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【卒展2022 Making Process】 #02 ビジュアル展開
小笠原 勇人(おがさわら ゆうと)(@ogasawara991025)
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
永井一史・岡室健プロジェクト所属
原口 こころ(はらぐち こころ)(@co______5)
多摩美術大学統合デザイン学科5期生
佐野研二郎・小杉幸一・榮良太プロジェクト所属
こんにちは、今年度の卒業制作展にてビジュアル全体を担当させていただいた小笠原勇人・原口こころです。前回に続いて、卒業制作展のメインビジュアルを具体的にどんな形へ展開させたのかについてご紹介させていただきます。
前回設計したメインビジュアルを元として、原口が判型やレイアウトなどデザインの原案、小笠原が最終的な調整を行なっています。
1.横方向へ拡張するポスター
ポスターは学内や美術予備校、大学近郊の店舗などに貼り出すことを目的として制作しました。
大きいポスターだからこそパターンデザインが活きると思い、シンボルを敷き詰めたデザインにしました。密度があることで、遠くから見ても近くから見てもインパクトのあるポスターになっています。
パターンは大きくしすぎると大味な印象になり、逆に凝縮させすぎると気持ち悪さが強くなってしまいます。数度印刷を繰り返し、心地よいパーツの大きさを探っていきました。
判型はA2という取り扱いやすいサイズで、横に並べて配置することでシンボルがパターンとしてつながります。貼り出す壁面のサイズに合わせて範囲を縮小・拡張することが可能になるように設計しました。
2.ニュアンスを凝縮させたDM
DMは美術予備校や他学科だけでなく、学生それぞれの知人など、最も幅広い範囲に配布される広報物です。
今年度の卒展の開催イメージとして「万博」が掲げられていたので、DMはチケットを模したデザインにしました。真ん中にドンっとメインビジュアルが活版印刷で刷られていて、チケットの入場スタンプが押された質感を表現しています。メインビジュアルがもともと掠れたテクスチャーだったため、活版印刷との相性が良く、より引き立たせることができるのではと思いました。通常の印刷ではなし得ない凹凸が生まれ、手に触れて初めてわかるディティールの魅力を作り出しています。また、モチーフを紙からはみ出させることで、スタンプを押す位置のランダムさを表しています。
メインビジュアルのモチーフが6種類ということで、DMも6パターン制作。自分の好きなモチーフが選べることで、持って帰った時にDMに対して愛着が湧いたり、楽しんでもらえたりするのではないかと考えました。紙はグレーのボール紙で、無骨な感じが「先史美術・古代遺跡」感に繋がったと思います。紙のグレーと印刷のグリーンで、シンプルながらも目をひくDMに仕上がりました。
裏面には開催情報を見やすさ優先で配置しています。上下にフレームのように施されたシンボルは上下左右に繋げると連続するパターンになっており、複数手に取ったり、知人と並べてみたくなるようなギミックとなっています。
3.鑑賞を補佐するパンフレット
パンフレットは、卒展期間中に来場したすべての人に受付で配布するものです。そのため、まず持ち歩きやすさを重視して考えました。
展示のパンフレットというと、大きいものはインパクトがあり豪華に見えます。しかし、その大きさから展示鑑賞中にかさばったり、かばんに入れると折れ曲がったりしてしまう恐れがありました。
そこで、小さいサイズのかばんでも持って帰りやすいよう、折りたたんだときにA6サイズになるようにしました。ポケットにも入りやすく、鑑賞中にもマップの全面を狭い範囲で開きやすいサイズ感です。折り方は、開いたときに全体が見やすい8つ折りになっています。表面に開催情報、裏面全面に展示マップを配置し、紙面に無駄のないシンプルな構成を目指しました。
マップを見る際、記載された図の角度と自分の向いている方向が違うために混乱することが多々あると思います。そこで実際の校舎の配置角度ではなく、校内をめぐるときに記憶に残りやすい「階段」を水平の基準としてレイアウトしました。自分が今校舎のどちらを向いているかわからなくても「さっき登った階段はこの角度だった」という記憶から感覚的にマップを読み取りやすくすることを狙いとしています。
また、大学の校舎をそのまま利用している関係で「3号館の2Fには何もないけれど、3Fには展示室がある」といったややこしい部屋配置がどうしても起こってしまいます。そこでマップ上であえて「展示室のない2F」も表記し、空間的な構成をイメージしやすくする、といった工夫も試みました。
4.展示を妨げないキャプション
各作品の情報を記載するキャプションは、すっきりと情報を配置できるように横長のレイアウトにしました。
フォントは「見出ゴMB31」「Avenir」を使用し、読みやすさを意識しました。紙のグレーと文字のディープグリーンで、メインカラーとの親和性を高めています。紙色と文字の色を逆にしたパターンも検討しましたが、緑のインパクトが強くそれぞれの作品の雰囲気に合わずに悪目立ちしてしまうため、この配色にしました。
使用した紙は、ざらっとした触感や古紙パルプの配合を特徴としている「タブロ(65.5kg)」です。タブロのざらついた質感が今回の掠れたグラフィックの雰囲気に合い、メインビジュアルとの統一感が出るのではないかと考えました。ある程度光沢のある紙だと光に反射して読みにくくなってしまうため、反射の少ないマットな質感を選択。また、パネルの側面まで紙を巻き込むことで、横から見た際に目立ってしまうパネル感をなくしました。
前回と今回でメインビジュアルの設計から実際の展開までのことをお話させていただきました。複数の展開のほぼ全てを自分たち2人だけがアウトプットする形にしたため、全体のトーンの崩れなどを防げたのはとても良かったと思います。
ある程度の時間の猶予があり、2人という極端な少人数で進められる「学生」という立場だからこそできることはなんだろう? と考え、このようなあえて手間のかかる、逆に言えば手間をかけないとできないビジュアルを設計しました。そのため実際とても手間がかかったのですが、その非効率性、コストパフォーマンスに重きを置かないデザインにこの「卒業制作展」ならではの魅力を感じていただけたら幸いです。
ご協力いただいた学内の皆様、ご来場いただいた方々、またこの記事をここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
デザイン
小笠原勇人、原口こころ
撮影
松尾光太郎
(編集:海保奈那・蕪木彩加)
3月13日から八王子キャンパスで開催される、美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B(ピックアップ卒展)では他学科の作品も同時に鑑賞できる展示となっております。是非ご来場ください!
多摩美術大学 美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B(ピックアップ卒展)
会期
3月13日(日)〜3月15日(火)
10:00 - 18:00(最終日15:00まで)
場所
多摩美術大学八王子キャンパス アートテーク
東京都八王子市鑓水2-1723
交通
JR・京王相模原線「橋本」駅北口ロータリー6番バス乗り場より神奈川中央交通バス「多摩美術大学行」(運賃180円)で8分、JR「八王子」駅南口ロータリー5番バス乗り場より京王バス「急行 多摩美術大学行」(運賃210円)で20分
詳細:2021年度 多摩美術大学 美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B