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『労働と幸福』への洞察


仕事がAIに代替される未来で、人はどのように幸福を見いだすのか?

AI技術の進化は日進月歩である。これまで「人間にしかできない」と考えられていた高度な専門業務やコミュニケーションにまで、AIが参入し始めている。こうした潮流がさらに加速すれば、社会全体での労働価値、交換価値、使用価値のあり方は大きく変動するであろう。
多くの人が「仕事」を通じてアイデンティティや自己肯定感を獲得してきたなか、それが無価値化するとすれば、人類はどのように「生きる意義」を見出せばよいのか。本稿では、仕事がAIに代替される未来を見据えつつ、新たな幸福の芽生え方について深く考察する。


1. 「存在の意味」を捉え直す

従来、個人の社会的地位やアイデンティティは、「どのような仕事に就いているか」によって大きく左右されてきた。労働価値が高いとされる職業に就くことが、一種のステータスとなり、社会的承認や自己肯定感を得るための主要な手段だったのである。
しかし、AIの台頭が進むとともに、これらの「高い労働価値」を誇る仕事すらも代替される可能性が浮上している。交換価値や使用価値が下がり、人間の生み出す付加価値が見えにくくなる未来において、何をもって「自分自身」を肯定し、存在意義を確立すればよいのだろうか。

たとえば、AIが経済の多くを担うようになれば、現行の資本主義的な評価基準は大きく揺らぐと考えられる。その際に必要なのは、これまで見落とされがちだった「存在そのものの尊厳」を再評価する姿勢である。労働による交換価値を生み出さなくとも、人が互いに尊重し合う関係を構築できるかが重要となる。育児、介護、地域での相互扶助といった活動が再定義され、新たな文化の形成につながると考えられる。

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