見出し画像

第2章:権力の頂点へ

【要約】
織田はリジェネック・ジャパンの名義で、港湾地区の物流を効率化する「スマート物流システム」を提案し、地方議員を巻き込む。このシステムには監視カメラと個人情報のリアルタイム解析技術が含まれており、表向きは「地域活性化」と称するが、その裏では対立勢力を一掃する手段として活用。

記者会見の場で、神楽木が監視社会の危険性を指摘するも、織田は弁護士を使って見事に反論し、「地域を救う英雄」として喝采を浴びる。この過程で、村上啓二は徐々に織田に疑念を抱き始めるが、自らの立場を守るため沈黙を保つ。


場所:チャペル(夜)

織田がチャペルの一室で篠塚と向き合い、資料を広げている。篠塚が静かに話しかける。

篠塚昴:
「佐伯は相当追い詰められているようです。部下たちも徐々に不安を感じている。」

織田理久:
(紅茶を飲みながら穏やかに)
「いい流れだな。私たちが手を下す必要はない。彼自身が自滅する道を選んでいる。」

篠塚昴:
「しかし、もし彼が反撃してくるようなことがあれば?」

織田理久:
(微笑みながら)
「その時は、さらに追い詰めるだけだ。彼が崩れる場所とタイミングは私が決める。」

篠塚が軽く頷き、資料を片付け始める。

場所:佐伯のオフィス(数日後・夜)

佐伯がデスクで書類を確認しているが、その顔には疲労の色が濃い。電話が鳴り、佐伯が受話器を取る。薬のケースが置かれている。

佐伯隆三:
「……なんだ?」

電話越しに聞こえる声。

電話の声:
「内部告発が警察に届いているらしいです。社長に関する資料も……。」

佐伯が驚愕し、思わず受話器を握りしめる。

佐伯隆三:
「何だと!?誰がそんなことを……!」

電話を切ると同時に胸を押さえ、苦しそうに呼吸を荒げる。デスクの上に置かれた薬を飲む。その途端、手が震え、泡を吹き白目をむいて倒れる。

画面が暗転し、救急車のサイレンが遠ざかる。

シーン2:佐伯の病室での暗殺

場所:病院の個室(昼)

