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私の失敗投資(5)シグネチャーバンク

明らかに失敗だった投資を記録して反省材料にする、そんな連載の第5回目です。
他の失敗も以下の記事から辿れます。


シグネチャーバンク

5つ目の失敗事例はシグネチャーバンク。

2023年3月、米国のシリコンバレーバンクが破綻しました。そのわずか3日後に事業停止(事実上の経営破綻)に至った、米国ニューヨーク州の銀行です。

Reutersに以下の記事がありました。シリコンバレーバンクと同様、リスク管理ができていなかった、と。

米連邦預金保険公社(FDIC)は28日、先月経営破綻したシグネチャー銀行の監督・規制を巡る報告書を発表し、破綻の要因はリスク管理をほとんど考慮しない「不十分な経営」と「急速で無制限な事業拡大」の追求が原因だったと指摘した。

63ページに及ぶ報告書でFDICは、経営陣と取締役会が「自身の規模や複雑さ、リスクプロファイルに適した適切なリスク管理の実践と制御を開発・維持」することなく、事業拡大と預金獲得を追求したと指摘。シリコンバレー銀(SVB)と同様、審査官からはシグネチャー銀もコーポレートガバナンスが脆弱で、無保険預金への依存など監督当局が指摘した弱点に経営陣が対処していなかったとの報告がなされていたという。

さらにFDICは、銀行システムの安全性と健全性を維持するという使命に対し、スタッフの陣容が不十分であったことを認めた。シグネチャー銀の監督スタッフには頻繁に欠員が出て入れ替わりが激しく、同銀の拠点があるニューヨーク市の生活費高騰や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の影響により人材確保が困難だったとした。

2023年4月29日の Reuters の記事

リスク管理の不備が要因なのか、シグネチャーバンクは暗号資産関連の顧客預金が預金全体の2割以上ありました。2022年の暗号資産価格の急落と交換業者FTXの経営破綻の後から暗号資産関連顧客の預金が流出しており、特にシリコンバレーバンクの破綻後には預金流出が一気に加速して破綻に至りました。


投資を決断した理由

分散投資の一環でした。
銀行だし安全でしょう、ニューヨーク州という米国でも特に経済力のある州(※)で事業展開しているから収益機会も豊富でしょう、と考えました。


※アメリカ合衆国各州のGDPランキングでは、1位のカリフォルニア州、2位のテキサス州に次いで第3位。約1.8兆ドル(1ドル=150円換算で270兆円)。


失敗の要因

碌に事業内容や顧客層を調査することなく、銀行だし安全でしょうと思考停止になってしまったのがよくなかったです。

なまじ、日本のメガバンク3行への投資がうまくいっている(含み益は増え続けるし、連続増配しているので配当も増え続けている)ので、失敗するイメージが湧かなかったのですが、銀行というのは昔からけっこうよく潰れている😅。わりと危ない事業形態なのです。


銀行が破綻する要因は、だいたい預金流出です。
「あの銀行、アブないらしいわよ」というウワサがまことしやかに広がって、みんなが一斉に預金を引き出すとだいたい潰れます。この際、ウワサが事実かウソかはあまり関係がない。ウソであっても預金が流出して資金が底をつけば破綻します。シリコンバレーバンクの破綻劇を見てもわかるように、取り付け騒ぎが起こったら破綻するまで数日もかかりません。

一方、事業会社というのは経営が傾き始めて数日で破綻することはあまりありません。万策尽きて破綻に至るまで年単位の時間がかかることさえあります。投資家にとっては逃げる時間があるわけですね。一方で、取り付け騒ぎが起こった銀行から投資を引き上げるのは難しいでしょう。特に今はインターネットバンキングでいつでもすぐに預金を引き出せる時代です。株式マーケットや債券市場が開く朝まで待っているうちに銀行つぶれるかもしれません。


というわけで、銀行にとって預金流出というのは非常に恐ろしいモノだと思いますが、シリコンバレーバンク、シグネチャーバンクどちらも破綻するだいぶ前から預金流出が始まっていました。シリコンバレーバンクの場合は資金調達をすると発表したことが引き金になってそれが加速して一気に破綻に至り、シグネチャーバンクはシリコンバレーバンクの破綻が引き金になってやっぱり預金流出が加速して事業停止に追い込まれました。

なぜ預金が流出していたのか?
それはどちらの銀行も顧客層が大きく偏っていたためです。
シリコンバレーバンクの場合は、顧客層がシリコンバレーのスタートアップに、シグネチャーバンクの場合は暗号資産関連事業者に偏っていました。特定の業界の顧客が多過ぎると、その業界がピンチになった時に預金の引き出しが加速する可能性があります。


カナダのトルドー首相が

いまほど変化のペースが速い時代は過去になかった。だが今後、いまほど変化が遅い時代も二度と来ないだろう。

と言っていましたが、この2行の銀行破綻劇も昔に比べるとものすごく事態の進展が高速でした。
100年前の銀行取り付け騒ぎなら、店頭に預金を引き出す人の行列ができて順番に処理するので多少は時間がかかりますが、現代ではインターネットバンキングで済んでしまいます。いくら銀行の背後に最後の貸し手たる中央銀行がいて、必要な資金供給する体制があったとしても、事態が起きてから動き出したのではもう間に合わないでしょう。


対策

銀行には投資しない、というのも1つの案ではありますが、配当利回りは魅力的で、特に配当狙いで投資をしている場合には、なかなかその選択は難しいと思います。私も日本のメガバンク3行全部に投資していますし。

なので銀行に投資するなら、もっとも安全性の高い銀行に限定する、というのが現実的な落としどころでしょう。具体的には「Too big to fail(大きすぎて潰せない)」と言われるような大銀行。もし破綻したら金融システムが麻痺してしまうので中央銀行があらゆる手段を使って助けようとするでしょうし、そもそも体力があります。

具体的には、Top of the top と呼ばれる銀行たち。
日本だったら三菱UFJ。
アメリカだったらJPモルガン。
欧州だったらHSBC。


補遺

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私の失敗投資PORTALの見出し画像用に作った、失敗をイメージする絵の子ぎつねが気に入ってしまって、また子ぎつねの絵を作りました。木の葉をお金に変えようとしています。

銀行破綻という本記事のテーマから、「社会的ステータスは高そうだしお金たくさん持ってそうに見えた銀行というものは、気づいたら大してお金持ってなかった。」→「術が解けたら、お金だと思っていたものが実は全部幻(木の葉)だった。」という連想。

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