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統合デザイン学科4年生インタビュー#06 戸川純佳

戸川 純佳(とがわ すみか)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
米山貴久・米田充彦プロジェクト所属


ー自己紹介と統合デザイン学科に入学した経緯について教えてください。

米田貴久・米山充彦プロジェクト所属の戸川純佳です。神奈川県育ちで、カワウソのぬいぐるみをおまもりのように連れ歩いてます。どうぶつが好きなので、ものを作る時はなにかとどうぶつをモチーフに考えがちです。

小学校の頃から図工が好きで絵画教室に通ったりしていたので、自然と美術の道を考えるようになりました。絵を描くことも好きだったけど、美大には自分より上手い人や魅力的なものを描いてる人が沢山いるから、絵ばっかりにこだわらなくてもいいかなと高校生の時に思って、ものを作ることも好きだったのでプロダクトデザインに興味を持ちました。

その後統合デザイン学科に入学してから色々な分野の課題に取り組んで、楽しかったと思えたものはやっぱり自分が好きだったプロダクト系の課題でした。そこからプロダクトや立体物を作ることに力を入れていこうと思って、今はそれらをメインに制作しています。


ー自身の制作スタイルについて教えてください。

自分の制作スタイルといえば、人を楽しませる物や、楽しい思いを邪魔する要素を和らげる物を目指して、自分も楽しみながら作ることだと思っています。

大学3年生でプロジェクトに所属した当時は玩具が作りたかったんですけど、課題では楽しいものとか玩具に繋げられられるものは、自分が納得いく形にはならなそうだったので作れなくて。そんなに作りたいなら課題以外の場で作ればいいやと切り替えました。制作しているうちに人の「楽しい」を邪魔しないようなものを作りたいと思うようになり、プロジェクト課題では主にそういったものを制作してきました。


ーこれまでに制作した作品について紹介してください。

液体のための軽量スプーン
『ゆとりさじ』

はかる戸川画質高

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この軽量スプーンは「はかる」というテーマの課題で制作しました。料理をするシーンを考えた時に、料理好きの人にとって料理は楽しいことだけど、作る過程で醤油などの調味料を軽量スプーン摺り切り一杯に入れるのって結構神経を使うしストレスになってしまうんじゃないかと思って。これをストレスなく入れることができたら料理をする過程が最初から最後まで楽しいまま終われるなと思ったんです。

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この「ゆとりさじ」はおおらかに液体を注いでもちょうどに計れるから、溢れてもいい。注ぎ過ぎた液体もちゃんと無駄にせずに容器に戻すことができる形にしました。

これを作った時は、形の美しさより機能について大事にしていて。制作する時は従来の機能が無駄なら省くし、欲しい機能があったら足すというように考えていって、その上でどういい形にできるかなと試行錯誤しながら進めています。


private(私的)・ism(主義)の三角柱型化粧台
『Dressing prism』

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TOTOさんと産学協同で行った「水場のデザイン 」という課題で、バスターミナルの化粧台を提案しました。

課題に取り組む上で早朝のバスターミナルをリサーチした時に、夜行バスを降りた女性の多くがまずお手洗いに行くことに気付いて。その理由を探ると、女性の多くが用を足すためではなく化粧をするためにお手洗いの化粧室に向かうと分かったんです。皆が一斉に化粧室に行くのですごく混み合っていました。

深夜バスに乗って旅行に行ったはいいけど、到着してすぐ化粧室が混んでて何十分も待つなんて、旅行初日の朝がそれだったらすごくbadだなと思いました。それで、混雑を緩和させるためにただコンパクトにして1度に多くの人が使えるようにするのではなく、他人と距離を保てたり旅の大荷物を抱えても入りやすい構造にして、気持ちよく使える化粧台を目指しました。

そういった楽しい要素を邪魔するものに気づいて、それを解消できるようなアイデアを提案していくことを主にやってきたと思います。いつもは自分が経験したことや、見かけて嫌だろうなって思ったことを元にアイデアを考えることが多いです。
自分の記憶を辿りながら身近なところからアイデアを出して、詰めていくといった感じで制作しています。


ヘンテコな遊べる展示作品『き-め-らスタンプ』

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大学3年生の時に芸術祭で「おもちゃ?展」という展示を友人達と行ったんですけど、展示テーマを考える時に、作っている自分も作品を見ている人も楽しいと思ってもらえるものをつくりたいという思いがあって。

