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【小説】僕とあのコの優雅な朝食(#あざとごはん応募)

 よし。
 たまには朝ごはん作ってみるか。
 いつもは何も食べないか、焼くのも面倒で食パンをそのままかじるだけだけど。仕事も休みで時間もあるし、久しぶりにスッキリ目覚めたし。
 そ、れ、に。
 寝室にいる彼女の姿を思い浮かべる。
 喜んでくれたらいいな。
「サプラ〜イズ♪」
 歌うように言い、僕はキッチンへ向かう。

 冷蔵庫を開けてみる。
 んー、やっぱり何もない。
 って、当たり前か。僕がろくに買い物に行かないんだから。行っても、缶ビールやカップ麺を買うだけだし。お菓子は最近自粛してるよ。ちょっとお腹がブヨブヨしてきたから。そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうよね。
 賞味期限切れの納豆が見つかる。
 うわっ。これは捨てておかないと。ご飯炊かないくせに、納豆だけあってもしょうがないよな。
 そういえば、前に「納豆だけダイエット」みたいなのが流行ってたけど、僕はまだそこまでは太ってない。ちなみに「◯◯だけダイエット」は良くないって、テレビで専門家の先生が言ってた。「バランスの良い食事」が大切なんだって。
 僕も同感。何事もバランスって大事だよな。食事だけじゃなくてさ。なんだっけ、あれ。「ワーク・ライフ・バランス」っていうの? 「生活と仕事の調和」ってヤツ。学校の教科書に載ってたっけ。教科は忘れたけど。まあとにかく、仕事仕事〜ってなるのも疲れるし、遊んでるだけでも飽きちゃうし。ほどほどに働いて適度に息抜きするのがイイよなって最近思う。
 きっと食事も一緒なんだろう。肉肉〜ってなっても胃もたれしちゃうし、野菜ばっかりってのも逆に体の調子壊しそう。
 おっ。卵三つ発見。スクランブルエッグでも作ろうか。作り方? 知らないよ。卵ぐちゅぐちゅ焼くだけでいいんじゃないの? ホントは何か他に入れるモノあるかもしれないけど、自己流で。
 僕が作る卵料理といえば、目玉焼きが定番だけど。てかそれしかやったことないけど、ちょっと発奮してスクランブルエッグ作ってみよ。
 安心して。
 フライパンはあるよ、全然使ってないけど。洗って棚にしまってるから。
 すぐ見つかった。
 焦げつかないように、油がいるな。
 油、あぶら、アブラっと……ないじゃん。そりゃそうか。だってふだん料理しないもん。そういえば目玉焼き作るときも使ったことない。やけにフライパンにくっ付くなと思ってた謎が解けた。
「なんかないか、なんかないか」
 冷蔵庫をまた開けてみる。
 おっ。バターがある。いつ買ったのか覚えてないけど、賞味期限は大丈夫そうだ。じゃあこれ使おう。甘いスクランブルエッグができるな。
 火をつける。とりあえず弱火。バターをひとかけら、箸でフライパンにのせる。ちょっと火が弱いか。中火にしてみる。すぐにジュウジュウ鳴り出した。急げ。
 卵を三つ、直接フライパンの上で割る。
 安心して。
 僕、卵を割るのは得意なんだ。片手でだってできる。よし、割れた。
 すぐにかき混ぜないと固まっちゃうな。加減とか知らないから、ひたすらかき混ぜる。これって、混ぜないでジッと見ておく時間も必要なのか? 分からないからまあイイや。
 フライパンの隅っこにいる卵が固まり出した。弱火にしてみよう。
 箸で混ぜていたら、トロトロしていた卵がだんだん塊になってきた。おお、スゴい。簡単だな、スクランブルエッグ。
 火を消して、完成!
 お皿は、来客用に買って一度も使ってない大皿で。初めて使う。
 卵三つ分だから、そこそこ大盛りだ。
 大皿の上にフワッと柔らかそうなスクランブルエッグ。
 ごめん、嘘ついた。「フワッと」ではないかも、見た目は「パラッと」かな。
 んん。そういえば「スクランブルエッグ」と「炒り卵」って、何が違うんだろう。
 ……まあ、見た目なんてどうでもイイんだよ。味が良ければね。
 あ! ケチャップあるかな。
 冷蔵庫をまたまた開けてみる。
 よかった。あった。
 じゃあ、食パンも用意して、いざ朝ごはん。たまには焼こうか。
 食パンを”一枚だけ”トースターにセットする。
 そうそう、あのコもそろそろ。
 僕は、寝室へ向かう。

「おーい、できたよー」
 呼びかける。心の中で。さすがにホントに声を出すのは違うよ。だってひとりだし。
 ん? そう、ひとりだよ、僕。
 彼女? あ、彼女はいるよ。
 ベッドに置いていたスマホを手に取る。
 ホラ、見て見て。
 僕の待ち受け画面。
 大好きなアニメ『アキバスタ♡ガールズ』の、高崎レイラちゃん。
 これが僕の彼女さ。
「サプラ〜イズ♪」
 さてさて。
 優雅な朝ごはんの時間だ。

(1,849字)
《終》


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