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統合デザイン学科卒業制作インタビュー #08布瀬雄太

布瀬雄太(ふせ ゆうた)
多摩美術大学統合デザイン学科4期生
菅俊一プロジェクト所属


ー卒業制作で制作した作品の紹介をお願いします。

「Happening!!」という作品を作りました。
これは、光を遮ると絵が動き出すインタラクティブ作品です。一枚の静止画でありながら見た人が関わることで絵の中に時間の流れが生まれる、という作品を作りました。


ーこの作品を作ろうと思った経緯について教えてください。

まず、自分の所属している菅俊一プロジェクトでは大学3年生の時から月一回のペースで自分の興味のあることについて菅先生と話す機会があって、去年の4月の段階でアナログ表現とデジタル表現の違いについて興味を持っていました。
ここで話すデジタル表現とは、ディスプレイやプリンターなど、電子機器の処理を行う表現を指しています。

当たり前なんですけど、絵画は写真や映像で見るより実物を見る方が感じ取れるものは大きいです。この点では、アナログ表現はデジタル表現よりも強い印象を与えられると考えています。
しかし、過去にあった物を復元したり、肉眼では見えないサイズの物を見せたり、デジタル表現でしか可視化出来ないものもありますよね。

この段階ではまだテーマが曖昧だったんですけど、菅先生と話している中で自分が「メディアの違いによる表現の感じ方」に興味があるのではないかと思い、そこに的を絞って深掘りを行いました。

そこからは『不完全な現実』や『デザインの生態学』という本、メディアにまつわる文献などを読むと同時に手を動かし始めて、思いついたものをとにかく作っていました。

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スクリーンショット 2021-01-31 2.11.32

これは一例で、シルクスクリーンをプリンターに置き換える試みです。インクの厚みから紙の厚みに変わることで、色を重ねるというレイヤー構造を強調できるのではないかというものでした。

そんな段階で思いついた作品案の1つ目が「映像への投影」です。

スクリーンショット 2021-01-31 2.07.28

これは、イメージの出現のさせ方やモノの表面による感じ方の違いについて考えていく中で思いつきました。
ディスプレイの表面ってガラスが多いと思うんですけど、その表面を変えることで映像の質感を変えたり、ディスプレイの表面をプロジェクターで投影出来るような物質に置き換えることで、映像をレイヤー構造にして重ねたりといった新しい表現ができるんじゃないかなと思いました。
これが今回の卒制に繋がる作品案だったと思います。


ーテーマが決まってからどのように制作していったのか、制作過程をお聞きしたいです。

出来そうなことが沢山あったので、色々と試しながら徐々に作品の方向性を決めていきました。
身体を間にいれることで成立する映像を作ったり、ディスプレイを遮蔽する素材の研究を行いました。
それと同時に、影を扱ったり、ディスプレイの拡張をしている既存作品のリサーチも一緒に行いました。

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※作品案:光を遮って鑑賞する映像作品

8月の下旬からは、リサーチや検証から得たことを元に具体的な作品を考えていきました。
この時に「ディスプレイとは自身が発光するメディアであり、光源を必要としない」という気づきから「光を遮って鑑賞をする」という今の卒制に近い作品が出てきて、大まかなフォーマットが決まりました。この時から展示什器に関しても考え始めました。

中間講評後は遮るための道具や、映像の中身を中心に制作しました。
体験の構造から「遮りたくなる感」や「ずっと見ていたくなる感」を出すことが重要だと考え、手法や世界観を決めていきました。
その中で「ルージュベックのだいぼうけん」という本も参考にしました。

試作:光を当てると動力源が見える映像

11月下旬まで様々な映像を作りながらまとめ、12月14日のプロジェクト内講評に臨みました。

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この時、街を細密に描きすぎたのと、人物が小さいせいで動きが見えづらいという問題点がありました。そのため卒展までに動きがすぐ分かるよう背景から大きくブラッシュアップしています。


ー展示空間はどのように考えていきましたか?

ディスプレイや照明の光量と部屋の明るさが作品のクオリティに直結するものだったので空間はかなり気を使いました。光源は一つにし、他のものは反射しないようケーブル含め全て黒くしました。

展示台は実は統合デザイン学科の授業で普段使用している机をベースに制作しています。足を12cm延長し、合板と机の足を結束バンドで固定しています。

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ー展示を行った感想を教えてください。

来場者の方々が、影に映る仕組みを解明しようとしたり、動くところを探しあって楽んでいる様子を見られたのが良かったです。
何より伝わるか不安であった卒制講評会でも、教授陣が熱中して見ていただけて嬉しかったです。

作品写真1

しかし、壁が白かったので想定よりも空間が明るくなってしまったことや、動くアニメーションの範囲がイラスト全体でなかった事など、改善点はまだまだあります。


ーこの作品を通して、今後やっていきたいことなどあれば教えてください。

まず、このコロナウイルスが流行している状況下で最後までやり切れて良かったです。
作りながら考え出してから作品が固まっていったので、改めて「いいからやれ」という精神の重要性を感じました。

また、3年生で菅俊一プロジェクトに入ってから私は「体験」について考えて制作することが多くありました。
今回の卒制は、既存のものを見つめ直して、これまでとは違う視点で体験を生み出す作品として自分の中でしっかり形になったと思います。
社会人になってからも自分が面白いと思ったことを作品にしていきたいですね。

(インタビュー・編集:徳崎理沙、土屋陽和、田邉茜)

今回インタビューした作品は、3月13日から八王子キャンパスで開催される、美術学部卒業制作展・大学院修了制作展Bでご覧いただけます。
他学科の作品も同時に鑑賞できる展示となっております。是非ご来場ください!

美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B

会期
3月13日(土)〜3月15日(月)
10:00~18:00(最終日15:00まで)
場所
多摩美術大学八王子キャンパス
東京都八王子市鑓水2-1723
交通
JR・京王相模原線「橋本」駅北口ロータリー6番バス乗り場より神奈川中央交通バス「多摩美術大学行」(運賃180円)で8分、JR「八王子」駅南口ロータリー5番バス乗り場より京王バス「急行 多摩美術大学行」(運賃210円)で20分

詳細:美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B



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