「きっかけがあれば、好奇心はドライブする」インスピラボ研究員 前島 朱里
インスピラボは、富士通のデザインセンターでサービスデザインに携わるデザイナーたちが、未来を発想するための「インスピレーション」を探索するために始動したプロジェクトです。
「#好奇心をドライブしよう」をコンセプトに、発想のきっかけとなる情報や体験の機会を提供し(インプット)、未来に向けた提案を作りだす力(アウトプット)につないでいます。
この記事では、インスピラボ研究員の前島 朱里(まえじま あかり)さんを紹介します。
リサーチが新しいものを生み出すきっかけになる
——— 前島さんはインスピラボの発起人の一人とお聞きしました。どのようにしてインスピラボを立ち上げていったのでしょうか?
前島: 私は新規事業創出の案件に入ることが多いのですが、「新しいことを生み出すには、リサーチがとても重要」だと感じていました。ちょっと先の未来を考えるとき、机上だけでは限界がありますが、生活者のリサーチ結果や先進的な事例のインプットがあると発想が豊かになることが多くて。
そんな時、生活者の価値観をまとめた「価値観レポート」を発行している宮入(みやいり)さんや三柴(みしば)さんと出会い、本レポートを案件で活用した経験から「リサーチを本格的にやっていきたい」と思うようになりました。そこで、二人と共にインスピラボを立ち上げました。
島と人との出会いからインスピツアーを企画
——— そんな前島さんの「インスピラボでの想い出深い活動」ってどのようなものでしょうか?
前島: いくつもあるのですが、やっぱりインスピツアーですね。地域課題を自ら体験し発見するツアーです。
インスピツアーを作ったきっかけは、その一年前行ったチームでのワーケーションでした。この時、自分の子どもを連れて行ったんです。
——— お子さんと一緒にワーケーション!
前島: この頃ワーケーションはトレンドとして上がっていましたが、「子どもがいたらワーケーションってやりにくいよね」という課題を私自身が持っていて。じゃあやってみるかと(笑)
「実際に子どもを連れてワーケーションに行ったらどんな発見があるんだろう」「仕事仲間と拡張家族を体験すると何が起きるのだろう」「実際にやってみて気づいたことを、働き方や、子どもの生き方に活かしていけるといいな」と。
そこでの気づきがとても多くて、noteにも書いています。
——— そのワーケーションから、どのようにインスピツアーへと発展したのでしょうか?
前島: ワーケーションでは広島の江田島市に行ったのですが、ここでワークスペースサービスなどを運営しているフウドの後藤さんと出会いました。
ここで子どもを温かく迎え入れてもらって、「すごくいいスペースだな」って思ったんですよね。この時に後藤さんが「江田島市って無人島があるんだけど、資産として活かされてない。無人島を使って、なんか面白いことやりたいと思ってるんだよね」という話をしてくれました。
この話を聞いた後、一旦東京に帰ったんですが、何だかずっと引っかかって。
その後、後藤さんに連絡とって「江田島の企画、何か一緒にやりませんか?」と話をしました。後藤さんからは「ぜひぜひやりましょう」と言ってもらって。
——— 無人島を資産として活かす。どんなところから始めたのでしょうか?
前島: 企画はスタートしたものの、「何からやったらいいんだろうね?」といった感じでした(笑)。
ただ、自分たち自身が江田島に行ったことですごくいろんなことに気づけたし、それを他の人にも体感してもらいたいなという気持ちはありました。
また、その頃富士通ではデザイン思考教育が盛り上がっていて。
「机上の学びでは限界があるよね」「実践しないと得るものって少ないね」という声も聞こえていました。
だったら、インスピツアーというプログラムを作り、実際に現地に行って、自分で体感して、そこから課題を見つけて解決策を考える。
そういった一連の実践できる場を作ったらいいんじゃないか、それってデザイン思考の実践の場になりうるんじゃないかと思う中、インスピツアーが生まれました。
——— IT企業でツアーを作るのって大変そうですが(笑)
前島: そうですね(笑)そもそもデザイン部門でツアーを作ること自体が初めてでしたし、「何やってんの?」と言われるし(笑)。「どうやって説得しようか」と悩むことも多かったです。参加者も集まるのかどうか、めちゃめちゃ不安でしたしね。
でも実際には、モチベーションの高いメンバーがたくさん集まってくれました。
最後の発表で一人ひとりアイデアを話してもらうのですが、心がとても揺さぶられる素晴らしいものばかりでした。
——— 最後の発表のアイデアは、どうして心が揺さぶられたんだと思いますか?
前島: 参加者のみなさん自身が本当に「これをどうにかしたい」と思ってるのがすごくよく伝わってきたんです。それはみなさんが現地に行き、さまざまなことを体感してるからだと思っています。体感しているから、そこでの気づきとか、想いの伝わり具合が違うな、と。
あと、デザイン思考って、フレームとか型を作って「これを使ってください」「この流れでやってください」ということが多いですよね。
でもインスピツアーでは、参加者の様子とか、周りの環境を見ながら、その場でプログラムをめちゃくちゃ変えました。「型を決めてやらない方がいいね」、「テーマと要素だけ出して、あとは自由にしてくださいって言った方がいいね」、「私たちインスピラボメンバーは壁打ち相手ぐらいがいいね」とか。
——— 参加者の力を信じて、委ねた感じでしょうか。
前島: はい。結構きついスケジュールだったと思いますが、発表アイデアの仕上がりが素晴らしくて。やり過ぎない・渡し過ぎない・言い過ぎない状況で、こういったアウトプットが出てくるんだな、と。
ここで、「自分で気づく機会・好奇心を刺激する機会さえ作れれば、その後は自走するんだな。きっかけがあれば、好奇心ってドライブするんだな」とインスピツアー作成者の私たち自身の気づきにもなりました。
体感するからわかること・伝わることを大切に
——— いろんな実践を重ねられてきた前島さんですが、これからインスピラボでやってみたいことはどんなことですか?
前島:自ら体験することがすごく大事だと思っています。中でも、旅をするとその土地における価値観に触れたり、考えがすごく広がっていく感触があるので、「旅するリサーチ」はやりたいなと思っています。
また、今インスピラボメンバーは東京近辺に住んでいますが、全国を回りながらとか、海外にもインスピラボメンバーがいる状況になるといいな、と。
日本の東京近辺だけじゃなく、いろんな視点をもってリサーチし、その内容を発信できると、アイデアの発想も広がるだろうなと思っています。
——— 土地以外でも、「こんな視点でリサーチしたい」といった観点はありますか?
前島: 何か新規事業を考えるときに「会社にいない・属さない人」がターゲットになることもあると思うんですよね。例えば、高齢者の方とか、仕事を辞めた方とか。
以前そうした方にリサーチさせてもらったとき、自分の知らない時代を先に歩まれていて、すごく面白かったんです。
だから「会社以外からのインプットを増やす」ことも考えていきたいなと思っています。それがこれからの未来のサービスを考えていく上で、すごく重要になってくると思うので。人の幸せってなんだろうとか、死とか、人が生きる上での永遠のテーマでもありますし。
——— 最後に、インスピラボをこんな風にしたい、こんな方と出会いたいといったメッセージがあればお願いします
前島:価値観レポートだったり、インスピツアーのような機会によって、より良いサービスや新しい考えが生まれたりするといいなと思っています。
私たちの活動を面白いな、一緒にやってみたいなと思った方をもっと巻き込んで、新しい未来を描いていきたいですね。
(インタビュー・執筆:小針美紀)
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