私は、かっこいいとかすごく洗練されているようなものを作るのことは得意じゃなくて、楽しいものを作る時に一番モチベーションが上がるので。「じゃ、楽しいものを作ろう」ということで「遊べる展示」をコンセプトに立てて、展示を見る人達が実際に体験して楽しいと思えるようなものを展示することになりました。

そこで制作したものが「き-め-らスタンプ」という作品です。

これは色々な生き物のあたま・おなか・おしりがそれぞれスタンプになっていて、体験者は柄を見ないであたま・おなか・おしりを選び、それらを同時に押してきめらを作って遊びます。

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実はこの作品は、大学2年生の頃のインタラクションという授業で行った『同時にめくって再生した時に、お互いに情報のやりとりが成立するような2つのフリックブック(パラパラ漫画)を制作しなさい』という課題が元になっていて。この課題に取り組んだ時に、2つのメモ帳を同時にめくるのって結構難しいなと思って、そこから2つのメモ帳のめくれるタイミングの「ズレ」を生かしたものを作れないかなと考えました。

それで「偶然できる組み合わせ」の違和感がおもしろそうだなと思って、色々な生き物の頭とお尻のイラストを2つのメモ帳に分けてメモ帳をパラパラとめくりながら組み合わせていく作品を作ったんです。これが自分の中でケラケラ笑ってしまうほど面白くて。

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※フリップブック制作時の下書き

これをもっと面白く消化できるんじゃないかと思って、遊びとして発展させたものが「き-め-らスタンプ」なんです。

実際に展示してみたら自分が思っていた以上に大人にも子供にも好評で。それで、これは私だけがケラケラ面白いって思っていたけど一般の子供や大人にも通用する楽しさだぞ、ということに気付きました。


ー卒制のテーマとそれに至った経緯についてお聞きしたいです。

卒業制作では先程紹介した「き-め-らスタンプ」を立体として発展させた作品を作っています。

大学4年生の前期の段階では「き-め-らスタンプ」を発展させて卒制にするかどうかは決まっていなかったんですけど「き-め-らスタンプ」を立体にできたら面白いだろうし、普段立体の表現方法を学んでいるのに立体にしないのは勿体無いなと思っていて「き-め-らスタンプ」を半立体に発展させたものを大学4年生の前期に授業で展示しました。そうしたらスタンプの時よりも手軽で近寄りやすかったのか意外にもすごく好評で、それからこの作品を立体で極めて卒制にしようかなと考え始めました。

大学4年時に制作・展示を行なった半立体形の
『き-め-ら』

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今は半立体の時よりどの部分を変えたら面白くなるかという吟味をして方向性を決めて、完成形を作っている段階です。子供も大人も楽しめるおかしさと、この遊びがゆるいコミュニュケーションをつくるきっかけになることを目指して制作しています。


ー卒業後はどんなことをやっていきたいですか?

卒業後もモノづくりに関わっていく予定です。
私は人の楽しい思いを邪魔する要素に気づき、それを和らげる物を作ることが得意だと思っているので、今後もその部分を伸ばして人の役に立つものを提案していけたらいいなと思っています。

例えば、ダンボール箱を開けた時に怪我をしないとか、簡単に潰すことができるとか、中身が絶対割れないとか、小さいとか、違う使い道があるとか。これからも自分だったら「こうであって欲しい」を探して、ものを作っていきたいです。

それから、私にとって美術に関わることは「たのしいこと」なので、たのしく美術に興味を持ってもらえるような遊びをまた、趣味でつくろうと思っていて。既にアイデアを練りはじめてます。

(インタビュー・編集:徳崎理沙、土屋陽和、田邉茜)


次回の統合デザイン学科4年生インタビューは…!

「適したアイデアでより良く伝えたい」
堀 聖悟(ほり せいご)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
永井一史・岡室健プロジェクト所属

漫画を描くことも考えることも好きで美大を志したという堀さんですが、大学で学ぶうちにデザイナーになる選択肢も考えるようになったそう。
堀さんが見つけた新たな興味と、そのきっかけになる作品とは。
4年生インタビュー第7弾は明日公開です!乞うご期待!



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