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同性に初恋をした話

中学1年生のとき。同じクラスの同級生、同性、女の子に恋をした。活発で、いつもにこにこしていて、自分より少しだけ身長が高くて、肩まで伸びた髪をひとつに束ねていて、ほっぺが桃色で、すれ違うときに優しい香りがして、美術部で、あまり話す機会はないけれど、いつからか目で追うようになった。初恋だった。

なぜ好きになったのだろうか。今でも不思議に思う。たまに一緒に下校したり、教室移動をしたり、1週間の中で会話をする回数なんて片手で数えられる程度で、クラスメイト以上友達未満みたいな関係なのに、他にもそんな距離感の人たちはたくさんいたのに、彼女は特別だった。

中学1年生のときは『同性愛』『レズビアン』という言葉、存在をまだ知らなかった。だから、この頃はまだ自分が同性愛者だと思っていなかった。彼女への恋心に違和感を感じていなかった。何も気にせず、純粋に好きでいられた。

中学2年生になって、クラス替えがあって、彼女とクラスが別々になった。会う機会が、話す機会が減った。それでも、廊下で姿を見かけるだけで幸せだと感じられた。

ある日、クラスで誰かがふざけながら「ホモ」「レズ」という言葉を発した。意味がわからず、なんとなく気になって、辞書で調べた。この時代の中学生は、まだ携帯電話は持っていなかったし、家にパソコンが置いてある家庭はほんの一部(ワープロはあった)、子どもが何かを調べたいときは学校の図書室へ行くしかなかった。

そして、図書室で調べて、自分はレズビアンだと知った。恋愛対象が同性、女性の同性愛者、レズビアン。当時、それは"病気"や"異常なこと"だというのが一般常識だった。偏見しかなかった。差別されるのが当たり前。自分は異常な人間で、普通じゃなくて、彼女への片想いも異常なこと。好きな気持ちは変わらなかったけれど、悲しくて、悲しくて、苦しくて、消えてしまいたかった。自分はなぜこんな形で生まれてしまったのだろうと一日中悩んだ。毎日、一日中悩んだ。そして、自分のことが嫌いになった。他人との関わりも意図的に減らした。同性愛者だとバレたくない。バレないためには自分を偽るしかない。偽っても、ボロが出てしまう可能性があるから、極力人と関わることはやめよう。そう思って、そうして、中学生活の後半はほとんどをひとりで過ごした。

片想いは中学校を卒業するまで続いた。告白することはなかった。卒業式の日に一緒に写真を撮ってもらって、それからもう会うことはなかった。進学先の高校は同じではないし、高校の位置も遠く離れていたから偶然会うなんてことは絶対にない。現像された写真は、自分の顔だけマジックペンで黒く塗りつぶした。

社会人になってから、同級生の間でFacebookが流行って、自分も登録をした。小学校、中学校、高校、専門学校のクラスメイトとたくさん繋がった。懐かしいな、みんな大人になったな、と思いながら投稿を読んでいた。ある日、「知り合いかも」通知で、初恋の人のアカウントが出てきた。息を呑んだ。アカウントをクリックすると、彼女は結婚していて、赤ちゃんを産んでいた。そうだよな、と思って、思った。友達追加ボタンをクリックしたら、向こうからも友達追加のお知らせがあった。特にメッセージを送ったりはしていない。それでこの話は終わり。初恋は終わった。彼女の姿は中学生のままで止まっている。

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