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自主性と主体性と協調性と

皆さま、最近とても暑いですよね?そろそろシャワーの温度と外気温が逆転しそうな今日このごろですが、久々にnoteを書いてみようと思います。きっかけは最近出会った一冊の本です。この本を中心に、最近考えていることをまとめてみようと思いますので、少しだけお付き合いいただけますと幸いです。

過去のマネジメントに関するnoteはこちら

きっかけは一冊の本から

僕は生粋の千葉ロッテマリーンズファン(といっても野球全般好きですし、スポーツは何でも見ます)でして、それを見つけてくれた出版社元のディスカヴァー・トゥエンティワン様から献本いただきました。

注)最初にお伝えしておきますが、拡散を頼まれたわけでも、こうやって記事を書いてほしいと頼まれたわけでもありません。

ちなみにそれがこちらの本です。後ほど絶賛しますが、野球のひとの本と思わずに組織論、リーダー論の本としてぜひお読みいただければと思います。少なくとも私は共感するところがたくさんありました。

本書は、千葉ロッテマリーンズの吉井監督の著書です。吉井監督はメジャーリーグでもプレーされていた一流選手ではあるのですが、WBCに招聘されるなどコーチ、マネジメントとしても一流の方です。

そんな吉井監督が書いた本ということでとても期待しながら拝読したのですが、正直に申し上げて期待以上でした。チームや組織作りはその人の思想や考え方によって最適解が違うと思いますが、僕にとっては納得できる内容が多く、同じ方向性だと感じました。

マネージャーにはもちろんおすすめですが、この生き方の難しい現代において、どう成功するかという意味ではプレイヤーの方にもお読みいただきたい一冊です。

生き方の難しい現代、が気になる方はこちらのnoteをお読みください。

機嫌の良いチームを作る

吉井監督曰く、強いチームとは以下の通りです。

強いチームとは、選手個々がそれぞれの色を出して、それがさまざまなかたちに混ざり合っていくチームである。(中略)そのためには、選手が主体的に考え、行動できる思考になり、監督、コーチが積極的にそれを後押しする体制を構築できなければならない。それが私の考える究極のゴールである。

吉井理人 著「機嫌の良いチームをつくる」より

また、上記に加えて「失敗を責められず、次の挑戦に向かって前向きな改善ができるチーム」ともおっしゃっています。

この考えには個人的にかなり共感しています。この変化の激しい時代、そして個が尊重される現代において、人の能力開発、成長には本人の主体性がキーになることは間違いありません。実際に成果を出している学生スポーツでも同様のことが語られています。

2024年、夏の甲子園大阪予選でも優勝した大阪桐蔭高校では、1on1を行い、ひとりひとりが違うメニューをこなしています。サッカーの名門、熊本県の大津高校では「朝練」が自主参加となっています。それ以外にもとにかく思考させる仕組みがあり、率先して取り組む自主性と、自ら考えて取り組みを決める主体を持ち合わせたチームが結果を残しています。

ちなみに、私が高校スポーツに注目する理由は、「いま自分の近くにいる世代で強いチームを作った」という事実が、その世代とどう接することが正解かを教えてくれるからです。ここはまた別のnoteで書きたいと思います。

2024年の新卒と向き合った話

これまで語った話を実践した、リアルなお話をここでさせてください。2024年の4月、5月は24卒の新卒社員をお預かりし、事業部門の配属までに育てるとうミッションを持っていました。そこで掲げた大方針が、私が20代の頃に実践していた「期待値を超える」だったのですが、そのために必要な要素として3つを上げていました。それがまさに、主体性、自主性、協調性だったのです。

主体性とは「自ら目標を決める、課題と打ち手を決める」と定義しています。誰かに何かをしろと言われてやるのではなく、自分で考えて決めなさいということです。

自主性とは決めたこと、決まったこと、ルールなどに対して率先して取り組むということです。主体性は思考、自主性は行動と当時はわかりやすく説明していました。

そして協調性です。大きなことを成し遂げる、短期ではなく長期で成功しようと考えた場合には仲間が必要です。ビジネスもチームで挑むものという考えもあり、企業全体で大切にしている思想でもあるのでこれを選びました。

当時の資料より抜粋

失敗の回数がKPI

新卒の研修時に設定したもうひとつの方針が「失敗≒茂野から指摘された数がKPI」というものです。どうしても指摘を怖がる、失敗を怖がるという空気を感じていたので、配属前のそのタイミングで「指摘はプレゼント」「成長のために必要なこと」と認識してもらう必要があり、設定したうえで以下のように伝えました。

「私はあなたたちの評価者でもありませんし、すぐに上長になることもありません。ここで指摘される方が合理的です。ですから指摘されたら『ラッキー!』くらいに思ってください。また、その回数をKPIとして設定しますので積極的に発言、提案、行動してください。」

