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統合デザイン学科4年生インタビュー#07 堀聖悟

堀 聖悟(ほり せいご)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
永井一史・岡室健プロジェクト所属


ー自己紹介と統合デザイン学科に入学した経緯について教えてください。

岐阜県出身の堀 聖悟です。永井一史・岡室建プロジェクトに所属しています。趣味は、鉱物収集、展示めぐり、ラーメン店めぐりです。岐阜県の飛騨市出身で、4歳から父の転勤で上京しました。

美大を志したきっかけは、もともと漫画を描くことが好きで、話を考えるのも絵を描くのも好きだったので、美大に入れば同じような志の人に出会えたら楽しいだろうなと思ったからです。
その思いを当時通っていた美術予備校の先生に伝えたところ、もっといろんなものに興味を持たないと漫画も描けないよと言われて、幅広い領域を学ぶ統合デザイン学科を志望し、入学しました。

入学してみると思っていた美大のハチクロ(漫画『ハチミツとクローバー』羽海野チカ作)的なイメージとは全然違って、すごく真面目な感じでした。むしろその雰囲気が自分の性格的に合っていて新しいことをどんどん学んでいくうちにデザインっていいなって思い、デザイナーになるという選択肢も考えるようになりました。

また、大学2年生の頃には上野毛校舎にはなかった版画部を立ち上げて、シルクスクリーンを利用したオリジナルTシャツなどを制作したり、展示会を開催したりして、偶然性を良しとした手刷りの温かみに惹かれていきました。

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ー自身の制作スタイルについて教えてください。

「適したアイデアでより良く伝えたい」と思っていて、制作する上では一番伝えたいことにフォーカスすることを大切にしています。

正しく情報や目的を伝えることだけでなく、どうしたら人により良く伝えられるか、理にかなったアイデアを考えることを繰り返し経験して、ゆくゆくは社会や人間関係のあり方に適したコミュニケーションをデザインしたいです。


ーなぜその制作スタイルに至ったのか教えてください。

自分は統合デザイン学科で色々な分野を経験して、物事の「伝え方」に興味を持ちました。そのきっかけになったのは、大学2年時のインタラクション(*)の授業で行った、マウスのクリックで映像が切り替わるアニメーションを作る課題です。

マウスのクリックという行為に対してどれだけ没入感を出すことができるかを考えて、クリックすると人が水中に潜り込むアニメーションを作りました。

マウス操作とアニメーションが連動したインタラクション
『息を止める』

この作品を作った時に、より良く伝えるための視覚的なアプローチ方法が色々あることや、伝え方によって相手の感じ方が変わることに気付いて。
それで「伝え方」を考えるって面白い、可能性を広げてより良い伝え方を見極めて考えていきたいと思いました。

その後大学3年生になってどの教授のプロジェクトに進むか考えた時に、今って、地域とかでいい物がたくさん作られているけど、それを社会に上手く伝えきれていない状況がすごくあるなと思って。デザインを介してその良さをより正しく伝えて、広げていく、そういったことに最前線で携わっている人たちがすごく魅力的に感じて、永井一史・岡室健プロジェクトに進みました。

※インタラクション
"インタラクションとは英語の「 inter(相互に)」と「action(作用)」を合成したもので、その基本は「人間が何かアクション(操作や行動)をした時、そのアクションが一方通行にならず、相手側のシステムなり機器がそのアクションに対応したリアクションをする」ということです。
例えば、携帯音楽プレーヤーの再生ボタンを押すと、音楽がちゃんと再生されるような関係のことを指します。"
引用:インタラクション


ーこれまでに制作した作品について紹介してください。

地域全体で一人暮らしの孤独死を抑制する流れを作るポスト
『SIGNAL POST』

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郵便物が貯まることで、ポストの位置が下がるというアイデアです。これによって配達員や地域住民の方が、その住人が生活できているか気付くきっかけになります。

