[外国企業決算を読む(4)] 3M Company
会社概要
Minesota Mining and Manufacturing の頭文字をとって、3M。その名の示すとおり、ミネソタ州に本社を構えています。
化学の知識を使ってさまざまな製品を発明してきた会社。
有名な発明品は、付箋(ポストイット)やセロハンテープ。
ダウ工業平均30社の1つにも選ばれている、米国を代表する超優良企業であり、64年間途切れることなく配当を増額させてきた配当貴族銘柄の1つとしても有名。ダウ工業平均に採用されたのは1976年なので、かなりの古株。
事業領域は広く、何を作っている会社か一言で言うのは難しいですが、2023年時点では4つの事業セグメントに分かれていて、以下のような製品・サービスを提供しています。
私の印象では、日常生活やオフィスで使うちょっとした道具や小物を作っていて、それを単品でも売ってくれるし、それらを組み合わせてサービスやソリューションにして事業向けにも展開している、といったところ。目立たないけどすぐそこにある、という感じ。私の好みの会社です💖
Safety & Industrial
Abrasives(研磨剤)
Automotive Aftermarket
Closure and Masking Systems
closureは閉じる、masking は見えなくする、という意味なので、たとえば粘着テープを使って何かを箱の中に梱包したりとか…
Electrical Markets
Industrial Adhesives and Tapes(産業向け接着剤及びテープ)
Personal Safety
Roofing Granules(屋根に使う粒状材料)
Transportation & Electronics
Advanced Materials(特殊材料)
Automotive and Aerospace(自動車および航空宇宙)
Commercial Solutions(業務用ソリューション)
清掃用品、包装資材、看板、フィルム、etc…
Electronics
Transportation Safety(交通安全)
Health Care
Food Safety(食品安全)
Health Information Systems(健康情報システム)
Medical Solutions(医療用ソリューション)
Oral Care(口腔ケア)
Separation and Purification Sciences(分離及び精製)
Consumer
一般消費者向けの製品販売。以下のページでどんな製品があるか確認できます(日本語)。DIY用品など。
https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/consumer-jp/
Construction and Home Improvement Markets
Home, Health and Auto Care
Stationery and Office(オフィス、事務用品)
3M自身による自己紹介
科学の力を様々な形で組み合わせて日々の暮らしを改善する会社。
3M は科学の力でより良い世界を創れると信じています。世界各地の3Mメンバーの、能力、アイデア、科学の力で何ができるか考える想像力を開放し、彼らにしかできないチャレンジで顧客、社会、地球に貢献します。
財務情報
4半期決算リリースはすべて以下のページから辿れます。
筆者流の決算の読み方ースリーエムの場合ー
まずはPresentationを見るのがオススメです。
前半で定性的な経営状況の説明や売上、利益、キャッシュフローなど主な決算数値の報告があり、後半のAPPENDIXに損益計算書、部門別の売上と利益が載っていますので、必要な情報はだいたい揃います。
スリーエムという会社は、ヘルスケア部門のスピンオフを計画していたり、フッ素化合物による水質汚染や軍人向けの耳栓など訴訟案件をかかえていたり、現状、良くも悪くも話題に事欠かない状況です。
Presentationに記載してある定性的な情報は説明の確認は、決算数値の確認よりも重要と言っても過言ではありません。決算は景気の影響を受けやすいのは確かですがなにしろ発明家企業なので製品競争力は強くあまり心配しなくてもいいかと思っています。
まずは Presentationで情報をそろえ、足りない情報(バランスシートなど詳しい財務状況)がある場合は Financial Statement Information を見ましょう。
最近の業績
直近2年間の業績は以下のグラフに示す通りです。
セグメント別売上高の推移
縦軸の単位は100万ドルです。つまり3カ月で80億ドル(1ドル=150円換算で1.2兆円)くらいを売り上げている会社です。事業領域が非常に広い会社なので同業というのは特定しにくいですが、製造業で売上規模が同じくらいの日本企業をリストアップするなら、JFE(鉄鋼、5.2兆円)、三菱ケミカル(化学、4.6兆円)、三菱電機(電気、5.0兆円)あたりです。
残念なことにコロナ後の売上は伸び悩み気味です。またヘルスケア部門のスピンオフを予定しているので、スピンオフ完了後は下のグラフの緑色の部分の売上がなくなり、年間売上240億ドル(3.6兆円)くらいになりそうです。
セグメント別の調整後営業利益率の推移
自社で工場を持って製品を実際に量産している会社としては、かなり高い利益率を誇ります。
生活必需品でない一般消費者向けの製品や、自動車や電機などの製造業向けの製品など、景気の影響を受けやすい製品を多数扱っているため売上や利益は変動しやすく、直近では23年1~3月で利益率が落ち込んでいます。ただ高いところから5%以上落ちても利益率15%以上と、かなり強いです。
前述のとおり、3M Company は現在フッ素化合物による水質汚染、軍人向けの耳栓など高額の訴訟案件を抱えているため、会計基準準拠の利益率は現状かなり厳しい数字になっています。もっともそんなモノに負ける会社ではないと私は思いますが。
具体例
では直近の決算を読んでみましょう。23年度Q3の決算を読んだまとめを、別の記事に用意しています。