スリーエムから飛び出したSolventumの24年3Q決算、予想よりはいいけれど。
2024年11月7日(木)のニューヨーク市場CLOSE後に、Solventum Corporation の24年第3四半期決算が発表されました。
4月1日に3M Company からスピンオフして半年、3M の傘下にあった時の方が営業利益率は良かったので、投資家目線ではなんで飛び出しちゃったんだろうと思うんですが、ま、中で働いている人たちにはいろいろあるのでしょう。オレは社長になるんだ!とか、あんなやつといっしょに仕事ができるか!とか、なんで業績悪い〇〇と一緒くたに評価された株価で報酬もらわなきゃいけないんだ!みたいな?
Financial Results
売上高と営業利益率
2022年からの3カ月ごとの売上高と営業利益率の推移は以下のグラフに示すとおりです。左縦軸の単位は100万ドル。3カ月の売上高は、21億ドル(1ドル=150円換算で3,150億円)前後で安定推移していますが、営業利益率はスピンオフした2024年Q2から明確に低下しています。Q3はQ2よりちょっとだけマシになりましたけど、まだまだ昨年のレベルよりはるかに下。
セグメント別売上高
第2四半期、第3四半期のセグメント別の売上高、営業利益率を棒グラフで示すと以下のようになりました。
まず売上高。景気の影響を受けにくいヘルスケア領域の事業だけあって、売上の安定度は抜群。売上の半分以上を Medsurg(医学外科)部門(グラフの赤色)が稼ぎ出しています。傷の治療など医療行為に使う消耗品や手術器具などを製造、販売している部門です。
営業利益の稼ぎ頭も Medsurg部門。でも利益率の高さは黄緑色の棒グラフで示したHealth Information System部門(IT・情報部門)がトップ。IT・情報は製造コストが極めて低い(でも開発費は高い)ので、この会社に限らずどこでも利益率が高くなるのがふつうです。
そして残念なのが藍色で示した大きなマイナス。コーポレート部門。Q3は1億と6,500万ドル。このうち amortizationが8,800万ドルありますが、残りの7,700万ドルがスピンオフ関連費用です。スピンオフしたがゆえに余計な費用がかかるようになっちゃった。これがスピンオフ後に営業利益率が急低下した理由です。さてさて、この費用、どのくらいまで低下させられるのか・・・まだしばらくは注意深く見守る必要がありそうです。
2024年通期見通し
2024年通期の業績予想は上方修正されました。
Organic sales growth(基調的な売上成長)は
0.0%~+1.0%+0.5%~+1.0%。
調整後一株利益は
$6.3~$6.5$6.5~$6.65。
フリーキャッシュフローは
7億ドル~8億ドル7.5億ドル~8.5億ドル。
下方修正されなくてよかったね、とは思いますが、期初の会社予想を超えてくることはよくあることだし、この程度ではそんなに狂喜乱舞するほどのことでもありません。早く昨年以前並みの利益率を回復してほしい。
Balance sheet
2024年9月30日時点でのバランスシートの主な項目は、
総資産147.45億ドル
株主資本31.92億ドル(自己資本比率21.65%)
流動資産33.54億ドル、流動負債29.04億ドル(流動比率115.5%)
のれん65.92億ドル、無形資産26.51億ドル(資産の6割が目に見えない)
となっており、6月末からほとんど変化していません。
一方で23年12月末のバランスシートと比べるとエグイ変化があります。23年3月末には Solventum の純資産に120億ドルもの Net parent investment(親会社たる 3M Company が Solventum・・・当時の3M のヘルスケア事業部・・・に投資した資金)があったのですが、24年9月末時点ではこれがゼロになっています。一方で資本金がゼロから37.44億ドルに増えているので、3M Company は Solventum の独立にあたりその差額である80億ドルを回収したことになります。Solventum の総資産量はスピンオフ前後でほとんど変化しておらず、3M に回収された資本80億ドルの代わりに有利子負債(特に長期負債)が激増しています。おとーさん(3M Company)、むすこ(Solventum)に優しくない😭😭😭。どっちかって言うと、鬼🙀🙀🙀。
おとーさんに突き放されたむすこは、なかなか経済的に苦しいようで、当面せっせと負債を減らすことに注力する、配当もしないと宣言しています。
参考
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