見出し画像

プロローグ:転生

【要約】
織田理久は目を覚ます。そこは港湾地区「港南湾」の廃倉庫。彼は突然の転生に混乱しながらも、自分がかつてチェーザレ・ボルジアであり、現代の日本に転生したことを理解する。
そこには、裏社会で名前も聞かない小さなギャンググループの構成員としての彼がいた。

彼の最初の試練は、仲間である斉藤に裏切られ、敵ギャングに差し出されそうになる場面だった。だが、織田は咄嗟の判断力と圧倒的なカリスマで敵を言葉巧みに操り、命を拾う。この場面が、彼の新たな「チェーザレ」としての道の始まりだった。



コンテナヤード / 粛清の夜

(暗いコンテナヤード。遠くで船の汽笛が聞こえる。織田理久と仲間の斉藤が追い詰められ、コンテナの影に隠れている。敵の声が響く。)

武田:
「残りはお前たちだけだ!さっさと武器を捨てて出てこい!」

(織田は怯え、肩を震わせている。隣にいる斉藤は冷静を装っているが、額に汗が浮かんでいる。)

斉藤:
(低声で)「織田、お前は左から出ろ。俺は右から出る。一緒に出れば敵は混乱するはずだ。」

織田:
(不安そうに)「で、でも……裏切ったりしないよな?」

斉藤:
(イラついたように)「当たり前だろ!俺たちは鉄の絆で結ばれてるんだ!信じろ。」

織田:
(しばらく黙ってから)「……わかった。」

斉藤:
「いくぞ。せーの……!」

(織田が左からゆっくり出て行く。だが、右から出るはずの斉藤はそのまま影に隠れ、敵の隙を突いて逃げ出す。)

織田:
(一人で震えながら手を挙げる)「さ、斉藤・・・!やっぱり裏切ったのか・・・クソ!」

シーン2 - 粛清

(織田が出た瞬間、敵たちが彼に集中する。リーダーの男が近づいてくる。)

武田:
(嘲笑しながら)「やっと顔を見せたか、臆病者。」

織田:
(ベソをかきながらも必死に弁解する)
「ま、待ってくれ!俺には何も関係ないんだ!全部斉藤が――」

武田:
「知ってるよ。お前は使えない腰抜けだってことくらい。」

織田:
「ひいい!お願いです!撃たないで!」

(尻餅をついて後ずさる織田。後ろのコンテナにぶつかる)

織田:
「ひゃっ!」

(武田が銃を織田に向ける。その時、大きな雷が倉庫に落ちる。停電で暗くなる。武田の部下が武田の周りにあつまる。側近の村上が携帯電話のライトをつける。
織田が俯いている。震えも止まっている。)

村上:
「気絶してますね。」
武田:
「情けない野郎だ。」
(ビイイインと音がして、電灯が復旧する。)

武田:
「起こせ」
(村上が織田に近づこうとする。)

織田:
(低く、冷静に)「……その銃、撃てるのか?」

(村上、咄嗟に退く。武田以下、改めて銃をかまえる。織田、口元に微かに笑みを浮かべている。)

武田:
(少し戸惑いながら)「何だと?」

織田:
「撃てば、お前たちは終わる。」

武田:
(嘲笑しながら)「どうしてだ?」

織田:
「このコンテナの中身を知らないのか?爆薬だ。もしその銃弾が私に当たれば、後ろの壁を貫通して中の火薬に引火する。」

(敵の部下たちがざわつき始める。)

部下A:
「リーダー、本当ですか?!」

武田:
(部下を睨みながら)「こいつの blef(ブラフ)だ!落ち着け!」

織田:
(微笑みを浮かべながら)「確かめてみるか?お前が何人の部下を巻き添えにするか、楽しみだな。」

シーン3 - 言葉による逆転

(武田が一瞬考え込む。織田はさらに言葉を重ね、状況を支配し始める。織田が立ち上がる)

織田:
「それとも、こうしよう。お前の持つ銃をここに置け。取引をしてやる。」

武田:
(苛立ちながら)「取引だと?」

織田:
「お前たちは私を殺せない。だが、私が命を差し出す代わりに、あの逃げた斉藤を渡そう。」

(敵の部下たちが動揺する。)

部下B:
「斉藤……確かに、あいつの方が厄介だ。」

織田:
(冷静に付け加える)
「私はただの腰抜けだ。お前たちが追うべきは、裏切り者の方だろう?」

(武田が数秒間沈黙するが、やがて銃を下ろす。)

