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第1章:成り上がり(前編)

【要約】
織田はかつての友人・篠塚昴(現世では幼馴染)を信頼し、右腕として取り込み、港湾地区を牛耳る「黒虎会」への反抗を開始する。SNSプラットフォーム「Instagear」を駆使して世論を操作し、ジャーナリストの神楽木正道の協力を得ることで、ギャングたちを罠にはめる。


シーン7 - ホテルの一室での密会

場所:ビジネスホテルの一室

(夜。静まり返った中級クラスのビジネスホテル。部屋の中にはルームサービスで運ばれたディナーが並べられている。織田がテーブルに座り、食事をしている。部屋の外では篠塚が厳しく警戒を続けている。)

(エレベーターの音が鳴り、神楽木が到着する。篠塚が近づき、無言でボディチェックを始める。)

篠塚のチェック

篠塚昴:
「神楽木正道、だな?」

神楽木正道:
(落ち着いた声で)「その通りだ。」

(篠塚が慎重に神楽木の体を調べ、異常がないと確認すると無言でドアをノックする。中から織田の低い声が聞こえる。)

織田理久:
「入れ。」

(篠塚が神楽木を案内する。神楽木が軽く礼をして部屋に入る。)

織田と神楽木の対話

(織田がテーブルで食事を続けている。コーヒーを軽く口に含んだ後、神楽木に視線を向ける。)

織田理久:
「君が神楽木か。」

神楽木正道:
「ええ、やっとお会いできました。」

織田理久:
(箸を置き)「やっと、か。遅れた理由を聞かないといけないのか?」

神楽木正道:
(軽く笑みを浮かべて)「遅れたのではなく、慎重に来ただけです。あなたも足がつくのは嫌なのでは?」

織田理久:
(微かに笑い)「いいだろう。それで、君が私に会いたい理由を聞こう。」

神楽木の切り出し

神楽木正道:
「昨日、あなたが武田の部下と渡り合う場面を見ました。その威厳、そして冷静さ……あなたはただのチンピラには見えなかった。」

織田理久:
「それが理由で、わざわざ私を追ってきたのか。」

神楽木正道:
「はい。私はジャーナリストですが、単なる記事を書くために来たわけではありません。」

織田理久:
「では、何のために?」

神楽木正道:
「協力したいのです。この時代で支配を築くなら、力だけでは足りない。情報が必要です。」

織田理久:
(興味深そうに)「情報戦か。具体的にどういうことだ?」

プラットフォームの具体的な使い方

神楽木正道:
「例えば、次の3つのツールを使います。Instagear、ViewTube、そしてZ(旧Twister)です。」

(神楽木がスマホを取り出し、画面を織田に見せる。)

1. Instagear:視覚的インパクトの操作
神楽木正道:
「これはInstagearです。写真と短い動画が中心のSNS。ここでは、視覚的なインパクトを使います。武田の取引現場の写真を加工し、彼の部下が密輸品を運んでいるように見せる。」
織田理久:
「だが、それが加工だと分かったらどうなる?」
神楽木正道:
「だから、匿名アカウントを使うのです。そして、複数のアカウントから同じ写真を拡散すれば、噂は真実のように広がる。」

2. ViewTube:動画の説得力を利用
神楽木正道:
「次はViewTube。ここでは動画を使います。例えば、武田の密輸品が港で動いている様子を再現したフェイク動画をアップロードします。」
織田理久:
「フェイク動画が信じられるのか?」
神楽木正道:
「ナレーションを入れて『内部告発者』の視点で語る。『これは命懸けで撮影した』と説明すれば、リアルに見えます。」

3. Z(旧Twister):短文での噂の拡散
神楽木正道:
「最後にZ(旧Twister)。ここでは短文の投稿を使います。例えば、『村上啓二が裏切りを計画している』といった投稿を匿名で拡散する。」
織田理久:
「短文だけで信じる者が出るのか?」
神楽木正道:
「真偽は関係ありません。短文は感情を刺激します。それが武田の部下に伝われば、彼らは互いを疑い始めるでしょう。」

織田の品定め

(織田がコーヒーを一口飲み、神楽木をじっと見つめる。)

織田理久:
「君の話は理にかなっている。だが、私は慎重だ。これが本当に効果的かどうか、試してみる必要がある。」

神楽木正道:
「もちろんです。試して結果が出れば、私を信用してください。」

(織田が小さく笑い、篠塚に目配せする。篠塚が無言で頷き、部屋を出て行く。)

織田理久:
「いいだろう。まずはその情報戦というものを見せてもらおう。」


場所:武田のアジト

(暗い部屋。大型ディスプレイに佐伯隆三が映し出されている。武田英司は冷静だが、その眼光には鋭い光が宿っている。)

