【地震から建物を守るために❹】
日本人にとって一番の恐怖、地震。
地震から建物を守るために、何ができるのか。
幅広い視点から地震に強い建物を考えている宮本教授にお話を伺いました。
第4回
地震による被害を減らすために その1
その共振を抑えるためには、どういった対策が必要ですか?
建物の下に積層ゴムという軟らかいゴムを敷いて固有周期を長くすることで、共振を避けます。
もう一つは、通常は柱と梁だけでできているフレームの間にエネルギーを吸収するダンパーを取り付けることで、揺れによるエネルギーを吸収する方法です。
揺れを熱エネルギーに変えることで、揺れを抑えることができます。
私たちは、建物にこの制震ダンパーをつけて、いかに揺れを抑えられるかの研究も進めています。
ただ、免震装置や制震ダンパーをつけたらそれで安全だと思ってもらったら、非常に怖いです。
一般の人の中には、超高層ビルに制震ダンパーをつけたら安全だと思っている人も多いですが、それはとある地震を仮定して「大丈夫」というだけで、その仮定以上のものが来たら被害が大きくなってしまいます。
それは「想定外」というものですが、想定外の地震に対してどう対処していくのかについても研究しています。
実際に制震ダンパーが取り付けられている建物はけっこうあるんですか?
沢山あります。
最近建設されて耐震性を売りにしているマンションもそうだし、オフィ
スビルもですし、東京スカイツリーやあべのハルカスにも取り付けられています。
いつごろから取り付けられるようになったのですか?
制震ダンパーは、今から25 年前くらいから開発が進められました。
免震建物もそうですね。
神戸の地震もちょうど20 年前くらいですよね。
それを経験して、「建物も安全にしないとだめだ」「今まではコンクリートと鉄で作っていたけれど、それ以外にも新しいメカニズムを取り込んで被害を抑えよう」というような考えが一気に広がっていきました。
つまり地震を契機にして広がったんですよね。
ただ、今は想定すべき地震も大きくなってきました。
過去の地震を想定していると大丈夫でも、南海トラフ地震のように震源の範囲が大きくなってしまうと、今までと同じ考えでは無理が出てきてしまいます。
制震ダンパーにもやはり限界がありますので。
新しい方法で揺れを軽減することも、一つの大きな目標です。