伝えたからといってすぐに受け入れられるというものでもありませんが、私も指摘したあとに「よかったね!今日のKPI達成!」と明るく接していたので、少しは指摘の恐怖心、その後の精神的負担を和らげることができたのではと考えています。

主体性×協調性 は 自主性×協調性 と大きく違う

書籍の中で吉井監督も言っていますが「自主性と協調性だけではただの仲良しクラブになってしまう。そこに主体性が加わるからこそ、その主体性や個人の特性を活かそうとチームが動き、本当に強いチームになる。」(意訳)と私も考えています。

逆に主体性が強すぎて協調性がなくなればそればエゴイスティックなチームになり、チームとしては機能しなくなる。ではどうすれば協調性と主体性はうまく混じり合うのか?それは目的、目標です。ひとは目的が決まったときに素晴らしいパワーを発揮する。そのために必要なのが、マネージャーがチームの指針と目的を明確にすることであり、チームを率いる人間がまず最初に取り組むべきことも、目的目標と指針の策定なのです。

書籍の中でも「メジャーリーグは一見、個人の集まり、エゴの強い集まりに見えるが、最終目標に対して一丸となって戦っている。そこでは個人の主張だけをするエゴイストはいない。」と語られていますが、ただ協調性を意識するだけではなく、勝利のために必要な議論をする、そこで決められたことをチームとして遂行するというプロセスが実行されていると考えています。

チームの理解を得るために必要なオープンな環境

昭和のマンジメントは「情報の非対称性」を使うことで組織を管理していました。つまり、マネージャーしか知らない情報が多く、それを出したり隠したりすることで自主性をコントロールしていた、ということです。

しかし現代では、その方法では疑念を生み、信頼を得ることができませんん。信頼されなければ質問にも耳を傾けてくれませんし、そこから気づきを促し主体性を発揮させることはできません。ですから、①方針の策定と目標の設定、②定量的なデータ開示とそれに基づいたコミュニケーション、③思考のプロセスや感情の開示、が重要となってきます。

私もよくやりますが、新任のマネージャー、異動によってチームが変わったマネージャーは自身の取り扱い説明書を作成し、開示することをおすすめしています。自身は何を大切にし、どんな組織と目標を目指していて、そのために必要なことは◯◯だと考えている、などを資料として作成し、自己紹介します。そうすることでその後のコミュニケーションエラーを減少させることができると考えています。

また、データを基に定量的に判断する、それを開示するということが重要です。これまで語ってきた通り、最高のチームにするためには主体性が必要で、データの開示を無しに(もしくてはデータを使わずに)「こうするべきだ!」と言って従うチームを作っても、それは烏合の衆にしかならないと吉井監督も書いています。

例)千葉ロッテマリーンズ 佐藤都志也選手
大学時代大活躍で千葉ロッテマリーンズに入団した佐藤選手ですが、なんといっても特徴はその打撃です。しかし、打てる捕手として入団した佐藤選手ですが、2020年が打率.228、21年が.205、22年が.214、23年が.218と決して高い数値ではありませんでした。※打てる捕手、森友哉選手は21年に.301を記録しています。

NPB公式サイトより抜粋

しかし、今年の数字を見ると「打率 .301」とこれまでとは比較にならないほど打っています。※現在パ・リーグ全体の第二位です。7/31現在。
なにが彼をそこまで変えたのか、それはデータによる指導方針の変更と育成です。

簡単に要約すると、コーチから「右方向に強く打ちたい気持ちはわかるが、逆方向の左へ打った方が実は打球速度が速く、ヒットになる可能性が高い。データを信じて意識と行動を変えてみよう」と言われ、それまでとはバッティングの意識が大きく変わり、もともと持っていた打撃センスが開花した、という事例です。

データの重要性がさらに高まっている

今回の著書の中で印象的な言葉が「データの裏付けがないものは都市伝説」というフレーズです。例えば「点を取った次の守備では絶対に点を取られてはいけない」という言葉が野球界には存在するのですが、それが何を意味し、どんな影響があるのかデータでは示されていません。

そういったものを吉井監督は都市伝説と言っています。これは私のいるビジネスの世界にもあることだと思います。もちろん、これまでの慣習や商習慣は大切にするべきところもありますが、データ(裏付け)のないものをそのまま信じることはリスクもあります。逆に、もしそれが数値で実証されれば心から信じて取り組むことができるので、どちらにしてもデータ化することは重要だと言えます。

スポーツの世界ではすでに多くのことがデータ化されています。ここでは詳細にはお伝えしませんが、「大谷翔平選手と打撃が似ている選手は?」と調べればあらゆる側面からデータで分析されたものがすぐに提供される時代になっています。ではビジネスではどうか?残念ながらまだそのレベルには達していません。

