【What I am】#02 笹原美裕
たっぷり詰め込んだ密度の高い作品に挑戦
笹原美裕
多摩美術大学統合デザイン学科3期生
Dプロジェクト所属
【指導教員】佐野研二郎、小杉幸一、榮良太
-入学後に見つけた自分の意外なカラーや創作媒体について
私は、デザインの「デ」の字も知らないままにこの統合デザインという学科に入りました。様々な授業を受けるうちに、綺麗なロゴを作るのは苦手、木を綺麗にやするのも苦手、でもキチッと辺が揃った箱を作るのは得意だった、みたいな自分の意外な面を見ました。
中でも1番驚いたのは、自分の「量産癖」です。思い返せば、千羽鶴を夢中になってずっと折れる子供でした。
量産癖を自覚したのは今年になってからですが、きっかけになった作品は、ワイヤー課題で作ったゼムクリップでしょう。
ワイヤーでスケッチをするように何かを作る、という課題だったのですが、何を作るにもピンと来ず退屈に過ごしていました。
その中、視界に入ったゼムクリップを何となくワイヤーで作ったところ、友人に「それ面白いよ!」と褒めてもらい、半ば調子に乗ってたくさん作り始めました。それからは手を休める事なく、学校でも家でもずっとクリップを作っていました。
数ヶ月後、別の作品で色んなキャラクターを箱にデザインしてたくさん作る事もしていました。当時指導していただいていた先生にも、「あなたはこれだね。(「たくさん作る」ことが向いているんだろうね)」と言われた事を覚えています。
-今回の卒業制作のテーマとそれに至った経緯
今回、卒業制作では「私の人生体験」をテーマにしています。
理由としては、前述の文のように「今思えばあの時の〇〇が今の〇〇だな」という経験を大学生活で多く感じてきたからです。
何かを作る時のアイデアも、何も知らないところからは絶対に生まれません。今まで過ごしてきた時間、接した人、そこでの体験、感じた事…その人生体験こそが、私の作品を支え、延いては「私」という人間を作っているのだと思いました。
そして今年の夏、実験的に今までの体験を全て詰め込んだ絵を描いてみよう、と思いB2サイズの紙にパッと出てくる記憶を描いてみました。
自分の量産癖をいかしたものにしたいと思い、1枚の絵にたっぷり詰め込んだものにしました。モチーフが人間でなく猫なのは、小さい頃から続けて描いていたのがこの猫だからです。
突き詰めていくともう少し洗練されたものになると思いますが、私の卒業制作の基盤になるものはこのイラストです。完成物も現時点では平面のイラストを想定しています。
-卒制を経てどんな「私」を構築したいか
この卒制は、この先何か悩んだ時に帰って来れる作品にしたいと思っています。
例え辛いことがあっても、この作品をみれば過去の体験に勇気づけられるような、魂のこもったものにしたいです。
そして、その過去に浸るのではなく、その過去を抱えて、その先へと走れる私(I am)を構築できた時、私の卒業制作は成功だったと言えるでしょう。
-最後に卒制にいらっしゃるみなさんに一言
統合デザイン学科は、本当に幅広い学科です。授業を通し、色んな人が色んな方向を向いているように感じます。
「誰かの得意は誰かの不得意、誰かの不得意は誰かの得意」。
こうやって世の中って成り立っているんだろうな、と、この学科で学んでいるとよく思います。
それを体現するように、統合の卒展は多種多様です。ボリュームも満点、展示としての見栄えも良くなるよう学生一同寝る間も惜しんで努力してまいりました。
ぜひお時間を作ってご覧いただきたいです。よろしくお願いいたします。