薄暗い病室。呼吸器をつけた佐伯がベッドに横たわり、目を閉じている。静かなモニター音が室内に響いている。扉が開き、村上と織田が入ってくる。

佐伯が目を開け、二人を見て驚愕する。

佐伯隆三:
(呼吸器越しに、声にならない叫び)
「村上……お前……!」

織田がベッドのそばに立ち、穏やかな笑みを浮かべる。

織田理久:
「佐伯さん、ご様子が思ったよりお元気そうで何よりです。」

佐伯が必死に身をよじりながら、村上に目で訴える。呼吸器の音が彼の焦りを代弁するように速くなる。

佐伯隆三:
(身振りで)
「そいつを……出せ……!」

織田が肩をすくめて軽く笑う。

織田理久:
「心外ですね。せっかくのお見舞いが無礼だと言われるとは。」

佐伯が激しく動き、呼吸が乱れる。織田が冷静な声で篠塚に指示を出す。

織田理久:
「どうやらオヤジは少し興奮しているようだ。昴、看護師を呼んでやれ。」

篠塚が無言でナースコールを押す。数秒後、青ざめた表情の看護師が注射器を持って入る。

看護師:
「……必要な処置をします。」

織田が看護師に近づき、低く静かに言う。

織田理久:
「君、顔色が悪いようだ。体調が悪いなら代わってあげよう。」

篠塚が看護師から注射器を取り上げる。織田が目配せすると、看護師が部屋から出ていく。佐伯が目を見開き、もがく。

佐伯隆三:
(呼吸器越しに叫ぶ)
「やめろ……!」

篠塚が冷静に佐伯を押さえつけ、注射器を手にする。佐伯が最後の力を振り絞って村上に目で訴える。

佐伯隆三:
(目で)
「村上……助けろ……!」

村上が一瞬躊躇するが、目を逸らして沈黙する。篠塚が注射器をゆっくりと佐伯の腕に刺す。

モニター音が不規則に鳴り始め、やがて静寂に包まれる。

シーン3:報道発表

場所:テレビのニュース画面

画面には病院の外観が映し出され、キャスターがニュースを読み上げている。

キャスター:
「本日、港湾物流企業の佐伯隆三社長が急逝しました。死因は心不全と見られています。」

画面が切り替わり、織田がスーツ姿で取材を受ける映像が流れる。

キャスター(声のみ):
「次期社長については未定ですが、織田理久氏が有力候補とされています。」

織田は穏やかな微笑みを浮かべ、カメラを見つめる。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

2. 織田の次なる動き

場所:議員のオフィス(昼)

織田が議員とともに会議をしている。資料には「AI規制」と「ドローン法案」と書かれたタイトルが並ぶ。

議員:
「織田さん、この法案を進めるには、かなりの反発が予想されます。特にメディアはこれに敏感です。」

織田理久:
(微笑を浮かべながら)
「メディアは短期的な視点でしか動きません。これが未来を作る基盤になることを彼らは理解できていない。」

議員:
「ですが、個人情報の管理を強化する部分はさすがに目立ちすぎます。」

織田理久:
「だからこそ、正当性を演出する必要があるのです。『安全な街作り』という大義名分を掲げれば、反対は最小限に抑えられる。」

議員が渋い顔で頷き、織田に手を差し出す。

議員:
「わかりました。一緒に進めましょう。ただし、表向きは慎重に。」

織田がその手を握り、穏やかに笑う。

織田理久:
「もちろんです。ご安心ください。」


4. 真田と神楽木の反発

場所:警察署内の会議室(夜)

真田が部下たちとともに新しいAI規制法案やドローン法案の資料を見ている。

部下1:
「この法案、どう考えても織田に有利な内容です。個人情報の管理強化なんて、反対派を潰すための口実にしか見えません。」

真田:
(織田の写真を見つめながら)
「こいつ……どこかで見たことがある気がする。」

部下1:
「何かご存知なんですか?」

真田:
「まだわからない。ただ、この男には何かある。」

部下2:
「真田さん、電話です。」

真田:
「かけ直す。誰からだ?」

部下2:
「フリージャーナリストの神楽木さんだと」

真田:
「代われ」

部下2:
「2番です」

神楽木正道:
「真田さん、あなたの読み通りでした」

真田:
「相手は誰だった?」

神楽木正道:
「松永議員、元市長の秘書だった男です。織田は議会も取り込んでこの街を完全にコントロールしようとしていますね。その手段が技術でも法案でも、何でも利用するつもりだ。」

真田:
「面白いじゃないか。そうなりゃ君らはネタにこまらんな」

神楽木正道:
「まさか。言論統制で最初に窒息死するのは僕らフリーのジャーナリストですよ。」

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

シーン:神楽木と村上の対話

場所:港湾地区のバー(深夜)

村上が薄暗いバーで一人、静かにウイスキーを傾けている。神楽木が扉を押し開け、中に入る。

神楽木正道:
「今日は用事があって来ました。」

村上が少し目を細め、神楽木を横目で見る。

村上啓二:
「……織田のことか。」

神楽木正道:
「最近の様子を教えてください。」

村上啓二:
「まさか、俺がお前に報告するハメになるとはな。」

村上がグラスを回しながら、軽く首を振る。

村上啓二:
「あいつは止まらないよ。何を聞いても、何を見ても、手を緩めるつもりなんてない。」

神楽木正道:
「……そうですか。それで、村上さんはどうされるおつもりですか?」

村上が短く笑い、目を逸らす。

村上啓二:
「俺?俺には何もできないよ。あいつを相手に何ができる?」

神楽木がじっと村上を見つめるが、少し声を抑えて言う。

神楽木正道:
「そうやって織田がこの街を支配してしまうのを黙って見てるだけでいいのですか?」

村上が無言でグラスを置き、深く息を吐く。

神楽木正道:
「それでいいんですね。」

村上が短く笑うが、その声にはどこか苦さが滲む。

村上啓二:
「いいも悪いもないさ。これが俺の現実だ。」

神楽木が立ち上がり、村上を見下ろす。

神楽木正道:
「……ありがとうございました。」

村上が静かに顔を上げ、神楽木を見つめる。その目には微かな迷いが浮かぶ。



シーン:新物流システムの記者会見

場所:都内のホテル・新物流システム発表会(昼)

