マッドジャーマンズ - 読書日記
マッドジャーマンズ 読了。
第二次世界大戦後、ベルリンが東西に分割されていたその昔、アフリカ東部の国モザンビークから労働移民として東ドイツにやってきた、若者たちの物語。モザンビークに移民として幼少期に移り住んだあるドイツ人が、現地の周囲の大人たちにドイツとのつながりを見つけ、彼らの物語を集めていき、最終的に3人の物語としてまとめあげたもの。
3人目の女性の物語は興味深い。
権力層に男性しかいない当時のモザンビーク。彼女は出国にあたり、「女性が太古の昔から行ってきた方法で」国を出ることを許された。女性として何とも胸が痛い。男への憎しみが募るが、これはもう女性が男性の地位を奪い取るしかないのだ。なんて考えてしまうほどに、憎い。男性たちは英雄として出国している。しかし、最終的にドイツに残り、使い捨ての労働移民の立場を自ら乗り越え、医者としてドイツで活躍しているのは、彼女だけなのだ。残りの男2人は何とも情けない経緯で帰国している。一人は、この女性を妊娠させ、中絶したことを理由に怒って最終的に帰国。(女性は妊娠したら帰国させられる。よって自分の人生を生きられなくなる。)もう一人の男性はドイツ社会に溶け込まず、女遊びを繰り返し、自国では得られない文化や自由を謳歌するものの、労働の義務を果たさず、何もなさないまま東西ベルリン崩壊を機に帰国。天引きされていたモザンビーク政府に預けていた年金も返ってこない。
彼女の成功に女性だからというのは関係ない。妊娠をきっかけに女性に強要される社会的な立ち位置を除いては。ひたむきに自分の人生に向き合って、一歩一歩駒を進めてきた彼女の努力が周囲を説得したのだろうと思う。
もう一つ、移民の増加による問題に直面している昨今、2人目の遊び人の男性のドイツ社会に溶け込もうとしない姿勢に、現地ドイツ人が向けた否定的な反応に、同情を禁じ得ない。やはりその土地に長く住み、その土地をその土地たらしめてきたのは現地の人間だ。経済は大切だが、文化など目に見えないものが作るその土地らしさは、歴史の中で培われてきたもの。やはり、現地の人に歩み寄り溶け込む努力は必須なのだ。(ヨーロッパは地続きなので、国境線が変わることは頻繁にあったと思うし、民族間の交わりもあると思うが。)
今の日本の移民受け入れを、一つ別の視点で見られるいい機会になるかもしれない。