【卒展2021 Making Process】 #02 DM・CMへの展開
メインビジュアル担当
山本 和幸(やまもと かずゆき)(@Yamkaz)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
中村勇吾プロジェクト所属
堀 聖悟(ほり せいご)(@sei_54_)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
永井一史・岡室健プロジェクト所属
こんにちは。メインビジュアル制作を担当させていただいた山本和幸と堀聖悟です。
前回に引き続き、次はメインビジュアルの展開であるDMとCMがどのように作られたのかをお話しします。
1. DMについて
【目的】
まず、目的を考えました。
目的は「統合デザイン学科の卒展が開催することを多くの人に知ってもらうこと」です。
また、この目的を達成しようとする上で起こりそうな問題をできるだけ想定して、それを回避するために必要なことを考えました。
例えばこのDMがどこかに置かれた時、他のたくさんのDMで埋もれてしまうとそもそも見てもらえません。そのため「置かれた場所で埋もれないこと。」が重要です。
さらに何度も見てもらい、印象に残すためには持って帰ってもらえると良いので「持って帰りたくなるスペシャル感」があると良いです。
<DMの目的>
統合デザイン学科の卒展が開催することを多くの人に知ってもらうこと
<必要なこと>
・置かれた場所で埋もれないこと
・持って帰りたくなるスペシャル感
・少なくとも「統合デザイン学科卒展 開催」の情報は伝わること
・シェアしたくなる魅力的なデザイン
【デザイン】
・「箔押し」
「多摩美術大学 統合デザイン学科 卒業・修了制作展 2021」としっかり表面に書き、それを箔押しで目立たせました。
これにより、パッと見た時に「少なくとも『統合デザイン学科卒展 開催』の情報は伝わること」は達成されますし、箔押しによって同時に「持って帰りたくなるスペシャル感」「シェアしたくなる魅力的なデザイン」を達成できると考えました。
・「3色」
3色の展開があることで「置かれた場所で埋もれないこと」「持って帰りたくなるスペシャル感」「シェアしたくなる魅力的なデザイン」が達成されます。
・「美しく構成された色彩」
大量の色を構成するのは難しいからこそ、インパクトを与えられる。と考えこのビジュアルを推し進めたという背景もあり、色の構成は困難を極めました。
ただうまく構成ができれば「置かれた場所で埋もれないこと」「持って帰りたくなるスペシャル感」「シェアしたくなる魅力的なデザイン」の達成ができると考えました。
【さらに細かい検討】
・本体サイズの検討
様々な形状、サイズで実際にプロトタイプを作りました。
結果、小さなバッグにも入れられるサイズで、持ったり置いたりしてなんとなく魅力的なサイズを選びました。
・図像の色の検討
色も様々な検討をしました。さすがに134種類の魅力的なカラーリングを人間が検討すると膨大な時間がかかります。そのため、人気のカラーを学習したAIを利用できる、Khroma.coを利用しました。
しかしこれらの色をそのまま使って並べただけでは魅力的でない上、元々ビジュアルの制作条件のひとつとした「ビジュアルの雰囲気」と合っていませんでした。
<ビジュアルの制作条件>
・ビジュアルの雰囲気
・豪華絢爛(元気・ストロング・ゴージャス)
・賢さ
・ニュータイプ
・大人な美学
そのため、ここから膨大な検討を行いました。
図像単体の色も魅力的にならないといけないし、2つ、4つの図像を合わせて見た時も魅力的になる必要があったので苦労しました。
また、暗い図像が続くとどんよりしたイメージになり、伝えたい「豪華絢爛」なイメージは出ないことが分かったので、4つのうち1つは彩度の高い元気な明るい図像が入るようにしました。
また、隣の図像同士は同相の色や補色関係の色で構成し、魅力的に見えるようにしています。
※膨大な検討を重ねた
また、全体的に明るすぎる色彩のは「賢さ」を感じないし、全体的に彩度が高くても「豪華」な感じはしない。図像の背景色と図像自体の色を似ている色にしてみても目指した雰囲気とは異なる見え方になってしまいます。
結果的に、明度の低い暗めな図像と、元気な色彩の図像を合わせて構成していくことでコントラストが生まれ「豪華絢爛」なイメージを出せると分かったのでそのような構成をしました。
