題も、エンジニアの視点を理解したVPoEがいれば、より迅速に改革を進めることができるでしょう。VPoEの存在は、CTOでは解決できなかった課題を効率的に解決し、技術部門の健全な成長につながります。
日本では、2017年にメルカリが先駆けとなった後、サイバーエージェント、スマートニュース、LIVESENSEなどの大規模な企業でもVPoEが導入されています。
まとめ
VPoEは技術部門においてエンジニアをマネジメントと統括をする役職を指し、年収は約900万円と言われています。
VPoEと間違えられやすい役職として、CTOとEMがあります。
VPOEとCTOの違いは以下の通りです。
VPoE:エンジニアの管理や人事に関する役割
CTO:企業の技術戦略を担当し、技術面での活動を統括する役割
VPOEとEMの違いは以下の通りです。
VPoE:企業全体のエンジニアリング部門を統括し、戦略的な役割を果たす(役員層が多い)
EM:特定のエンジニアリングチームを管理し、日々の運営やプロジェクトの進行を果たす(マネージャー層が多い)
VPoEを目指している人は、VPoEになるまでのステップを想像して着実に行動に移していく必要があり、VPoEになるためのステップは、以下の3つです。
高いエンジニアスキルを身につけつ
VPoEを募集している起業に転職する
起業する
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