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アクチュアリー試験【会計解説】平成29年問題3(3)

繰延資産や繰延税金資産の「繰延」って何ですか?
以前にこのように質問を受けたことがあります。辞書的な意味は分かってもこれをどのように会計で表すのかは、初学者は感覚的にはつかみにくいのかもしれません。

ということで(3)は繰延資産についての問題です。教科書はP206からの記述となります。

繰延資産とは、すでに対価の支払いが完了するか支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにも関わらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待されるため、その支出額を効果が及ぶ将来期間に費用として合理的に配分する目的で、経過的に貸借対照表に資産として計上された項目をいいます。

定義は長くなっていますが、すでに完了した取引であるが将来の収益に対応させるために計上する資産ということです。
これは、対応原則(収益費用対応の原則)に基づいた考え方です。
定義より(A)は正しい記述となります。

重要な特徴として、繰延資産は換金価値を持たず、対応原則によって初めて資産計上が正当化される点となります。

そのため、以下のような制約が設けられています。

【1】資産計上が許容されるのは以下の5項目のみである
  ★ 株式交付費(新株発行費)
  ★ 社債発行費等
  ★ 創立費
  ★ 開業費
  ★ 開発費

【2】所定の年数内の支出の効果の及ぶ期間にわたって合理的な方法により規則的に償却する
【3】換金価値を持たないため、配当など分配可能額の算定時に制約が設けられている

【1】の通り繰延資産は5項目だけですので(B)は正しい記述、また、保守主義の観点からも【2】には支出時の費用として処理することも含まれると考えられるため(C)は正しい記述です。

ということで、(D)が誤りになるのですが、繰延資産は換金価値を持たないことから分配可能額の算定においては全額控除することが求められます。したがって、のれん等調整額は「のれん+繰延資産÷2」ではなく、正しくは「のれん÷2+繰延資産」となります。


個人的には本問はあまりいい問題とは感じませんでした。
繰延資産についての理解を問うのではなく、分配可能額の算定におけるのれん等調整額の算定式を覚えているかどうかが問われていることになります。
結局、丸暗記型の勉強をした方が点が取れるということになってしまいます。

暗記することも大切ですが、趣旨などの理解も大切だと思います。
したがって、知っているかではなく解っているかどうかの本質を問う問題を出題して欲しいものです。

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