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作り話

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目的はわからないが、とにかく作り話を作ってみよう。
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コメダ珈琲にて

コメダ珈琲にて

「なあ、気づいてるか?」

コメダ珈琲で隣に座った男が声をかけてきた。俺の方は一切見ずに。
俺にしか聞こえないくらい、小さい声で。
小さくはあったが、その声には確実に答えなければならない緊張感がみなぎっていた。
俺は面食らいつつ、必死に返事を絞り出した。

「何がですか?」

男は顔色一つ変えず、まるで独り言のように呟いた。その声は低く、どこか人を安らかな気持ちにさせる深い響きに満ちていた。

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静かにしてくれ

静かにしてくれ

それほど広くない部屋。
大きな窓。陰。
どこかで煙が上がっている。
眺めているのもいい。

カラスが飛んでいる。
カラスからは見えるのだろうか?
あいつは、何を羨ましいと思うだろう。

シャツの袖口のボタンを留める時が一番気持ちいい。
カラスには想像もつかない快感。

静けさだけが、貴族と庶民を分ける唯一のコンセプトだ。
庶民はうるさい音をたてる。

うるさい。

静かにしてくれ。

静かにしてほ

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2024/06/16でかい話2

2024/06/16でかい話2

あらゆる闘争が、その可能性の危うさの上に成り立っているのだから、またあらゆる闘争はより大きなものへの挑戦である。

これ以外の闘争は、もはや闘争ではなく、作業に過ぎない。

その巨大な少女は、われわれを踏み潰すことに初め躊躇していたが、じきに状況に慣れ、かえって痛痒を感じないようになっていた。

われわれは彼女を排除する必要に迫られた。

「相手は少女である」

「人間である」

そういった反対意

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2024/06/15でかい話

2024/06/15でかい話

安全な場所から、暴力をからかう。

とっちらかったものを整理する。

このどちらかだ。

昨日、安全な場所から暴力をからかう話はしたので、とっちらかったものを整理する話を作ろう。

いや、やめておこう。

なんか、むずかしい。

安全な場所から暴力をからかう。

暴力への欲望。

女性は、暴力の化身なのか。

だから、戦争映画は女性がでてこないのに観れる。

暴力とは何か。

哲学的な問いではなく

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マサが姐さんをつんつんするに至った経緯

マサが姐さんをつんつんするに至った経緯

まずは、夢のような環境を設定しないといけない。
古今、あらゆる物語はまず、夢のような環境を描くところから始まった。
一見それは、安直なユートピアではない。
むしろ、一般にはネガティブな状況である。
「ゾンビにかこまれてショッピングモールに閉じ込められる」
「疫病が流行って、子供だけで暮らしている」
「行きがかり上ロボットに乗って使徒と戦わなきゃならなくなった」
何かドラマが起きそうな、実際、だから

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へその話

へその話

どこから始めるのがいいのだろう。
物語を始める前から始めよう。
それがフェアだろう。
欲望を引き摺り出すために。

「願いを叶えてやろう」
と魔神は言った。
その上で僕らはアラジンに騙されているとしたら?
つまり、彼は今も願いを叶えている途中で、そのことを僕らが知らないとしたら?

アラジンは時を止めた。
そして、時をシミュレーションする。
こちら側の時を止めた上で、魔神にシミュレーションさせる。

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ふざけんな

ふざけんな

猫がにゃー。
犬がワン。
ふざけんな。

何が動物だ。
ふざけんな。
何がふざけんなだ。
ふざけんな。

ピンロンリンロン。
なんだ今どき、この安っぽいチャイムは。
「っらしゃいませー」
ふざけんな。何がコンビニの店員だ。

「おい、貴様、態度が悪いぞ。」
何が店長だ、ふざけんな。
「あっ、すみません、気をつけます。」
何謝ってんだ。ふざけんな。
それと、「あっ」て何だ。

「オハヨ」
「おはよう

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痴漢の生涯

痴漢の生涯

女性の尻を揉んでいる。
どういう状況だ?

電車の中。
俺は痴漢だ!
すぐさま手を離さなければ!

しかし、痴漢としてこの世界に生まれた以上、その役目を全うするべきでは?
「ちょっと、あんた!」
正義漢に見つかった!
ピンチ!

俺は、次の駅で降りた。
被害者の女性と、正義漢。
そこに、すぐに駅員がやってきた。
役者は揃った。

そこで交わされる会話についてここで描写するつもりはない。
それは誰も

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空と地面

空と地面

青空が美しい。
飛行機が雲を引きながら飛んでいく。
ささやくような轟音がその後を追いかける。

あの飛行機からは、今、地べたに這いつくばって働いている僕らの姿は見えないのだろう。
もし、窓からのぞく乗客がいたら、彼が見るのは風景としての地上だけだ。彼は呼吸する。これから待っている旅の予感、または、過ごしてきた思い出が甘い空気となって客室を満たしている。例えそれが、作られた気圧だったとしても。

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夜道のできごと

夜道のできごと

道を歩く。
夜道だ。
カエルが鳴いている。

眠くなってきたが、ここは道なので眠ることができない。
「すぐそこが家なんだ。」
一緒に歩いていた女が言う。
「そうか、じゃあ、そこへ行って寝かせてくれ。」
「でも、変なことしないでよね。」
「変なことしないかどうかは、一度ゆっくり寝てから答えたい。とにかく眠いんだ。」
女は呆れた様子で俺を案内した。

田舎では、夜道でカエルの鳴き声を聞く。
田舎では、

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無限の蟻

無限の蟻

さて、今日は何をしようか。
まだ、何も書き込まれていない荒野は、風だけが吹いている。
「オイオイ、馬鹿言っちゃいけないよ。一体、風以外に何が吹き得るってんだい?」
いじの悪い小男が言う。
(いじの悪い男というのは決まって小男だが、これは大柄な男は尊敬されるのに対し、小柄な男は必ずしもそうではない、ということだろうか。あるいは、ラテンアメリカのおっとこれ以上はやめておこう。)

ともかく、反論せねば

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