しかし、データの扱いがうまい組織とそうではない組織が出てきているのは事実です。営業の行動や転換率、インサイドセールスの会話データ、お客様の行動ログや外部の3rd party dataなど、活用できるものは揃ってきています。あとはそれを実行するか否かで組織力が変わってきます。主なポイントは以下の通りです。

・採用や育成への貢献
・正確で大量のデータがあればAIの活用がさらに進む
・マネジメントコストの低減

一方で、どれだけ計算しても正確な答えにたどり着けるかどうかは別問題です。そこにさらに必要なのが”勘”だと吉井監督は説いています。「データが7割、勘が3割。基本的にはデータ通り決めていくが、流れや空気、データにはない状況や情報を基に最後は勘の要素が重要になってくる」(意訳)とおっしゃっていて、まさにその通りだと思いました。

むかし、予算の精度が上がらない、チームとしてとても苦労している時期に先輩に相談したのですが、そこで「予算の最後は顔みて決めるかな。メンバーがいまどんな表情をしているのか、そこにリスクはないか、もしくは実力よりも低い期待値になっていないかを考える」と言われたことがあります。この先輩はまさにデータ7割、勘が3割を実践されていたのだと思います。

オールラウンドコーチの限界

自分自身でも強く感じていますが、最近は中間管理職への期待値があまりにも高すぎる≒業務のカバー範囲が広すぎるという問題認識がありました。著書の中にも同様のことが書かれており、対策として「専門性の高いコーチを育てる」とされていました。これは、必要な役割に集中してもらうことで負担を減らすと共に、チームに必要な専門性を取り込むという狙いだと考えています。

本を読みながら私なりに整理したものが以下の図です。プレイヤー以外の役割として期待されていることの第一が「テクニカルコーチ」です。なにかの専門性があり、その技術支援、育成が主なミッションです。ついで、データアナリストです。先程からお伝えしている通り、データの重要性が高まってきており、データを扱えないチームはかなり厳しい状況になると簡単に想像できると思います。そしてピープルマネジメントで重要なコンディションの調整です。それに加えて戦略や配置、投資の配分や優先度を決めていくディレクターやコーディネーターといった役割が必要になります。

現在はここまで記載した内容すべてが「マネージャー」という人格、役割に期待されていることで、それらすべてに対応する研修が用意されていないことがほとんどだと感じています。それどころか、このように細分化された役割要件定義もなく、昇進直後にあまりにぶつかる壁が高く、かつそのキャッチアップに必死になっている姿をみて、「マネージャーにはなりたくない」というひとが増えているのではないでしょうか。

ですからマネージャーにはまず、特定分野のテクニカルコーチを目指してもらい、その後少しずつ役割を増やしていくことが最適なプランだと思います。そういった差配も含めてマネジメント陣の育成を担っていくのが部長 / ディレクターであり、野球でいえば監督の仕事なのです。

※メンバーの部分は拙著にも記載があるので今回は省略します。

しげの作成

分業制のメリットはマネージャーの専門性が高まること

野球でも投手コーチ、守備走塁コーチ、打撃コーチなどに分業するように、とくにベンチャー界隈の企業では業務を分業することが増えてきました。これまでは「業務の生産性」を上げるために部門をわけ、それぞれの部門がそれぞれのKPIを追いかけるという理解をされてきましたが、本書で書かれている本質はそこではありません。

分業することでその担当マネージャーの専門性が磨かれ、それによって組織が進化していくということが、分業制のメリットだと書かれています。これは我々の業界でも同じことがいえると感じました。部門マネージャーはその部門が正常に動いているか、生産性は維持できているかという「業績管理」が主な仕事になってることも少なくないと思います。しかし、本来であればその領域を研究し、実践して修正していくことで組織全体へ良い影響を及ぼしていくということをマネージャーに要求すべきなのだと考えを改めさせられました。

ぜひ皆さんの組織の中でも「マネージャーはその領域の専門家」といえるかどうか、自身や相手に問いかけてみましょう。もしそれがNoなのであれば、そのためにどうすれば良いか、なにが不足しているのか、課題は何かを特定して改善することが組織力強化につながると確信しています。

スキルマネジメントとコンディションマネジメント

ひとを育成する際に考えなくてはいけないことがあります。それは能力開発=スキルマネジメントと体力とモチベーションの管理=コンディションマネジメントです。

これまで昭和の時代はとにかく成果、そして成長を第一に考え、コンディションは軽視されてきたと考えています。過労や精神的負担が大きく、体を壊してしまうことも少なくなかった時代、そういった時代を経て現在はコンディションマネジメントにかなり重きがおかれていると感じています。しかし、この2つのバランスを取る必要がマネジメントには求められています。