佐伯隆三:
(画面越しに冷ややかな表情)
「英司、この噂はどういうことだ?お前の組織が崩壊し始めているって話じゃないか。」

武田英司:
(落ち着いた声で)
「くだらない噂だ。それ以上でも以下でもない。」

佐伯隆三:
「そうだとしても、取引に影響が出る。俺たちにはリスクを取る理由がない。」

武田英司:
(眉一つ動かさずに)
「佐伯、リスクを取るかどうかはお前次第だ。だが、その判断を誤れば、誰が責任を取る?」

佐伯隆三:
(短く黙るが、苛立ちを隠せない)
「……分かった。だが、次の取引が無事に終わるまでだ。その間に、この噂を鎮める努力を見せろ。」

武田英司:
(冷たく微笑む)
「必要ない。噂を流した奴を見つけ次第、処理する。それでいいはずだ。」

(通話が切れ、画面が暗転する。武田は部屋を静かに歩き、机に拳を置く。)

部下たちへの指示

(村上啓二と吉田誠二、山口克也が部屋に入る。武田は落ち着いた表情で彼らを見つめる。)

武田英司:
「噂の出どころを探せ。手当たり次第にではなく、まずInstagearとZ(旧Twister)を抑えろ。」

村上啓二:
「了解しました。私のネットワークを動かします。」

武田英司:
「いいか、村上。この状況を利用して動揺を誘う奴が現れたら、そいつを追え。それが内部の者であれ、外部であれ関係ない。」

(村上が静かに頷く。)

吉田誠二:
「もし裏切り者が内部にいた場合は?」

武田英司:
(冷たく)
「裏切り者などいない。それが真実だ。だが、動揺を見せた者がいたら、そいつが次の餌だ。」

(部下たちが「分かりました」と頷き、素早く行動に移る。)

武田の独白

(部屋に静寂が戻る。武田が窓の外を見つめながら、一人で呟く。)

武田英司:
「噂を流した奴が何者であれ……俺の秩序を乱した罰は受けてもらう。」




日常に潜む緊張

場所:港湾地区(昼間)

(商業港。作業員がコンテナを整理し、フォークリフトが忙しなく行き交う。吉田誠二と山口克也が作業服を着て歩いている。2人とも手にはクリップボードを持ち、荷物リストを確認しながら進む。)

(山口がコンテナの入口で周囲を警戒しつつ、吉田が密輸品を確認する。吉田は箱の中身を丁寧に確認し、封を閉じ直すと箱を元の場所に戻す。)

(リストには密輸品の確認結果を簡単に記録する。吉田の動きは無駄がなく、手慣れた様子だ。)

(10番コンテナの前に来ると、吉田はまた鍵を開けるが、中身にはほとんど目を向けず、リストにチェックを入れると即座に鍵を閉じる。山口はフォークリフトに寄りかかりながら軽く頷く。)

(2人は何事もなかったかのように次のコンテナへ向かう。)

異常の発見:動物の死骸と監視者

(コンテナ作業を続ける中、不意に吉田が地面に不自然に置かれた袋に気付く。動きが止まり、山口も視線を向ける。)

(山口が袋を蹴ると、中から動物の死骸(鳥)が転がり出る。吉田はその場にしゃがみ込み、袋の中を慎重に調べる。)

(山口が顔をしかめ、周囲を見回す。ふと遠くでスマホを構える人物が目に入る。人物は2人に気付くと、慌てて走り去る。)


シーン10 修正版 - 緊張の高まり

場所:武田のアジト(夕方)

(暗い部屋。武田がモニターを見つめている。村上啓二が隣で報告を行い、部下たちが忙しなく動き回る。)

村上啓二:
「リーダー、例の神楽木というジャーナリストから織田の動きに関する情報が届きました。」

(村上がタブレットを渡し、武田がじっと画面を見る。)

武田英司:
(低く冷たい声で)
「次は港か……具体的なタイミングまで書かれているとはな。」

村上啓二:
「これが罠である可能性は?」

武田英司:
(冷笑して)
「罠かもしれん。だが、奴が動く可能性も十分にある。」

(武田がタブレットを机に置き、部下たちに指示を出す。)

武田英司:
「全員、港湾地区に集中しろ。現場に潜り込ませ、徹底的に監視させろ。」

村上啓二:
「了解しました。」

(武田が椅子から立ち上がり、窓の外を眺める。)

武田英司:
「織田が現れるなら、そこで捉える。神楽木の情報が正しいかどうかはどうでもいい。重要なのは、行動するタイミングを逃さないことだ。」

(部下たちがそれぞれ散っていく。)

場所:港湾地区(夜)

