投資家に頼らない理由 ~ CEOは社長じゃない
私は誰でも弾ける楽器インスタコードを開発し、社員0名で製造・販売を行っています。正式発売から1年弱で累計売上は1億5千万円を超えました。
ハードウェアの製造には多額な資金が必要ですから、投資家やベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けて事業資金を調達するのが一般的です。
しかし私は今まで出資を受けたことがありません。
今回はその理由についてお話します。
経営について詳しくない人にも分かるように丁寧に書くので、かなり前置きが長いですがご了承下さい。
そもそも出資って何?
出資するというのは、お金を出す代わりに「株」をもらって「株主」になることです。
その後、事業が成功して利益が出たら、株主には「配当」として利益が分配されます。
そして、会社の規模が拡大し、もっと多額の事業資金が必要になったら、誰でも株を買えるように、株式市場に株を公開(上場)します。
株を公開すると、株の価値がグンと上がるので、初期の株を持っていた投資家は大きな利益を得ることができます。
うん。とても分かりやすい w
投資家の目的は利益を得ること
たまに「見返りを一切求めない投資家から応援のために出資してもらった」…なんて都合の良い話も聞きますが、起業家はそんな甘い期待をしてはいけません。
出資してもらったからには、利益を生んで株主にお返しするのが経営者の責任だと思います。
あくまで、投資家にとって出資はお金を増やすための手段であり、投資家の目的は、配当や上場で利益を得る(利回りを上げる)ことだと理解しておくと、投資して下さった方との間に誤解が生じません。
事業が失敗したらお金は帰ってこない
ちなみに、もし事業に失敗して会社が倒産したら出資金を株主に返す必要はありません。
投資家はそのリスクを承知した上で、会社の将来性を見込んで、配当と上場の利益を期待して様々な企業に出資します。
失敗したら返さなくていいなんて、ものすごく都合の良いシステムに見えますが、注意しないといけないことがあります。
それは
会社の決定権は株主が持つ、ということです。
社長もクビになる
会社の経営に関わる重要事項は株主総会で決まります。
株主総会での議決権は、保有している株の数に比例します。
株をたくさん持っている人ほど強い決定権があります。
私は資本金1000万円でこの会社をスタートしたので1000万円分の株を持っています。
もし4000万円の出資を受けた場合、
持ち株の比率=票の数は
私1:株主4 となります。
つまり、新しい製品や経営アイディアを実行しようと思っても、株主から反対されたら何も出来ません。
それどころか、株主がダメだと判断すれば私をクビにすることもできます。
(7/6追記)出資を受ける際は株の価値を変えることができるので、創業者の持ち株比率をここまで下げる必要は無い。と多くの指摘を受けました。ちょっと極論を書きすぎてしまいました。すみません。
CEOは社長じゃない?
「CEO」を「社長」と訳す場合がありますが、私は違うと思います。
CEOは、Chief Executive Officer「最高経営責任者」の略ですが、会社の決定権を持つトップという意味ではありません。
CEOは「経営の責任」を任された人であり、会社の決定権を持つトップは株主です。
「経営の責任」とは株主から見れば、会社の利益を上げる責任であり、利益を株主に還元する責任と言えます。だから経営状況が悪くなれば責任を取って辞めさせられるのは当然のことです。
株主じゃなくてユーザーに還元したい
私は今まで色んな経営者を見てきました。株主の顔色をうかがってばかりで、社員やお客さんのことが見えなくなったり、株主とそりが合わず退陣に追い込まれたり…
出資を受けた場合、会社を成長させて、利益を残して株主に分配するのが最も重要なミッションになります。
しかし、出資を受けていなければ会社の成長よりも製品やサービスの成長に力を入れられます。
新しいコンテンツやサービスを作ったり、製品をアップデートしたり、ユーザーの皆さんのためにお金を自由に使うことができるんです。
インスタコードはクラウドファンディングで生まれた製品なので、会社に利益が出たら、ユーザーの皆さんに恩返ししたいと思っています。だからこそ、これからもできる限り出資に頼らずに経営していくつもりです。
出資を受けるのは悪いことじゃない
なんだか出資の悪口のような記事になってしまいましたが、出資を受けることは決して悪いことではありません。
なにより上場を目指すのであれば、資本金を増やして会社の価値を上げることが大事です。
ただ、私の目的を達成するには、上場や会社の規模拡大は逆にマイナスになると考えているので上場するつもりはありません。そのためにも全ての株を自分で保有するのがベストだと考えています。
(会社を大きくしてはいけない理由は後日書きます)
将来、私と価値観や目的意識を共有できて、会社を良い方向に導いてくれる投資家と出逢えば、出資をお願いすることがあるかもしれません。
ただ、株主がいないとすごく気楽なのは確かです。
周りの経営者の方からはよく「良いな~」って羨ましがられます。
次回は「クラファンに断られた話」
今後もこのnoteでは、私がハードウェアスタートアップの起業で経験したことや、失敗しないものづくりのノウハウなどを書いていきます。
次回は「クラウドファンディング会社から断られた話」を書きました。
面白いと思ったらぜひ下の「スキ」ボタンのクリックと「フォロー」をお願いします。
インスタコードにも興味を持っていただけると嬉しいです。