そのために必要はことは、以下の通りです。

・メンバーとマネージャーの信頼関係
・HPの把握とコントロール
・Willの把握とギャップの明確化、打ち手の策定

信頼関係が築けていない状態ではスキルマネジメントを強化できない、もしくは正しく本人の状況を把握できていないことで、コンディションマネジメントができないということになります。ですからまずは信頼関係を築くことに注力すべきです。

また、「部長からも課長からも指摘されてばかり。もう逃げ場がない…」や「みんな言っていることがバラバラでなにを信じたら良いかわからない」、「いろんな人から仕事がきて嬉しいけどちょっと工数足りないな…」という状況に陥ることがないように、マネジメントチームで育成方針を合意し、定期的な情報交換をすべきです。

そういった情報交換はもちろん、組織の情報を集めるためには積極的に動いていく、馴染みやすい雰囲気作り、(これは私の持論ですが、ネガティブな情報を集めるためには、悪い報告に「ありがとう」で返す、というのがあります)など、中間管理職からの報告はもちろん、もしあなたが部長(監督)なら接良く的に動いて吉井さんのように情報を集めることで、課題の特定やより正確な育成プランの策定と実行ができようになるのです。

成果と育成は車の両輪

短期の成果を求めるだけで良いのであれば信頼関係の構築も、説明も必要ないのかもしれません。吉井監督も「短期であれば恐怖でマネジメントすることもできる」と言っていますが、ゴールは短期にあらず、ビジネスでいえば永続的なビジネスの成長ですし、野球チームでいえば長期で勝ち続ける常勝軍団(1年間戦うリーグ戦も十分常勝軍団)です。

つまり、成果を上げるということと、メンバーや中間管理職の育成は両立しなければいけません。これは非常に難易度の高いことだと思いますが、多くの企業、とくにスタートアップやベンチャーでは必ず求められます。そこで課題になるのが「成長に必要な挑戦で失敗した場合」をどこまで許容していくかということです。

できないことであれば失敗確率は高まります。ですがそこから多くのことを学び成長してくれれば将来の大きな戦力になりますが、一方でその間、短期業績は非常に厳しい状況になります。この無理難題を攻略するためにも、正しいデータとそこからの見立てを立てる必要があります。

4割成功確率があれば挑戦させる、3割程度ならやらないなど基準を考えておくことも意思決定を鈍らせないポイントです。

また、失敗した場合には「よくがんばったお疲れ様!」とただ単に労うのではなく「自己採点で何点だったのか」「足りないものはなにか」「そのために明日から何ができるか」としっかりと振り返りを行い、この失敗を無駄にせず次につなげ続けるという文化醸成が必要です。

ただ「ナイスチャレジ!」と声をかけるだけでは、やがて挑戦のハードルが下がりすぎて、挑戦のための準備が甘い、振り返りも適切ではないので成長しないという文化になる可能性があります。恐怖でマネジメントする必要はないが、適切な緊張感は必要と書籍の中でも説かれていますが、同感です。本気のプレッシャーの中でしか成長しないという考え方も共感しました。

最後に

「もっとこんな選手がいれば」と考えることは無駄であり、「理想の選手が揃っている状態」はおそらくやってこない。リソースが不足している前提に立って、それを補うための準備やシュミレーションを重ね、そのときに最適な組み合わせで勝負し、的確な判断をしていく必要がある。

その大前提が「選手が主体的に考え、自ら気づき、自ら行動すること」である。それによって以下の具体的な思考、行動に変わっていく。

・自分の強みと弱みを正確に把握する。
・強みを伸ばすために何をやるべきか自ら考える。
・弱みを補うために何をやるべきか自ら考える。
・改善し、成長するための行動を、自らの意思で遂行する。

吉井 理人 著 機嫌のいいチームをつくる より

これは我々の状況においても同じことがいえると思う。良い採用で補うことはできるかもしれないが、状況は刻一刻と変わり、常に理想のチームも変化していく。そして良い人を採用したところで、良いカルチャーやマネジメントが効いていなければ結局は戦力になり得ないし、場合によっては退職につながってしまうかもしれない。

そう考えるとやはり優先すべきはチーム作り、組織づくりではないでしょうか。僭越ながら、吉井監督と私の思想に近いものを感じ筆を取りました。主体性、自主性、協調性はどの組織にも良い結果をもたらすと考えていますので、このnoteがいつか皆さんのお役に立てればそれほど嬉しいことはありません。また、メンバー側にいる若手の方々も、マネジメント陣の思考を理解し、またいつかくるその日に備えてぜひ実践していってもらえたら嬉しいです。

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しげの

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