「契約日」は「契約成立日」ではありません
契約日は契約が成立した日ではない
保険の約款で割と最初の方に出てくる単語ですが、「契約日」がどういう意味かを理解している人は少ないのではないでしょうか?
普通の人は「契約が成立した日」と思われると思いますが、そうではありません。おそらく保険の世界以外では出てこない、保険約款に独特の用語なので、約款を読んだだけではなかなか理解のできない、難しい単語だと思います。
「契約日」は約款ではこんな感じで出てきます。
契約日=責任開始日
保険会社による保障の提供が開始・終了する期間を保険期間といいます。一般的な契約でいえば、契約期間というのでしょうか。
そして、その保険料は、保険期間を1か月単位で分割して計算します。これを保険料期間といいます。
(年払の場合は、保険期間を年単位で分割して計算します。)
その際、保険料や保険期間の計算の基準日となるのは、当然ながら保険期間の始期ですが、この保険期間の始期となる日を「契約日」といいます。このため、原則として、契約日は責任開始日(=保険会社が保障の提供を開始する日)とイコールとなります。
例えば、契約日が1/15であれば、1/15時点の年齢を基準に、各月の15日から14日までの1ヶ月間を保険料期間として毎月の保険料は計算され、保険期間の満期も1/15を起点として定められます。
保険料収納などの都合で、契約日=責任開始日の翌月1日にずらしてしまう(≠責任開始日)
しかし、保険の販売に携わっている人であれば、あれ?と思うかと思います。実際には、契約日は責任開始日とイコールではなく、責任開始日の翌月1日であることが多いのです。
現在、保険料の払い込みは、口座振替やクレカ払いなどで毎月引き去ることが多いと思います。約款上は集金扱いというのもありますが、新聞のように、保険会社が毎月集金にむかうのは大昔の話です。
そうなると、口座引去日は通常、どの契約についても毎月XX日にまとめて金融機関から引き去られて、銀行のシステムを経由して保険会社に送金されることになりますが、契約日がバラバラだと、どの契約がどの月の口座引き去りに対応するかの管理がしづらくなり、顧客からも分かりづらくなります。
また、特別勘定商品の場合、もらった保険料を運用するための特別勘定に繰り入れるタイミングが契約ごとにバラバラだと、システム的に管理が難しくなってきます。
こうした理由から、口座振替払いやクレカ払い、変額保険(特別勘定商品)などでは、
本来であれば、責任開始日(基本的に告知と第1回保険料の払込が完了した時点ですが、ここでは詳しくは触れません)を契約日として、保険期間の起点とするべきですが、
保険料の計算の基準として契約日だけを翌月1日にずらして、保険料の計算単位となる期間とカレンダー上の月がそろうようにしているのです。
結果的にですが、責任開始日から契約日までの期間は、保険料はいただいていないけど、保障は提供しているサービス期間のようなものになっています。
システム的に管理が難しいというのを理由に挙げましたが、昭和のころの管理方法を前提としているので、現代のIT技術であればわざわざ契約日をずらさなくても十分管理できるかもしれませんが、顧客的には不利益は生じないことと、わかりやすさの観点もあって、昔からの取扱が踏襲されています。
以上のとおりとなっているため、保険約款にいう契約日と、契約が成立した日(契約を締結した日)は全く別物ですので、
契約日を迎える前に契約が成立することがあれば、
契約日よりも成立が遅れて、遡って保障の提供と保険料の徴収が始まることもあります。
※契約は、保険契約締結の申込に対して、査定をした上で、会社が承諾したときに成立します。責任開始の要件である告知と第一回保険料の払込とは別なので、書類の不備があって査定が遅れたときには、契約日よりも契約の成立が遅れることになります。
責任開始日~契約日の間で支払事由に該当 ⇒原則どおり責任開始日を契約日として保険料などを再計算
責任開始日と契約日がズレる場合に、責任開始日から契約日までの間に保険金を支払うべき事由が生じたときには、原則どおり契約日を責任開始日に戻して、保険料などを再計算します。
先ほどは責任開始日~契約日の期間はサービス期間みたいになっていると述べましたが、その間何も起こらない場合に限って単に契約の開始を遅らせているだけ(契約期間の開始日を先日付にして契約を成立させる、契約の成立が間に合わなかったときでもその日付は変えない)という考え方で説明されることもありますが、いずれにしても結果は変わりません。
誕生日前の場合には、契約日を責任開始日の翌月1日とはせず、責任開始日と同じままにできることも
口座振替払いや特別勘定商品などの場合には、契約日を責任開始日の翌月1日にずらすこととなっていると説明しましたが、申込が誕生日間際の場合には、例外的に契約申込みの際に申出をすれば、契約日を責任開始日と同じままにすることもできる場合があります。
どういうことかというと、
例えば、4月20日に26歳の誕生日を控えた人が、4月10日に申込・告知と第1回保険料の払込を完了(=責任開始日)したとして、契約日がその翌月1日である5月1日になるとすると、
保険料を計算する基準となる年齢は26歳となってしまい、1歳分保険料が上がってしまいます。
実際の募集・案内は3月の下旬に行なわれることが考えられますが、申込が4月に持ち越した場合には、募集・案内したときの保険料よりも実際に申し込んだときの保険料が上がってしまうことになります。
こうした不都合を回避するために、申込の際に申出をすれば、口座振替払いや特別勘定商品などの場合であっても、契約日を責任開始日と同じにすることで、サービス期間的な扱いを受けられなくなる代わりに、保険料は当初案内したままとできるようにする取扱を設けている会社が多くあります。
約款ではこのような規定が設けられていることがあります。始期指定特則と呼ぶこともあるようです。