ID: INVADED イド:インヴェイデッドの話 おれは舞城王太郎しか知らない
今夜6話を放送するID: INVADED イド:インヴェイデッドを観て考えたこととか今後の予想の話。5話までのネタバレあり。
ジョン・ウォーカーはジョニー・ウォーカーか?
殺人鬼のイド=井戸の中に現れる殺人鬼メーカー「ジョン・ウォーカー」。現時点では実在するのか、殺人鬼が共有する何かのイメージなのか不明なこの存在だけど、引用元は村上春樹『海辺のカフカ』の邪悪なもの「ジョニー・ウォーカー」だろうと思う。舞城王太郎がハルキフォロワーなのは有名だし、村上春樹がその元ネタに使ったウイスキーのジョニー・ウォーカーのアイコン、ハットを被り杖を持った紳士のデザインに『ID』のジョン・ウォーカーも合わせている。
イドは井戸でその中に入るというのはすごく春樹的だけど(井戸と後述する壁抜けは『ねじまき鳥クロニクル』が有名だけど地下に潜るモチーフは繰り返し出てくる)、舞城はこの辺をちゃんと自分のものにして描けるのは観ての通りで、小説でも井戸は使わないけど似たことをやっていてすごく良い。
あと模倣犯について「木を隠すなら森」のセリフと共にわざわざチェスタトンの言葉だと説明したのが気になっていて、「この作品では引用が機能していますよ」という目配せなのかもしれない(実在の作家等を作品に引っ張り出すのは舞城がよくやることではあって、どこまで意味があるかはわからない。影響元の明記くらいかもしれない)。
これはヨタ話になるけど、「殺人鬼メーカー」のジョン・ウォーカーに対して、フォロワーを生み多く影響を与えた言わば「作家メーカー」のハルキ・ムラカミを重ねているのか?とも思った。舞城の来歴として自己言及的に。
今わかっていることの少しのまとめ
イド:インヴェイデッドの井戸のルールは
①井戸は殺人鬼の思念を反映したもの(一般人は構築できない)
②井戸に入れるのは自分の井戸を持つ者=殺人鬼だけ
③自分の井戸に入ると出られなくなる
・主人公鳴瓢の井戸はまだ公開されていない。
・本堂町は裏ワザ的に殺人鬼にならず井戸を構築したのに加えて、捜査の才能を発揮している。
・富久田の役割が不明。
今後の予想
・自分の井戸に入ると出られなくなるというのは前フリな気がするし、鳴瓢が自分の井戸に落ちるのではないか。
・その場合、鳴瓢を救い出すのは本堂町の役割になる。そうでなくても本堂町が井戸に入るのは時間の問題だと思う。
・富久田の役割が不明だが2つ考えたことがあって
①井戸に入れる人間が
本堂町→警察
鳴瓢 →警察であり殺人鬼
富久田→殺人鬼
の組み合わせになっている。富久田は一度失敗しているけど、鳴瓢不在のときに、または鳴瓢では突破できない井戸に対応できるかもしれない(逆のパターンが本堂町に当てはまる)。その相手がジョン・ウォーカーというのはありえて、三者三様のアプローチが必要となるかもしれない。
(まったく違う形でだけど舞城王太郎『淵の王』も邪悪なものとの対峙が3パターン描かれている)
②頭の穴を井戸に見立てた場合、富久田の貫通した頭の穴は底のない井戸に重なる。対する本堂町の穴は貫通していない(「前頭葉を削っただけ」)から底がある井戸。そして鳴瓢の井戸の可能性は不明。
底のない井戸はどこに通じていてそこから何が来るのか、ということになればそれはジョン・ウォーカーなわけで、富久田が脱走しジョン・ウォーカーに変貌するというのもありうる。
鳴瓢の向かう場所
自身も殺人鬼である鳴瓢は自分の井戸の中にジョン・ウォーカーを抱えている(と思われる)。なので鳴瓢とジョン・ウォーカーの対決が鳴瓢の井戸の中で行われる可能性はあり、そのとき「壁抜け」が起きて井戸=イドの向こう側に出てしまうかもしれない。壁抜けは村上春樹がやっているけど、舞城王太郎も自作で披露している。そのとき鳴瓢が対峙するものはなんなのか。
主人公が邪悪なものを抱え込んでいる人というのは舞城王太郎では珍しく、だからこそ彼の向かう先に出口(救済や贖罪や快復)があるのかが大きな焦点に思える。
ということでいろいろ書いたけどこの通りID: INVADED イド:インヴェイデッドに夢中です。めっちゃ面白い。