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第4章:軽井沢での破滅
【要約】
織田は一連の戦いの後、耳の聞こえない女性・美咲と軽井沢の別荘で静かな時間を過ごす。散歩中、猟師が美咲を誤解して猟銃を構え、混乱の中で誤射が起こる。銃弾は織田を貫き、彼はその場で倒れる。
倒れた織田は、青い空、木々の揺れ、小鳥の囀り、美咲の涙を見つめながら、微かに微笑む。そして、彼が最後に呟いた言葉はこうだった。
「……完璧だ。」
場所:軽井沢の別荘
別荘のテラス。朝の柔らかな日差しが降り注ぎ、澄んだ空気が漂う中、織田がチェアに腰掛けている。隣には、耳の聞こえない女性・美咲が微笑みながら手話で話しかけている。
織田は彼女の動きに目を向け、ゆっくりと手話で返す。そのテーブルには紅茶と焼きたてのスコーンが並び、鳥の囀りが静寂を彩っている。
そこへ篠塚が現れ、軽く一礼する。
篠塚昴:
「村上の件、全て処理しました。」
織田は紅茶を一口飲み、短く頷く。
織田理久:
「他には?」
篠塚昴:
「特に報告すべきことはありません。」
織田は美咲に視線を戻し、彼女がスコーンを指差して何かを手話で伝えるのを見て、小さく笑う。
織田理久:
「散歩に行く。彼女も外の空気を楽しみたがっているようだ。」
篠塚が一歩前に出る。
篠塚昴:
「私もついて行きます。」
織田が篠塚を一瞥し、静かに首を横に振る。
織田理久:
「必要ない。」
篠塚が口を開きかけるが、織田が手を上げて制する。
織田理久:
「お前がついてくると、彼女が緊張する。」
篠塚は無言で頷き、一歩下がる。織田は立ち上がり、美咲の手を取りながら庭へ向かう。
散歩中のトラブル
別荘裏手の小道。美咲は楽しげに木々を見上げ、織田は少し後ろから彼女を見守る。風が葉を揺らし、鳥たちの囀りが微かに響いている。
ふと、美咲が小道脇の野花に気を取られ、道から少し離れる。その瞬間、茂みから猟銃を抱えた男が現れる。猟師風の服装をした男は突然の来訪者に驚き、警戒の色を見せる。
猟師:
「誰だ!?ここは許可がいる場所だぞ!」
美咲は男の声に気づかず、さらに一歩進む。男は焦りから猟銃を構え、威嚇する。
猟師:
「近づくな!止まれ!」
織田が静かに歩み寄り、冷たい目で男を見据える。
織田理久:
「その銃を下ろせ。」
男は織田の迫力にたじろぐが、美咲の無反応な様子にさらに混乱し、焦りを募らせる。
猟師:
「おい!こっちを見ろ!止まれと言ってるんだ!」
織田がさらに一歩近づき、低い声で言う。
織田理久:
「銃を下ろせと言った。」
男の手が震え、焦りと恐怖が入り混じる。そして、次の瞬間、誤って引き金が引かれる。銃声が森に響き渡る。
織田の最期
銃弾が織田の胸を貫く。彼は一歩後ずさりし、ゆっくりと地面に崩れ落ちる。美咲が驚いて駆け寄り、彼の体を抱き起こす。
織田の視界が揺らぎ、目の前に広がる光景が鮮明になる。青く澄んだ空、風に揺れる木々、小鳥たちの囀り。美咲が必死に手話で何かを伝えようとするが、織田は静かに見つめる。
冷たい土の感触と空の広がりの中で、彼は口元をわずかに動かす。
織田理久:
「……完璧だ。」
その言葉を最後に、彼は静かに息絶える。
篠塚が銃声を聞きつけ、森の奥から駆けつける。猟師は驚愕し、猟銃を抱えたまま慌てて走り去る。篠塚はそれを追わず、無言で織田の遺体を見下ろす。
美咲が震えながら織田を抱きしめているが、篠塚は何も言わず、静かにその場を見守るだけだった。