かつて空想の世界に憧れた子どもたちへ
こんにちは!Ring Artistのinsulaです。
自分の指環は誰のためのものなんだろう、と最近考えます。
もちろん、好きになってくれた方みんなのものですし、性別も年齢も何も関係なく身につけていただくことが私の喜びです。
その中、特にお届けしたいと思ったのはこんな人たち。
『かつて空想の世界に憧れ、大人になった子どもたち』
子供の頃に見た景色というのはどうしてあのように手触りが鮮明で、美しくて、香りに満ちていて不思議だったんでしょうか。好きなものにどっぷりとハマる感覚、目に映る不思議なものにこころが踊る毎日。
特にその中でも童話やファンタジー、児童文学の世界に居場所を感じていた私は、むしろ現実世界にすらあまり興味を持てない子どもでした。
魔法や不思議な存在に満ちた世界に比べたら、この世界ってあまり面白くないな、と思ったものです。
児童文学、特に「星の王子様」なんかを読みながら、「私は絶対子どもの心を忘れない大人になるんだ!」と心に誓ったものですが、その気持ちは大人になる頃には諦めに変わり、徐々に社会に順応しなくては生きていくことが厳しいということを理解し始めると、徐々に子どものころに大好きだった世界を忘れていきます。そうして目に見えない魔法や不思議の世界はおろか、目に見える美しい自然の移り変わりに鈍感になり、世界が色褪せていきます。
私が指環を作る理由は、そうした子どものころの感性は本当はとても大事なことで、大人になったからといって手放していいものではない、ということをお伝えしたいと思ったからです。
でも、ただおとぎ話やゲーム、ファンタジーの世界に溺れているのではただの大人になれない子供にすぎない。
子供の美しい感性を持った、素敵な大人になるには、「本当の魔法」や「本当の奇跡」が必要だと思ったのです。
私にとって、それが「鉱物」でした。
さまざまな偽物やイミテーション、その場凌ぎのエンターテイメントが溢れる中で、この「石」という存在はとんでもなく美しい姿を見せてくれて、不思議な世界と現実世界を繋いでくれる「本物」の存在です。
蜘蛛の巣についた露がきらきら輝いていたこと、夏の月明かりがまるで積雪のように見えたこと、木に登って見る景色がまるで空を飛んでいるように感じたこと、夕日があまりに美しくて日が沈むまで眺めたこと、教科書で学んだ星座が煌々と夜空に浮かんでいたこと、初めて雪が降る景色をみて首が痛くなるまで空を見上げていたこと…
私はこれらと同じような景色を鉱物の中に発見しては、大人になった今でも一人でワクワクしています。その中にたくさんの奇跡や見えない力を感じるから。
そんな気持ちをみんなと共有したい、美しい感性を持った人たちにこの喜びを伝えたい、そんな気持ちで作品を作り始めました。
宝石はもっとも古いものは44億年前から存在し、その存在自体が奇跡で、それを見て美しいと感じる心が魔法そのものです。だからごくシンプルに、でも石との対話を楽しめるように作っています。石の景色を通して、美しい世界を見ていた心を思い出してもらいたい。さらにもっと美しい世界を発見してほしい。
ファンタジックなジュエリーは他にもたくさんあって、石が美しいブランドもたくさんあります。でも、私が選ぶのは世界がより美しく見えるような景色を持つ石。そのナビゲーターになれるような「生きた石」。
子どもの感性は素晴らしいとは思いますが、私は成熟した大人の感性も本当に素晴らしいと思っているので、ただ昔を懐かしむだけに終わりたくありません。人間の一番素晴らしい時期が若い時だけだとはとても思えないのです。
子供の頃の感性が鉱物の原石だとしたら、その原石を掘り出し、磨き上げ、美しくカッティングを施し、その石に合ったデザインの枠にはめてジュエリーとして身につけるのが大人の感性です。両方があって初めて世の中に「美」という価値観が生まれる。そう私は信じています。
京都という場所にいると、「人」と「自然」と「時間」というものが素晴らしい均衡の上に成り立っていると思います。「自然」という素材をとことん尊重し、理解し、少しだけ手を加えて、生活の中に取り入れる。
ほんの数十年生きるだけの私たちが、めいいっぱい世界を愛し、生活を愛し、人を愛していくために、これがとても大切なことだと思うのです。
なんだか人生に疲れてしまったとか、仕事が大変で辛いとか、好きなことができた子どものころは楽しかったのになあ、と思う方に、insulaの指環を手に取っていただきたいのです。
そうして、春に咲く花の色を思い出したり、その花の名を教えてくれた人を想ったり、一人見上げた月の景色や、涙が出そうな夕焼けや、雪が持つ清廉な冷たさを、思い出したりしてほしいのです。
その景色から無限に広がる空想の世界でまた思いっきり遊んでほしい。
その大人が作る世界はきっと美しいでしょう。
今手元にあるこの石が、44億年の歴史を重ねて掘り出され、磨かれていろんな人の手を経て今自分のところに来た。
insulaの指環を手にしてくれる方は、そうした想像力を存分に働かせることのできる素敵な感性を持った方です。そのたった一人のあなたに響く、ある一つの景色をお見せする。それが私の仕事です。
どうかそうした人に私の作品が届きますように、そしてその人たちがその感性でさらに新しいものを生み出して、世界が少しずつ美しい場所になりますように。
それがinsulaの願いです。
insula