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セールスの役割は価値を”届ける”から”最大化させる”に変わるのかもしれない

今日(2022年3月17日)はセレブリックスさんにお声がけいただきまして、以下のイベントへ審査員として参加して参りました。審査員をお受けした動機は「最適なセールスプロセスはきっとお客様の購買体験を良くするものだと思っているから」です。その一端を自分も担っていきたいなと。

3社とも素晴らしい内容でまさに甲乙つけがたい、そして異種格闘技戦ということもあって「これは何を問われているのか」を考えることにしました。そんな頭の中を勝手に整理しただけなので公式解説でも公式見解でもありませんので細かい追求はご容赦ください。

ということで少しずつ各社の内容を自分なりに整理します。

1社目 弁護士ドットコム様

テーマは「コミュニティセールス」です。まずは橘さんから日本におけるセールスの変遷が紹介され、B2Bのセールスにおいても口コミ、第三者の評価が重要視されるようになった、と。そこでクラウドサイン事業としてユーザーコミュニティを立ち上げ、ユーザー同士のナレッジ共有や交流会の場を作り出すことで顧客網そのものをセールスの武器(お客様への価値)にしてしまうというものでした。

また、各種口コミサイトや資料請求サイトでの評価を集めるために「セールス自らがお客様をユーザー会へ集客しその場で口コミを投稿してもらうこともある」とおっしゃっていたのが印象的でした。これまでは主にマーケ部門の施策や取り組みとして位置づけられていた事例化、口コミの収集までもセールスが担うというのは私自身の新しい発見でした。

自分なりの解釈


クラウドサインというサービスにコミュニティを付与することで提供価値を最大化している。それは新規のお問い合わせ、商談の増加や成約率の向上に寄与しているがお客様にとっても他のユーザーからノウハウを得ることができるし、検討段階でつながることができれば商品選定を間違うことも減り、これから起こりうるトラブルを知ることもできるなどメリットが大きい。また、製品の特性上、クラウドサインが広がれば広がるほど担当者さまの業務負荷も減っていくという相性バツグンの施策でもあります。

2社目 マネーフォワード様

テーマは「競合商談を成功させる秘訣」です。後発で投入したクラウド経費ではコンペ商談がとにかく多く、また営業の対応商談件数には上限があるため売上における生産性を上げるためには”競合商談に勝つ”ことが最重要である、という課題設定でした。これはどの営業組織にもある共通課題だと思います。

そこでマネーフォワードさんが実践された手法は”機能比較からの脱却”でした。後発ということもあり単純な星取表では勝率がわるく、そんな中でも選んでくださったお客様にヒアリングをしていくとある共通点にたどり着きます。それは経費精算を電子化したい、というピンポイントな要望ではなく「社内をペーパレス化したい」という大きな目的が顕在化していることでした。

自社製品の本来の目的がペーパレス化であり、機能も特化している。ではなぜ売れないのか?それは商談の設計にありました。それまでは簡単なヒアリング、デモ実演、そして最終提案(コンペとの戦い)と進めていましたが、それが大きな誤りだったのです。そこで商談の手法を180度転換し、「経費精算システムはご検討ですか?」という問いから「社内のペーパレス化は進んでいますか?」という問いに変更します。これによって目の前の小さな課題だけではなく大きな目的からの逆算になったことでコンペ勝率が飛躍的に向上するのですが、詳細はアーカイブ配信をご覧ください。

自分なりの解釈

SaaSという特性上、機能比較表は6ヶ月も経てばまったく別のものになります。そこでマネーフォワードさんは自分たちの価値を最大限発揮できるお客様を見つけることに注力し成功されました。しかしこれはすでにニーズが顕在化したターゲットに絞った、ということだけではなく「自分たちの目指す未来とお客様のありたい姿を結びつけた」ということだと思います。つまり、現在価値だけではなく将来価値まで含めてお客様に提案しているということなのです。

3社目 LayerX様

テーマは「ISの価値は不確実性を極小化する役割である」です。創業期であるLayerXさんにおけるISの役割はただの商談提供部門ではなく、事業の司令塔的な存在とのこと。ただ架電量やメールの送信量を増やすことで商談を増やすのではなく定量、定性の両面から業務改善を促し事業成長に大きく寄与されています。また、商談増のためにマーケティングとの協議、協業、新施策の立案実行、場合によってはプロダクト開発にもそのメッセージを届けています。

その根幹にあるのはデータドリブンな組織です。ファクトで議論するというカルチャーがあり、データを大量に扱い、常にお客様との最前線にいるISが起点となってマーケティング施策について言及する、製品開発にも協力するなど、まさに司令塔的や役割を担っています。それが実現できるのもデータを正しく収集、分析、可視化が高いレベルで実行されているからだと想像に容易いです。

組織について特に印象的だったのは冒頭の各種役割の説明で「マーケ、IS、セールス、CSのように4つにわかれた協業体制です」とおっしゃっていた部分です。多くの企業が分業と説明するところを協業を説明するあたりに組織としての大きな意思を感じました。

自分なりの解釈

ISが起点となり高速でPDCAをまわすことで目の前で困っているお客様はもちろん、潜在的なニーズを抱えているお客様、まだ情報の届いていないお客様に対してマーケティング施策、ISチーム内での工夫、セールスとの接続、プロダクト開発への寄与など、常に変化を促し続けることで提供価値を最大化し続けることが可能になっていると感じました。

今日問われていたことは価値の最大化なのではないか?

これまでの10年で感じたことは、営業という仕事はプロフェッショナルで職人のような仕事から型化や再現性を追求することで”個人からプロセス”へと求められるものが変わってきたというものです。しかし、今日のイベントに参加してわかったことはそのプロセスが果たすべき役割は価値の最大化なのではないか、ということです。

これまでの営業はいかにして価値をお客様に届けるか、というものだったと思います。機能の書いてある提案書やパンフレットを持参しお客様に情報を届けていきます。量を増やすことにこだわるのは”価値の提供=その価値をそのタイミングで求めているお客様探す”という構造だったからです。しかし現在は流通する情報量も多く、ガートナー社によれば「お客様が検討する時間の中で営業とつながっている時間はわずか17%」という実態もあります。つまり、営業がどれほど交渉に時間と労力を費やしたとてそのパワーには限界があります。

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出典 : https://www.gartner.com/smarterwithgartner/future-of-sales-2025-why-b2b-sales-needs-a-digital-first-approach

これからはその短い接点の効果を最大化する、もしくは投資してもらう時間を増やさなければなりません。それこそが価値の最大化なのです。ですからそれは製品の価値をただ届けるだけでは実現できず、セールスというプロセスの中でいかにそれを最大化できるか、ここを今回のイベントでは問われていたような気がします。

整理

弁護士ドットコム社
製品 ✕ (ユーザーコミュニティによる価値の最大化 ✕ 協力企業数)

マネーフォワード社

製品 ✕ (現状の課題解決 + お客様が得る将来価値)

LayerX社
製品 ✕ 高速PDCAによって享受できる価値が増え続ける

まとめ

ここまで自分の考えたことをまとめて来ましたが、記憶が曖昧な部分もありますし、なにより皆さんひとりひとりがそれを考えることが重要だと思いますのでご覧になっていない方はぜひ自分の目でみて、自分なりの解を求めてみてください。セールスひとりひとりがそんな風に価値を考える時代になったら、それは最高にCoolですよね。

おわり

↑アーカイブ配信もたぶんこちらからです。

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