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未来の食体験ってなんだろう?~短編小説を食感で味わうショートショートのショートケーキ~
2024年11月20日に「ショートショートのショートケーキ」という短編小説(ショートショート)を、3Dフードプリントで出力して味わうイベントを企画・開催しました。
「短編小説を3Dフードプリンターで出力して味わう」という体験を通して、楽しみながら「未来の食」について考え、新しいインスピレーションが得られる機会にしたいと思ったのがきっかけです。
今回の体験会の企画をリードしたインスピラボ研究員の小針さんに、企画の経緯を詳しく聞いてみました。
小針: 2024年6月に、知財ハンター協会のつながりで出会った高次素材設計技術研究舎 Melt.さんらがおこなう「3D構造パティスリー」を体験しました。
その際に、「言葉を食感で味わうのっておもしろいな」「こうした体験はまだ多くなく、未来の食体験を考えるきっかけになりそうだな」と思い、「もっといろんな人に体験してもらいたい!」と考えました。
インスピラボでは未来洞察の一環として、未来のショートショートを描く活動をしています。この活動の可能性も広げつつ、ショートショートのストーリーを3Dプリンターで食として体験できるようにすることで、未来の食体験を探ってみたいと考え、企画しました。
\ 「3D構造パティスリー」の詳細はこちらからどうぞ /
この記事では、本イベントの体験と、参加者および私たち運営メンバーがとらえた気づきをご紹介します。
ショートショートを食感で味わうという新体験
イベント当日は、体験者9名・見学者17名の総勢26名が来場しました。
体験者には、まず自分書いたショートショートのタイトル、もしくはインスピラボで準備したショートショートの中から「これを味わってみたい!」と思うタイトルを選んでもらいました。
今回は、「空色シアター」、「永遠の選択カタログ」、「焦燥と希望の交差点」、「五感で楽しむ未来の櫻桜絵巻」、「ライムグリーンの稲妻」、「潮風の約束」、「推しが社内評価AIに高評価されていた件」、「センスビジョン」、「今日は出社してよかった」の全9タイトルを味わいました。
このショートショートのタイトルがどんな風に3Dフードプリンターに出力されるのか、気になりますよね?!
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これらのタイトルをもとに、3Dフードプリンターが食感をつくり出します。
タイトルをコンピューターに入力し、そのタイトルから推測されるオノマトペに変換を行い「ギザギザ」・「パリパリ」・「ポリポリ」・「サクサク」・「モチモチ」の5つのパラメーターに振り分け食感の成分を判定します。パラメーターの組み合わせで「モシャモシャ」という感覚に近ければ、フードプリンターによってモシャモシャをイメージした形状(食感)が形として出力されるというしくみです。
たとえば、ふわふわとしたタイトルなら、そのイメージに合った軽やかな食感が生まれるかもしれませんし、ちょっと硬い感じのタイトルなら、カリッとした食感になるかもしれません。
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3Dフードプリンターで出力された形をショートケーキの上に乗せ、ショートショートを朗読しながら味わいました。(出力された形はじゃがいもペーストで、できています)
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\ 当日の様子は動画でもご覧いただけます /
「物語を味わうって、未来を感じる体験」
イベント終了後、参加者のみなさんから感想をもらい、また運営メンバーで振り返りをしました。
参加者のみなさんからの感想はこちら。
「新しい体験で楽しかった」といった旨のコメントが多く寄せられました。
「食事をする時に食感って口にするまであまり意識してないところだったので、食感ありきで食べ物を見るという新しい体験ができました。」
「視覚以外でデータを感じる方法として、可聴化・可触化があったが、今回新たに「可食化」という発見がありました。」
「食べるという体験が未来を感じる体験としてとても新鮮+だけど自分ごととして実感できてとてもよかったです。食べながら自然に「こんな調理するともっと食感再現できるかも!」という会話が自然に生まれていたのも印象的でした。」
「詩や歌は味わいによくたとえられますが、本当に食べてしまうのは初めての体験でした!イマジネーションを食べることができるなら、香りや光や…五感への変換が無限にできますよね。可能性がたくさん詰まった体験が、小さなケーキってところがとても素敵な演出でした」
また、運営メンバーの振り返りで出た、今後の可能性についてはこちら。
イベントを開催したからこそ気づきが多く出て、どんどん妄想が膨らんでいきます…(笑)。
「タイトルではなく名前を入れて食感を出力するのもいいかもしれない。このチームの食感はこれですみたいなアイスブレイクになりそう」
「意味付けによって栄養を倍増させたり、栄養以外の食のあり方をもっと探究できるかも」
「地域密着で、地域の土地の食べ物とのコラボレーションもおもしろそう」
「映画などのエンターテイメントと連動した食を3Dフードプリンタで出すことで、もっと映画を楽しむ機会になるかも」
食感デザインの可能性はもっと広がる!
今回のイベントを通して、食体験の高度化や食体験とテクノロジーの融合、フードロスなどの食体験を通じた社会課題解決、食体験とエンターテイメントの融合など様々な「食の未来」の可能性を見出すことができました。
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このイベントをきっかけに、食感デザインはもっと多様な分野で展開することができるのではないかと感じています。
例えば、教育現場で物語をまずは食感から理解しようとしてみたり、今食べたいものを入力して出てきた食感を出力して食べることができたら、医療や福祉の分野で、固いものが食べられないけど自由に食事したいという方のリハビリやケアの一環として活用したりすることができるかもしれません。
今後も多くの人々とともに食感デザインの可能性を、楽しみながら考えていきたいです。
(執筆:河内月夜)