シンクロする蛍
当時、ボクは博士号を取ったばかりの駆け出し研究者でした。
生体のリズム現象に興味があり、ヒトの心拍や、血圧のゆらぎの研究をしたいなと思っていました。
運よく探し当てた留学先で、何か面白いことできないかな~と思って、日々計測と、データの解析に明け暮れていた毎日でした。
「週末は、研究を離れて、自分の好きなことをやりなさい」
メンターの先生にそうアドバイスされて、素直に聞き入れたボクは、週末ごとに気ままな一人旅に出ることにしました。
ふるさと意識が希薄な自分でも、ちょいちょいホームシック的な感情に襲われることがあります。
そんなときの行き先は決まって、ここでした。
同じく、気ままに読み散らかした本のなかに、グレートスモーキーマウンテンズのシンクロして光る蛍の話がありました。
これはぜひ、見に行かなくちゃ~というわけで、当時仲の良かった友人と一緒に、シンクロ蛍ウオッチングツアーに出かけることにしました。
人気のあるスポットらしく、事前の申し込みをが必要でしたが、運よく、希望の日にOKが出て、友人たちと一緒にわいわいと現地へ向かいました。
到着した先で、赤いセロファンを張った懐中電灯を持ち、蛍たちの競演を待ちました。
6月とはいえ、夜の山中はずいぶん肌寒く、なぜかついてきた、くだんのメンターの腰痛が悪化して、なだめるのが大変だったことを思い出します。
この日に見られた蛍は、まだ数が少なく、まばらな印象を受けました。それでも文献にあるように、シンクロして光る様は、ほかでは見られない感動を私たちに与えてくれました。
諸般の事情で、ここ数年訪れることが叶わなかったけれど、機会があれば、是非もう一度行きたいなと思っています。
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