統合デザイン学科4年生インタビュー#01有留颯紀
有留 颯紀(ありとめ さつき)
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
深澤直人・長崎綱雄プロジェクト所属
ー現在の主な活動について簡単に教えてください。
現在は自分の発想を実際に作品に落とし込んでみて、SNSとかに投げてみて。ただ面白いだけじゃなくてより質の高いものを作れないかという試みをしています。
ー好きなもの・興味のあることはなんですか?
ものづくりやデザインです。それと昔から昆虫がずっと好きです。昆虫って生態や形態が他の生物よりも進化によって洗練されているなと感じていて、そんな彼らのように洗練されたものを作っていきたいと考えています。
ー今までに制作した作品について教えてください。
これは実際に商品化された『おにぎりの消しゴム』です。
笹の葉のようなパッケージに包まれていて、開けると中に四角いおにぎりのような見た目をした消しゴムが入っています。消すことによって丸や三角、あるいは樽型など、自分の好きな形のおにぎりにしていくことができます。中にランダムで具が入っていて、消していくとその具が見えてくるというガチャ感覚が味わえる消しゴムになっています。
この消しゴムを作ったきっかけは、消しゴムで消すという行為を楽しいものにできないかなと思ったことです。消すという行為は、ものを削ったりあるいは形を整える行為に置き換えられるなと思って、消しゴム自体の形が変化していくということを、おにぎりの形を作っていくという行為に置き換えました。それだけだとちょっと面白味が足りないので、中に具を入れることで消していくことに面白味を与えました。そういうことを考えて作ったプロダクトになります。
これは深澤直人・長崎綱雄プロジェクトの課題で作った定規です。
定規に曲げを付けることによって頂点ができ、抑えやすくなっています。また、少ない力でずれずに線を引くことができます。さらに、端面が斜めになっているためインクが滲みません。これは自分の中でかなりクオリティ高くできたなと感じています。
世の中にある定規って全て平らで、それ以上追求しようがないように見えるんですけど、折り曲げるっていう行為1つでここまで機能が拡張されるんだなって。自分なりにすごく学びのあったプロダクトです。
これは自粛期間中に描いたスケッチです。
コロナ禍になって学校から出る課題の量が減ったり、なかなか外に行けない、ものが作れないという状況になった時に、自分で何ができるか考え、単純に手を動かす行為だったら何でもいいかなと思って始めたものです。スケッチって基本的に描きたいものや、何か作りたいものがあったり、その下絵として描くんですけど、これはスケッチという行為そのものを目的にしていました。最初は手のスケッチとかサラサラっとしたものなど、雑でも良いからとにかく描いていました。時には飽きないように時間をかけたものなども描いていく感じです。
やっているうちに気が付いたのですが、多分僕は何かしらアイデアを実現するためにスケッチを描くんだ、それにはスピードが必要なのだと感じました。そこから自分の頭の中にあるものをどれだけ速く具体化できるか、あるいは目の前にあるものをどれだけ速く写し取れるかということを目的に考え始めました。そういう方向性に変わっていって、何でも良いからアイデアを形にしてみようと思うようになりました。これをやってて面白かったのは、最初明確な目的がなくても継続して何かをしていると、段々目的ができ始めるということです。
そこから更に別の目的というか目標を作りました。それが「コンポジション」です。理屈とか理論に基づかずに、自分の気持ち良いと思うグラフィックを作っていくということをひたすら続けていきました。描画っぽいスケッチ5枚、コンポジション5枚くらいのバランスで日々描き続けて、1年でいくつ描けたかな…最後までは数えてないんですけど3000枚くらいいったのかな、それくらいやりました。何かを継続しているとその中で目標っていうのを探していけるんだなと気付くことができました。その収穫は僕の中で結構大きかったです。
ー制作の原動力は何ですか?
子供の頃、誰しも妄想の世界に入っていって、その空想の世界を旅したりとか、そういうのを楽しんでいたと思うんですけど、自分はきっとそれを実現したいんだろうなって。それが現実に立ち上がったときにすごい感動を覚える。その感動を味わいたいからものを作っているんですかね。
ーSNSに作品を上げる目的は何ですか?
「世の中の人が何を面白いと思うのか」を知るためです。以前まで、僕はSNSにあまりにも関心がないというか、あまり良いと思っていませんでした。でもそういうものが実際人を楽しませているし、それが今まで自分ができなかったことなんじゃないかと思うようになりました。それを実際にできるのか、できるまでやろうとSNSに上げ始めたって感じですね。
ー卒制はどんなものを作ろうと考えていますか?
卒制は「昆虫のための建築」というテーマでやっています。人間って自然界で暮らしておらず、自分たちで環境を作ってその中で暮らしています。最近の世の中では、自然の中で生きた方が良いって結構言われているんですけど、やっぱり人間にとっても昆虫にとっても自然ってそんなに甘いものじゃないというか、時には敵にもなると思うんです。それを踏まえた上で、昆虫にとって過ごしやすい建築を作りたいです。
建築のなかで僕らが快適に過ごせているのは何故かというと、無意識に誘導されているからだと思うんですよ。例えば道などの設計をするときには、人間の行動学習に基づいて人がぶつからないように、迷わないように作られていたりするんです。それを昆虫にも当てはめて、「昆虫の建築」みたいなものを作れたら面白いのではないかと思っています。
(インタビュー・編集:加藤百華)
Twitter:@yu99jp
Instagram: @satsuki_aritome
Website:http://www.aritomework.jp/
次回の統合デザイン学科4年生インタビューは…!
「誰でも使いやすいものを作る」
リ・ユフェイフェイ
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
深澤直人・長崎綱雄プロジェクト所属
中国出身で留学生のリさん。
グラフィックやプロダクトなど多くの可能性を感じる統合に入学し、現在はUI/UXデザインとコーディングに興味を持っているそう。
そんなリさんが作る「誰でも使いやすいもの」とは。
4年生インタビュー第2弾公開中です!
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