また、制作と同時並行で、展示する学生の数だけ図像を作るというアイデアが出て、DMと一緒に制作していきました。
※印刷した際の細かい色味の検討
この写真は一部で、実際はもっと検討しています。
【完成】
そういう、まるでパズルのような構成をし続け完成したのが、3つのDMに配置した図像の構成です。色数が多くても成立した状態を作ることでなかなか見ることのないビジュアルが作れたと思います。
2. CMについて
下記のCMを制作しました。
「卒展のCMを作る」というのは去年の先輩方がやられていて、「CMをわざわざ作って告知するところまでやる学科の卒展は凄そう」と思われるんじゃないかと思い、今年も実施しました。(Twitter、YouTube、インスタ広告)
【目的】
これも、DMと同じ目的なのですが、SNSでこの動画が投稿された場合を考えると「必要なこと」も変わってきます。
例えば、自分だったらSNSで広告が流れてきた際、最初の0.5~3秒くらいで見るか見ないか判断すると思ったので「まず、見ようと思えるスタート」であることが重要です。
また「作品画像がない展示は何があるか分からなくて不安で行きたくない」という自分の体験があり「大量の作品を見せる」ことを考えました。他は省略します。
<CMの目的>
統合デザイン学科の卒展が開催すると多くの人に知ってもらうこと
<必要なこと>
・まず、見ようと思えるスタート
・大量の作品を見せる
・ビジュアルコンセプトを表す
・15 ~30秒程度の短い映像
【デザイン】
・図像アニメーション
図像アニメーションは、学生12人で全70種制作しました。
学生11人でillustratorを使って20~30コマ作成した後、2人でAfterEffectsを使ってそれらのコマを合成し、微調整し、映像化していきました。
・映像の構造
最初は4個の図像アニメーションでインパクトを作り「まず、見ようと思えるスタート」を達成しました。
また、成長する図像と合わせて1〜4年生の作品・卒業制作を見せることで「多様な成長した姿」という「ビジュアルコンセプトを表す」ことができると思いました。
コンセプトと同時に作品画像を組み込んでいくことで「大量の作品を見せること」ができました。
・音楽
音は、Audiojungleの『Percussion Cinematic Drums』を採用しました。
https://audiojungle.net/item/percussion-cinematic-drums/21463019
メインビジュアルを作った際に考えた伝えたいイメージの中に、「しっかりとした強い感じ」「豪華さ」があります。このイメージを表現できる音は、映画のCMなどで使われる「Cinematic Drums」なんじゃないかと思い、それで構成された短い音楽を探し、見つけました。
・大量ランダム配置
図像134個をランダムに配置していたグラフィックを映像や会場内などで展開したのですが、それらのグラフィックを全てillustratorで行うとさすがに大変なので、Processingを使って自動で生成できるプログラムで作成していました。
【完成】
こうして、卒展に来たくなる・ワクワクしてもらえるような映像が作れたと思います。
3. 最後に
ここまで見ていただきありがとうございました。
「色がすごく多いのは構成が難しいから新しい。」「卒展で動的なアイデンティティは新しい。」という考えでこのメインビジュアルを作りましたが、実行してみると魅力的になるまで色の構成や、映像の制作が想定を遥かに超える大変さがあり、展開する上でもそれぞれの場所で色構成が必要だったりする大変さがありました。(結果、いいねという声を多数いただいてよかったですが。)
ただ、あまりにも大変だったので最初のビジュアルコンセプトを立てる時に、コストパフォーマンス的な視点で、最後の全展開まで想像しきるのが大切だと学びました。今後作る方は是非参考にしてください。
支えてくれた卒展委員、研究室の方々、関係者の皆様、そしてご来場いただいた皆様、見ていただいた皆様、本当にありがとうございました。
メインビジュアル
山本 和幸、堀 聖悟
DM
山本 和幸、堀 聖悟
CM編集
山本 和幸
会場内デジタルサイネージ編集
小笠原 勇人
図像アニメーション
竹縄 正規、大桒 福未、布瀬 雄太、野中 大地、岩崎 由紀子、藤岡 真祈、中林 佳夏子、道木 ジェイミー ロレンス、小笠原 勇人、中島 知香
撮影
清水 春来