広い会場には、織田が手掛ける物流システムのプレゼンテーションが行われている。壇上には村上が立ち、新しいシステムについての説明を終えたところ。

村上啓二:
「以上が、新しい物流システムの概要です。このプロジェクトは地域の発展と安全性の向上を目的としており、住民の皆様に大きな利益をもたらすものと確信しています。」

会場内で拍手が沸き起こる。記者が次々に手を挙げ、質問が飛び交う。

神楽木の登場

神楽木が手を挙げ、指名されて立ち上がる。

神楽木正道:
「神楽木です。このシステムについていくつか質問があります。」

村上が穏やかな表情で彼を見つめるが、内心の警戒心が垣間見える。

神楽木正道:
「物流効率の向上については確かに素晴らしいアイデアだと思います。しかし、このシステムには街全体を監視する可能性があると聞きました。たとえば、ドローンを通じての個人の移動記録や、配送情報のリアルタイム監視など。」

会場が一瞬ざわつく。村上は少し間を置いてから、落ち着いた声で答える。

村上啓二:
「ご質問ありがとうございます。そのようなご懸念が出ることは理解しています。」

村上が視線を会場全体に向け、柔らかい笑みを浮かべる。

村上啓二:
「このシステムが目指しているのは、あくまで物流の効率化と住民の生活向上です。監視という言葉には否定的な響きがありますが、適切な範囲での情報管理はむしろ市民の安全を守るために必要不可欠だと考えています。」

神楽木の追及

神楽木がさらに食い下がる。

神楽木正道:
「適切な範囲、とおっしゃいましたが、その基準は誰が決めるのですか?その権限が企業にあるとすれば、悪用される可能性があるのでは?」

村上がわずかに口元を引き締め、答える。

村上啓二:
「重要なご指摘です。ですから、私たちは透明性を重視しています。このプロジェクトの監視基準については、専門家や行政と協力し、第三者機関を設置することを検討しています。」

村上が意図的に「第三者機関」という言葉を強調する。これが織田の独裁的な計画を封じ込めるヒントになることを暗に示している。

村上啓二:
「この街をより良くするための試みです。我々は、市民の皆様がこのシステムを信頼し、賛同していただけるものと信じています。」

会場が静まり返る中、神楽木が視線を鋭く村上に向けるが、村上は動じない。

織田の登場

壇上に織田が現れ、静かに拍手をしながら村上の肩に手を置く。

織田理久:
「啓二、素晴らしい説明だったよ。君のようなリーダーがいるおかげで、このプロジェクトは確実に成功する。」

会場内に軽い拍手が起きるが、神楽木と織田の視線が交錯する。

織田理久:
「神楽木君、鋭い質問だった。しかし、このプロジェクトがどれだけの利益を生むか、ぜひ君も時間をかけて理解してほしい。」

神楽木が冷ややかな視線で織田を見つめる。

神楽木正道:
「理解させてもらいますよ、徹底的にね。」

織田が笑みを浮かべるが、その目には冷たさが宿る。

シーンの結末

村上が織田に一礼しながら壇上を降りるが、その表情にはどこか沈鬱な影が見える。神楽木はライブ配信を続けながら、視聴者に語りかける。

神楽木正道(カメラに向けて):
「皆さん、これが私たちの街で今起きていることです。表向きの素晴らしいプロジェクトの裏で、何が進んでいるのか。真実を追求するのは私たち市民の義務です。」

視聴者のコメントが次々に流れ始める。「何か怪しい」「第三者機関が本当に機能するのか?」などの声が広がる。

いいなと思ったら応援しよう!