武田:
「……なるほど。だが、言葉だけで信じると思うな。」

織田:
「なら証明しよう。私を連れて行け。」

(武田が部下たちに指示を出し、織田を引き連れてその場を去る。だが、織田の表情には冷静な計算の光が見える。)

シーン4 - 憑依の兆し

(車の中で、織田が微かに笑みを浮かべる。ふと視界がぼやけ、ルネサンス期の戦場の幻影が映る。)

幻影のチェーザレ:
「恐怖を操る者こそ、支配者となる。」

(織田が深く息を吐き、瞳に新たな光が宿る。)




シーン5 - 斉藤の引き渡し

(夜の空き地。敵ギャングたちが車で到着し、織田を囲む。彼の手は縛られたまま。武田は不機嫌そうな顔で降りてくる。)

武田(武田):
「さて、約束通り斉藤を引き渡すと言ったな。だが、一つ問題がある。」

(織田が冷静に武田を見上げる。)

織田理久:
「……何だ?」

武田:
「お前に価値があるかどうかだ。俺たちはお前の話を信じてここまで来たが、そもそも、お前はただの役立たずじゃないのか?」

織田理久:
(ゆっくりと微笑み)「信じるも信じないも、お前次第だ。だが、ここで私を殺せば、お前たちは何も得られない。」

(武田が一瞬眉をひそめるが、すぐに笑う。)

武田:
「得られるもの?面白いことを言うな。そもそも斉藤を捕まえたところで、あいつが何を知っているかも分からん。」

(織田は短く息を吐き、状況を観察して一瞬考え込む。その後、静かに口を開く。)

織田理久:
「斉藤が何を知っているかは重要ではない。重要なのは……お前たちが斉藤を逃がした事実が広まったとき、他の連中がどう見るかだ。」

武田:
(少し興味を示しながら)「他の連中?」

織田理久:
「お前たちが今、彼を見逃せば、それは弱さの証拠になる。仲間たちはどう考える?『リーダーが敵を取り逃がした』と噂が広まれば、次はお前たちが狙われる。」

(敵の部下たちがざわつき始める。)

部下A:
「それ、本当ですか?リーダー……?」

武田:
(イラついたように部下を睨む)「黙れ!俺が決める!」

(織田が冷静に追い討ちをかけるように続ける。)

織田理久:
「逆に、斉藤を確保すればどうだ? あいつを見せしめにするだけで、他の連中はお前たちを恐れるようになる。」

(武田が少し考え込むが、すぐに鼻で笑う。)

武田:
「なるほど。だが、どうやって捕まえる?お前をここで殺して、俺たちが無駄足を踏んだら意味がない。」

織田理久:
「私を殺せば、確かに何も残らない。だが、私を生かせば――お前たちに斉藤を引き渡す手助けができる。」

武田:
(目を細めながら)「つまり、取引をしろと言いたいのか?」

織田理久:
「そうだ。私は逃げない。斉藤を捕らえる手助けをする。だが、その代わり、お前たちは私の命を保証する。それが秩序だ。」

シーン6 - 斉藤の捕縛

(場面転換。コンテナヤード近くの廃墟で、逃げていた斉藤が隠れている。敵ギャングと織田がその場所に現れる。)

斉藤:
(怯えた表情で)「おい、織田……!なんでお前がここに……!」

(織田は無言のまま斉藤を見つめる。武田が銃を構えて近づく。)

武田:
「よし、捕まえたぞ。これでいいな、織田。」

(織田が静かに頷き、口を開く。)

織田理久:
「約束は果たした。」

(武田が冷たく笑う。)

武田:
「確かにな。だが、ここでお前を生かしておく義理はない。」

(その瞬間、織田が冷静に言葉を重ねる。)

織田理久:
「……それは賢明ではない。」

武田:
「なんだと?」

織田理久:
「私を殺せば、ここにいる全員が、斉藤と同じ末路を辿るだろう。お前たちに必要なのは敵を殺すことではない――恐怖を利用する術だ。」

武田:
(表情を険しくする)「どういう意味だ?」

織田理久:
「私を見逃し、ここで終わりにする。それが最も賢い選択だ。さもなくば、次に消えるのはお前たちだ。」

(リーダーが数秒間睨み合うが、やがて銃を下ろす。)

武田:
「面白い。だが、次はないぞ。」

(斉藤が連れ去られ、織田はその場に一人残される。)

いいなと思ったら応援しよう!