アクチュアリー試験【会計解説】平成29年問題2(4)
一般事業会社の会計監査をしている公認会計士にとって、アクチュアリーとの接点は退職給付引当金に係るPBO(退職給付債務)の評価の局面くらいしかありません。
せっかく法人内にアクチュアリーがいるので、試験の情報を得ようと話を聞きたかったのですが、監査との接点が少なすぎて話をする機会を持てずじまいでした。ちょっと残念です。
(4)は退職給付会計に関する問題です。本問の遅延認識については教科書ではP244に記述されています。
現行の会計基準において、遅延認識を行うことができるものとしては、以下のものがあげられます。
★ 過去勤務債務
★ 数理計算上の差異
(以前はこのほかに会計基準変更時差異というものもありましたが、現在はほぼ論点に挙がることはありません。)
したがって、本問の答えは(C)ア、ウのみ正しいとなります。
会計の中で、実務上で最もアクチュアリーと関連が深い項目が退職給付会計になります。それもあってか、数年に一度は必ず出題がされています。
難しい問題が出たとしても、資格の性質から言っても文句は言えないと考えています。
しかし、残念ながら教科書は、退職給付制度の記述に関しては十分とは言えません。
教科書では損益計算書の説明が中心であり、貸借対照表に計上される退職給付引当金がどういったものかの説明が不足しているように感じます。
退職給付引当金とは、退職給付債務の額から年金資産の額を控除して、未認識項目を加減することによって負債に計上します。
すなわち、退職給付引当金の簿価は、以下のものによって構成されます。
★ 退職給付債務
★ 年金資産
★ 未認識過去勤務費用
★ 未認識数理計算上の差異
教科書においては退職給付債務や年金資産の定義が見当たらず、文中や設例に突如現れてくるんですよね。
退職給付債務とは、退職給付のうち認識時点までに発生していると認められる部分を割り引いたものをいいます。
年金資産とは、特定の退職給付制度のために、その制度について企業と従業員との契約(退職金規程等)等に基づき積み立てられた、特定の資産をいいます。
この退職給付会計を理解するには、退職給付会計ワークシートを利用することをお勧めします。
ここでは説明しませんが、これは、会計基準の設例でも用いられており広く使われているものであり、会計士をはじめとして会計を勉強する人も多く使っています。
教科書P245の設例10などを一度ワークシートに当てはめてみるといいかと思います。
近いうちに、この退職給付会計ワークシートについては、解説は作る予定にしています。
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