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広告費はどれだけ必要?/クラファン成功の秘訣(3)

電子楽器インスタコードがクラウドファンディングで8000万円を集めることができた理由について、過去の記事では「事前準備」「マスメディアへの広報」について書きました。今回はお金をかけて宣伝する「広告」についてです。

ネット広告

最も効果が大きかったのはネット広告です。
2300名の購入者の半数以上が広告でインスタコードを知って購入してくださったと思います。
その中でも特にFacebook広告が頼りになりました。

目標金額の10%が目安

クラファンを始める前に、運営会社から「目標金額の10%を広告費として準備して下さい」と言われました。インスタコードの場合は目標金額が5000万円だったので、広告費は500万円ということになります。

しかし、試作機の開発で1000万円を費やして一文無しだった私には、500万円も用意できません。生命保険の一部を切り崩して、なけなしの300万円で勘弁してもらいました。

データを見ながら広告見直しの日々

クラファン運営会社kibidango にはネット広告のプロフェッショナルがいるので、広告制作や出稿をお任せできます。(別途費用が必要です)
しかし、私自身も勉強したかったし、音楽が好きな人に刺さる広告を作れるに違いないと思って、自分でも広告を作りながら運用しました。

Facebookは、広告を見せる対象を細かく設定できます。
年代、性別、住んでいる地域はもちろん、フォローしているFacebookページやプロフィールから趣味/趣向を絞り込むこともできます。ギター、ピアノ、作曲、カラオケ、吹奏楽・・・ 様々な趣向の人を絞り込み、どんな人がどんな広告をクリックするのか、反応率などのデータを数時間おきに検証しながら、反応率が上がるように文章や動画を少しずつ変えてブラッシュアップする作業を1ヶ月以上続けました。

その結果、クラファン運営会社が出した広告も、私が出した広告も、どちらも広告費2000円以下で1台購入されるようになりました。

商品単価の10%を切れば大成功と言われる中、2000円以下の広告費で3万円台の製品が購入されるというのは驚異的な数字だそうです。

そして期限より早く5000万円の目標を達成したので、広告を出す量を抑えて、用意した300万円の広告費を使い切ることなく、クラファンを終えることができました。切り崩した生命保険もちゃんと戻すことができました。

今は広告効果が出にくい時代に

大活躍してくれたネット広告ですが、2020年以降、ネット広告の効果が大きく落ちる事件がありました。
それはApple社がiPhoneなどのプライバシー対策を強化したことです。

ネット広告は、個人のプロフィールや行動履歴に応じて最適化された広告が表示されます。しかし、Apple社はプライバシー対策を強化し、行動履歴が記録されにくいようにiPhoneなどの仕様を変更しました。
その結果、個人の趣向に応じた広告を表示しにくくなったり、広告を見て購入されたかどうかを正確に測定できなくなったんです。

ですからインスタコードのクラファンを実施した頃に比べて、今はネット広告を効率的に運用しにくくなっています

GoogleやFacebookが収入源を広告に頼っているのと違い、Apple社はiPhone本体やアプリストアの売上が主な収入源なので、広告主の都合なんてお構いなしなんでしょうね。

プレゼントキャンペーン

広告ではありませんが、クラファン開始前に、プレゼントキャンペーンも実施しました。

メルマガ、LINE、SNSなどを登録をしてくれた人から抽選で1名、製品を1台プレゼントするという企画です。登録者は徐々に増えましたが、いずれも応募は500人未満で、クラファン成功のために必要な1500名には遠く及びませんでした。

100人に1人タダになる

クラファン開催中は、先着1000名まで支援金が100人に1人タダになるという企画を行ないました。
予約購入型クラファンではよく「最初の10名は20%引き」のような早期割引を実施しますが、インスタコードのクラファンでは割引を一切行ないませんでした。割引って商品の価値を下げるので嫌いなんですよね。それに、あとでクラファンのページを見た人が「20%引きで買えた人もいるのか」と気づくと、なんだか損した気分になってしまいませんか?
100名に1人タダになるという企画は、早期割引の代わりの企画です。100名に1人無料で提供したところで、売上のたった1%の負担なのに、インパクトはありますよね?

クラファン終了後、抽選会をYouTubeライブで行なったのですが、とても盛り上がりましたよ。
おそらくクラファン史上初の企画じゃないかと思いますが、その後マネした人はいるんでしょうか?

イベント

いくつかの展示会に出展したり体験イベントも実施しました。

NAMM SHOW は100万円弱

クラファンを開始する半年前、アメリカで毎年開催される世界最大の音楽展示会「NAMM SHOW」に出展しました。

初めての海外の展示会で、右も左も分からない状態でしたが一番小さな2,500ドルのブースを予約して、キャリーバッグに2台の試作機と、タペストリーなどの装飾類を詰め込んで一人でアメリカに行きました。

当時は、クラファンを実施するかどうかも決めていない段階だったので、「宣伝」のためではなく世界で売れるのかを確認する目的の出展でした。

その結果、世界中どこでも売れるだろうという確信が持てましたし、どんな使い方がウケるのか、どんな質問が出るのかという様々な情報を収集できました。また、多くのフィードバックを集めることが出来たので、量産化に向けた開発の課題も明確になりました。

スタッフは私と現地の日本人通訳さんだけ。会期中は郊外の100ドル以下のモーテルを拠点にして、バスで20分くらいかけて通っていました。出展費や渡航費、滞在費も含めて100万円弱に抑えて大きな収穫を得ることができました。

体験会はコスパよりも得られることが

プレゼントキャンペーンで、製品に興味のある「見込み顧客」の連絡先を集めたので、その人たちが実際の製品を試せる体験会を東京、名古屋、広島、静岡で、開催しました。
告知、場所の手配、予約の受付、現地での進行や説明まで、すべての業務をほぼ1人でやったので、費用は1万円~数万円の場所代と交通費しかかかりません。

しかし、試作機は3台しかないので大々的には開催できませんでした。また、緊急事態宣言などで外出を控える時期だったこともあり、集客には苦労し、1回のイベントで2~3名しか集まらないこともありました。

体験会で購入を決めた人は2,300名のうち100名もいませんし、売上だけを考えれば費用対効果が良いとは言えません。

しかし、実際に触った人が口を揃えて「想像以上に良い」と言われることは大きな収穫でした。「体験すれば売れる」ことが証明できたので、将来、楽器店などで店頭販売する際の参考になりました。

そして何より、製品に興味を持って下さる人たちと直接会って交流ができることは、私にとっても、ユーザーのみなさんにとっても思い出深い経験になりました。

実際に会える人は限られてしまいますが、体験に来る人が何を知りたいのか?どんな感想を持つのかという情報を収集できるので、メルマガやSNSでそれらの情報を発信して、触ることができない人たちにも疑似体験してもらえるよう努力しました。

つまり、一連の販促プロモーションは次のようなサイクルで効果的に運用できたと言えます。

1.プレゼントキャンペーン(見込み顧客を集める)
 ▼
2.体験会(見込み客を購入につなげる)
 ▼
3.発信(体験会の声を参考に購入を後押しする情報を発信する)

次回は「ここがダメだよ助成金」

今後もこのnoteでは、私がハードウェアスタートアップの起業で経験したことや、失敗しないものづくりのノウハウなどを書いていきます。

次の記事では、私がものづくりを始めて以来ずっと思っていること、自治体の助成金がダメなところに切り込みます。

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