統合デザイン学科卒業生インタビュー#06渡辺由香さん
渡辺由香 (わたなべ ゆか)
化粧品メーカー勤務 プランナー
統合デザイン学科3期生 永井一史・岡室健プロジェクト所属
神奈川県横浜育ちのクリスチャンです。大学に通い始めた時から教会に通い、毎週礼拝と賛美をしています。
大学時代は毎日デザインや企画に没頭していましたが、最近はクレヨンで風景を描写することにハマっていてInstagramで作品をアーカイブしています。
ー卒業後、現在はどのようなことをされていますか?今後はどのようなことをやっていきたいですか?
私は化粧品メーカーのプランナーとして仕事をしています。
プランナーは商品に関わる全てのデザインを行っており、パッケージのリニューアルをはじめ新商品の開発などをしています。新商品の開発では企画からパッケージまで一貫して考えデザインしており、他部署とも連携を取りながら日々商品開発に励んでいます。
今後は消費者の「こういうものが欲しかった」と思っていただけるものを形作り、会社の顔となれる商品を作り出すことが目標です。
また今日、モノに溢れた社会で、消費者の必要なものが見難くなっています。そのため他社と差別化がされつつ、消費者に「これは欲しい」と思っていただけるような商品を作っていきたいです。
ーどのように進路を決めましたか?
私は今まで、思考することよりもビジュアルからもの作りをしたり、実際に手を動かして作ることが得意でした。
しかし大学で学ぶ中で、ただ表面的なデザインだけでなく、問題を見つけて企画しデザインをすることで付加価値が生まれるということの素晴らしさに気づきました。
そこで企画からデザインまで一貫してできるメーカーや広告代理店を軸に進路を探していました。またメーカーには細かく部門が分かれた会社もありますが、私は企画からデザインまで一貫して考えられるような場所で働きたかったため、細かく部門の分かれていない会社を選択しました。
ー統合デザイン学科ではどのようなことを学んでいましたか?
統合デザイン学科ではビジュアルだけでなく、コンセプトからアイデアを考え形作るという一貫した考え方を学ぶことができました。
今まで私はビジュアルデザインとプロダクトデザインはそれぞれ専門分野として切り離されたものだと考えていました。
しかしこの学科を通して、企画からデザインまで一貫して考えることで、必要最低限のものを取捨選択することができ、他にない説得力のあるものを作ることができるようになりました。また企画をする段階で現状にある問題を見つけて再構築することの大切さも学びました。
ー在学中に制作した印象に残っている課題
ネガティブな言葉をポジティブに言い換えて
いじめから遠ざけることに繋げるためのツール『ネガポジカルタ』
3年でゼミに入った時に出た「いじめ」をテーマにした課題が私のターニングポイントでした。
この課題では「いじめ」の原因が言葉にあり、知らぬ間に相手を傷つけいじめに繋がっていたことに気付きました。そこから私は「ネガポジカルタ」という作品をつくりました。
この作品はネガティブな言葉もこのカルタを使い、言い換えることでネガティブな意識をなくし、いじめから遠ざけることに繋げるためのツールです。
それまで私は社会の課題をデザインで解決できると思っていませんでした。しかしゼミの課題で「いじめ」という大きな問題を細かく分解しどこに原因があるのか探ることで、解決しうるアイデアを出すことができました。
また原因を探る段階ではみんなでアイデアを出し合うブレインストーミングを行い、問題点を洗い出しました。その結果自分の気づかなかった問題点に気づくことができ、表面的なデザインではなく、問題を解決するためのもっと深い内面的なデザインをすることができたのだと思います。
ー卒制テーマとそれに至った経緯、卒制作品紹介
被災地のための新しい救援物資『watashi-remake』
私は卒業制作で当時日本の問題となっていた災害をテーマに「新しい救援物資」を作品として作りました。災害を調べる中で被災者は何年経っても心を取り戻すことができず、普段の生活に戻ることができないという状況を知りました。
そして、その問題は被災地へ送られる救援物資が衣食住などの必要最低限のものであることから、被災者は心を取り戻すことができず、普段の生活に戻ることができないのだと考えました。
この問題を解決するため"watashi- remake "という救援物資として送ることのできる化粧品を考えました。" watashi-remake”の中身には、肌を守る日焼け止めや顔の疲れを癒すスキンケア、そして自ら自信をつけ励ますメイクアップ道具が入っています。
この作品を通して、被災者が心を取り戻し、いつもの「私」に戻ることを手助けしたいと思い、このような作品を制作しました。
ー卒制、卒展をやって感じたこと
卒制では自分の4年間学んだことの成果として、進路に近いものをテーマに選び制作できたのがとても良かったです。
さらに展示に足を運んでくださった方々から「こんなもの欲しかった」と声をかけていただけたり「すぐに商品にしてほしい」と声をいただいたことが、社会人になった今でも私の自信となっています。
また私は卒展広報委員として活動し、様々な担当と連携をとりながら卒展自体が作品として周りからどう見られるかを考えました。その結果、卒展自体が私にとっての作品となり、見に来られた方々の反応やSNSでの声が聞けることがとても嬉しかったです。
卒業制作とその展示をすることは最終的に、今まで学んだことを自己満足として終えるものではなく、様々な人に認めてもらえる機会であり、とても貴重な経験だったと思いました。
ー統合デザイン学科で学生生活を送って感じたこと
学生生活を振り返ると、失敗を恐れず沢山挑戦ができる時間だったと思います。
大学を卒業すれば挑戦することが難しく、枠にハマったことをしてしまいます。しかし統合デザイン学科では様々な専門分野の教授がおられたので、色んな考えを許容してもらえる環境がありました。また学生に関しても同じく、出来上がった作品に対して許容する考えを持つ人が多いと感じました。そのため私は学生時代に失敗も成功もたくさん経験し、社会に出ることの恐れもなかったのだと思いました。
また私はそのような環境だったからこそ、卒業した後も課題に対して1人で答えを出すのではなく同僚や上司にも相談し、新しいことでも恐れず挑戦する心を身につけられたのだと思います。
(インタビュー・編集:徳崎理沙、土屋陽和)