シーン:取引の崩壊と戦闘の終結

霧が漂う港湾地区。コンテナが積み上げられた暗い空間で、武田の部下(村上啓二)と佐伯の部下(高瀬)が取引の現場に集まっている。両者の間には不信感が漂っており、互いに警戒の目を光らせている。吉田と山口が銃を突きつけながら織田を連れてくる。

吉田「居ました。」
村上「よし。」

村上啓二が織田を鋭い目で見つめる。「お前、織田か?」

織田理久は余裕の笑みを浮かべながら、平然と答える。「また会いましたね、村上さん。」
山口「舐めた口を!」
村上が制する。
村上「始末してこい」
織田「ありがたい。こっちが優先されるわけですね。でも大丈夫ですか?大事な取引なんでしょ?ねえ、そちらの方!」

高瀬が不審そうに村上を見て、「お前らの内輪もめが終わるのを待たなきゃならんのか?」

村上啓二が冷静に返す。「噂を流した犯人かもしれん。」
高瀬、イラついて「だったら何だ。全部ひっくるめてお前らの問題だろ。」

遠く離れた武田のアジトでは、武田がモニター越しにこの様子を監視している。「村上、取引が優先だ。」

村上、舌打ちをして山口と吉田に
「そこで待ってろ。」

一方、佐伯のアジトでも、佐伯がオフィスのモニターを見つめながら報告を待っている。「高瀬、不審者などどうでもいい。取引を進めろ。」

現場では織田が口を開く。「信用がない関係ほど滑稽なものはないですね。こういう場に集まるだけでお互いを疑っている。」

村上啓二が苛立ちながら銃を突きつける。「黙れ!」

織田は全く動じずに続ける。「信じるべきものがないなら、裏切るリスクもないでしょう。そうは思いませんか?」

高瀬が村上に向かって冷たく言う。「お前ら、そっちで何コソコソやってんだ?何か企んでいるんじゃないのか?」

村上が無線で武田に報告する。「佐伯の連中がこちらを疑っています。」

武田英司が無線越しに冷たく指示する。「気にするな。取引を進めろ。」

高瀬が無線で佐伯に伝える。「武田側が余計な動きをしています。注意が必要です。」

佐伯隆三が苛立ちを隠さず答える。「取引が終われば全て分かる。それまでは待て。」

取引が進む中、突然遠くから銃声が響く。高瀬が倒れ、現場は一気に混乱に陥る。村上が無線で叫ぶ。「武田さん、銃撃が始まりました!誰かが佐伯の連中に発砲した!」
武田「バカが!」
村上「反撃を受けています!」

武田英司が低い声で指示を出す。「全員応戦しろ。現場を抑えるんだ。」

村上
「吉田!こい!山口は織田(そいつ)を沈めてこい!」

銃撃戦が激化する中、武田の部下になりすました篠塚が静かにコンテナの影へと移動する。後ろから山口の首を絞め、織田を解放する。
織田「通報は?」
篠塚「済んでます」
織田「神楽木は?」
篠塚「警察の後、来ると言ってます。」
織田理久が微笑みながら答える。「完璧だ。」

織田と篠塚はジャーナリストに扮して警察の目を逃れる準備を進める。二人はコンテナの陰で衣装を整え、カメラを手に持つ。

その直後、警察のサイレンが響き渡り、真田が部下を率いて現場に突入する。「全員その場で動くな!武器を捨てろ!」

真田が二人に目を留める。「おい、そこのお前ら!何者だ?」

織田が慌てた様子で答える。「私たちはただのジャーナリストです。報道のためにここに来ただけです!」

その時、神楽木が別の方向から現れる。スーツ姿で落ち着いた様子の彼が剛田に声をかける。「真田警部、お疲れ様です。」

真田が怪訝そうに神楽木を見る。「神楽木、こんな時間に何をしている?」

神楽木が軽く微笑みながら答える。「取引現場の情報を聞いて急いで来ました。彼らは私の仲間です。」

真田が二人をしげしげと見つめるが、最終的には神楽木の言葉を信じる。「仲間か。こんな危険な場所に行かせるとは、仲間思いなことだ。」

神楽木が少し笑みを浮かべながら答える。「真実を追う危険は彼らも承知してます。おい、行くぞ」

神楽木は織田と篠塚を連れて現場を離れる。安全な場所に到着すると、静かに織田に話しかける。「佐伯の方にもデマを仕掛けるとは思わなかった。」

織田が軽く微笑んで答える。「相手を一人だけにすると、こちらの動きが読まれやすくなるからな。」

織田が遠くを見つめながら静かに呟く。「戦いは終わらせるためにある。そのためには、新しい秩序が必要だ。」

織田の冷たい笑みが映し出され、シーンが幕を閉じる。

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