第4回「町内会費200円のゆくえ」
毎月、町内会費を支払っている。
家賃と共益費と町内会費を支払う契約でこのアパートへ引っ越してきたからだ。
ちなみに、これまで住んできた地区では「町内会費を支払ってください」と言われたことはない、はず。
町内会費の金額は200円。
不動産屋で説明を受けたとき「これくらいならまあいいか」と思ったし、今でも「200円ならまあいいか」と思いながら、毎月管理会社へお金を振り込んでいる。
このコラムを読んでくれた人へ、町内会費に限らず「まあいいか」と思ってしまったお金は簡単に支払ってはいけません。
「本当に支払わなければいけないのか?」と考え、インターネットで検索して調べるとか友人知人に相談する、という工程を挟みましょう。
相談できる友人知人がいなければ、知人枠にあおさんをねじ込んでください。お役に立ってみせます。
説得力がなさすぎる。
何かの手数料みたいな感覚で町内会費を支払っていたので、この200円が何に使われているのか、なんてことには全く興味がなかった。
だってぼんやりと予想できる。
超超超ローカルなエリアでの夏祭りとか、お茶会や囲碁・将棋サロンとか、多分そういうものに使われているのだろう。
そうして、毎月200円を支払い続けて、何年も経過した。
3月、仕事の関係でとあるビルへ立ち寄った。
ビルの1階には掲示板があり、管理会社からのお知らせが何枚も掲示されていた。
急いでいなかったため、なんとなくそのお知らせ文書を眺めていると、掲示物の中に『町だより』という紙を見つけた。
『区だより』は知っている。
毎月、月初あたりに郵便受けに入っている新聞みたいな形式の広報誌だ。
暇潰しで内容に目を通すことがある。
思い返してみると、住んでいる町の『町だより』なんて一度も見たことがないかもしれない。
多分、どこかの掲示板に貼り出されているのだろうけれど、それがどこにあるのか知らない。
ビルの掲示板に貼られていた『町だより』はほぼカレンダーで、何日にどんな催しがあるか一目で理解できた。
そして、衝撃の事実も知った。
《春休み子どもシアター『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021』上映会(お菓子付)(予約制)(定員20名)》
この行事に目が釘付けだった。
映画ドラえもん!?公民館でのび太の宇宙小戦争2021が観られるの!?お菓子付きで!?無料で!?選ばれし20名の子どもが!?
観たい。『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021』が観たい。
DVDレンタルではなく、配信サービスでもなく、公民館で映画ドラえもんを観たい。
だって公民館で観るほうがわくわくするに決まってる。お菓子も付いてるし。どんなお菓子が配られるのだろう。駄菓子とかかな。
は〜、そうか、自分が支払っている町内会費200円のゆくえのひとつが映画ドラえもんか。へ〜、知らなかった。
夏休み子どもシアターは何が上映されるのだろう。
ん?ちょっと待てよ。子どもシアターのターゲット層(多分小学生くらいの子)が『町だより』を読むだろうか。
口コミで「今月、公民館でドラえもんやるらしいよ」なんて広まるとも思えない。自分が大人だからそういう考えになるのだろうか。小学生でも意外とこういう掲示物に注目するのかな。だとしたら、町だよりをチェックしてるその子は将来インフルエンサーかラジオDJになると思います。
といったことをじょにーに話したら、「自分が小学生のときは配布されるプリントとかめっちゃ読んでたよ」と返された。
ここに情報通だった子がいました。