ChatGPTとラテン語で会話してみた
AIチャットボットChatGPTとラテン語で会話が成り立つのか試してみた。
以下私の送信したメッセージとChatGPTの返答(引用)だ。
羅文後の括弧内は質問、返答ともに拙訳である。
尚今回は便宜上長音記号の表記を省いた。
挨拶
私:Salve. Latine tecum loqui volo.(こんにちは。ラテン語であなたと会話したいです。)
まずは挨拶から。"Salve."は通じた。
ただしその先は少し怪しい。
"benevenutus"という語は手元の辞書にはなかった。Wiktionaryで調べると似た語に"beneventus, -a, -um : welcome (adj.)"があったのでこれの表記ゆれだろうか。
そのままの綴りで検索すると"Reconstruction"と注意書きがある"bene venutus"と分かち書きされた形容詞が見つかった。この記事によると"venutus"も"ventus"と同じく動詞venio, -ireの完了分詞らしいが、俗ラテン語なのだろうか。
"Reconstructed terms"とは、直接その言語で記録されているわけではないが語源学的根拠により言語学者に存在を推測される語を指すらしい。言語学は門外漢であるためこれ以上の考察は避け、英語の"welcome"という意味として受け取っておく。
"ad Latine loquendum"は「ラテン語で話すこと」。ad+動名詞の対格で副詞句を作る用法だ。
interest>intersum, -esseは辞書には「関係がある、重要である」という意味とあるが、英語の"interest"(関心)と混合したのか、あるいはそのような新しい意味があるのかはわからない。元来の意味でとっても文意は通るので良しとする。
3文目の逐語訳としては、「あなたにとって何を知ること、あるいは言うことが重要ですか?」となる。
日本の首都は?
Japonicus sum. Novistine, ubi caput Japoniae sit?(私は日本人です。日本の首都がどこにあるかご存じですか?)
自己紹介とそれに関連した質問。国籍に対するリアクションはなかった。
質問は文法的には簡単なイエス・ノークエスチョンだが、ご丁寧にも間接疑問文に対する答えを直接示してくれた。ラテン語には直接的にイエス・ノーを表す語は存在しないし、こちらのほうが会話としては自然かもしれない。
"maxima"は最大と直訳したがよく考えると面積においては最大ではないので、最重要とでも訳すべきか。"quaestus"(商業)と"cultus"(文化)はそれぞれ第4変化の属格として捉えた。
最後にさらなる質問を促してきた。会話のキャッチボールが成立している。
日本の古都は?
De historia Japoniae curiosus sum. Ubi vetus caput Japoniae est?(日本の歴史に興味があります。日本の昔の首都はどこですか?)
なぜか京都ではなく奈良と答えが返ってきたが、間違ってはいない。
長岡京の時代が無視されているような気もするが、「奈良時代」としての期間は合っているので細かいところには目を瞑る。
この下にも奈良時代の文化について説明が続いたが、実はあまり日本史に興味がないので省略する。
日本の島の数は?
Quot insulae in Japonia sunt?(日本にはいくつの島がありますか?)
Wikipediaによれば、1987年の海上保安庁の発表によると島の数は6,852とされたらしい。
しかし、2023年の国土地理院の発表では14,125の島があるそうだ。島の定義や測量技術の発展などの影響だろうが、ChatGPTの情報は少し古かったことになる。
"audio"の活用は?
Doce me conjugationem verbi "audire".(動詞audioの活用を教えてください。)
マニアックな極東の島国についての質問でいじめすぎたので、次は趣向を変えてラテン語の文法について聞いてみた。
律儀にも活用がわかりやすいように長音記号を付けてくれた。現在形の活用は全て正しいが、女性複数の人称代名詞がeaeでなくeaになっているのが気になった。
また省略した部分では未来形の活用にところどころ誤りがみられた。
ラテン語の活用はAIにとっても難解なのだろう。
それでも自信満々に次なる質問を促してくる姿勢は見上げたものだ。
"Docere est discere."(教えることは学ぶこと。)ということか。
生きる意味とは?
Cur vivimus?(なぜ私たちは生きるのでしょうか?)
次は打って変わって哲学的な問い。
当たり障りのない回答で面白みがない。
しかし問答は成立しており、また文法的な誤りも見受けられない。
総括
飽きてきたので今回はここまでとする。
質問の仕方によってはより面白い回答を引き出せるのかもしれないが、こちらの発想力の限界がきた。
結論としては、ChatGPTとラテン語で会話することは可能だが、一部不自然な単語が現れたり、事実に誤りが見られたりした。
しかしハルシネーションといわれる明らかな虚構は見られなかったし、概ね及第点と言えるだろう。
実用的な利用法としては、活用や曲用の種類を質問して辞書を引く参考にしたり、作文で代替表現の候補を挙げさせて発想を補ったりするのが良いだろう。