これは「新しい伝え方をデザインする」という課題で制作したものです。制作する際にユーザー視点で考えて、実際に見て心配になるのかとか、地域全体で伝えていくには、郵便物をどう可視化させるかなどのアイデアの部分に悩みました。

最初の案では郵便物の重さをメーターで表示すれば伝わるんじゃないかと思ったんですけど、ユーザー視点で立って考えた時に、もっと大胆なことをしないと伝わらないなと気づいて、ポスト全体が郵便物の重みで下がるというアイデアに辿り着きました。

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日本を代表するヱビスビールを伝える新聞広告

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これは毎日広告デザイン賞というコンペティションに提出した作品で、「日本を代表するエビスビールを伝える新聞広告を制作してください」という課題でした。

「日本を代表する」ということを模索するうちに、外国人観光客が日本を旅発つ際にキャリーバッグの中に入れているものこそが、その人にとって日本を象徴するものだと思って。新聞をめくる行為と、キャリーバッグを開ける行為の連動したインタラクションを考えて、開かれたキャリーバッグの写真を撮って、印刷しました。

写真の撮り方が一番大変で、キャリーバッグって大きいから俯瞰するとどうしても歪んでしまって…。身長の高い友達に撮影を手伝ってもらいました。

あと、元々はキャリーバッグにエビスビールを敷き詰める予定だったんです。かなりの量のエビスビールを買いましたが、いざ並べたらこんなキャリーバッグないでしょっていう違和感の方が勝ってしまって。こんな人いないし、コンセプトにも沿わないなって考えて(笑)
もしかしたら1本だけの方がいいんじゃないか、と思って撮ってみたらこれだ!ってなって、残りのビールは結局使わずに終わりました(笑)

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結果、最終選考まで残ったけど賞はとれなくて。自分の作品は結構広告的だったんですけど、実際に賞をとった作品は表現的な点ですごく良かったんです。それがきっかけで、ロジカルに考えるだけではなくて、表現の美しさや綺麗さを考えたいとか、そういったものに挑戦したいなと感じました。


ー卒制のテーマとそれに至った経緯についてお聞きしたいです。

人工結晶を用いた新しい表現を探求することがテーマです。自分は今までロジカルに考えて制作することに時間をかけてきたので、そこは自分でも大事にしていることだし、これからも大事にしたいんですけど、新しい表現を追求することは今後できる機会が少ないなと思って、卒制では今までに自分がやっていなかったこと、やりたかったことに取り組んでみようと思いました。
それで、自然現象や根元的な美しさの研究に新しく挑戦したいと考えてこのテーマを設定しました。

小さい頃から鉱物が好きで、よく鉱物ショップなどに行って集めていたので、そういった子供の頃に感じていた美に対する興味や、純粋な気持ちを思い出しつつ、自分の表現領域を広げていくことに挑戦したいです。


ー卒業後はどんなことをやっていきたいですか?

将来の方向性としては表面的なデザインだけではなく、意味や目的といった中身を考えるデザインを中心にやっていきたいです。

統合デザインで学んできた、あらゆるものを統合して考えることや、思いを形にするプロセスを踏んで、最後まで一貫してより良いものを築いていくことに取り組みたいです。また、ファッション、お菓子、学校、企業など、様々なジャンルに関わっていきたいなと思っています。いろんなことに挑戦して、経験を積んで、自分のできることや好きなことをどんどん増やしていきたいです。

(インタビュー・編集:徳崎理沙、土屋陽和、中島知香)


次回の統合デザイン学科4年生インタビューは…!

「本当に創造的な概念を残したい。」
山本和幸(やまもと かずゆき)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
中村勇吾プロジェクト所属

高校生の頃は不老不死や、空中に浮かぶディスプレイの研究をする科学者になることが夢だったという山本さん。しかし、あることがきっかけでデザイナーの道を志すようになったそうです。
統合デザイン学科に入学して、山本さんが興味を持ったこととは。そして今目指しているものは…?
4年生インタビュー第8弾は明日公開です!乞うご期待!

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