裏庭のつぶやき

 大ちゃんが「膝の限界」を口にした時に、さぞ悔しかったろうと思う一方で、「凄い、なんて男前な人なんだろう…」とつくづく感嘆したのでありました。あるいは、一人だったら言いたくなかったかもしれない。でも、あの場で「引退の最大の理由」としてすぱっ!と口にすることによって、数え切れぬほどたくさんの物事が一気に成仏したような気がします。

 以前、同様に「2枠まであと一歩!」ってところでかなクリが空中分解した時、何しろカテゴリ自体があまり注目されてなかったこともあって、きちんとした取材が一つも無かったんですよね。たんなる「方向性の違い」で終わってしまった。あれ、同時期にシュピルのカントン離脱 (誤認記述なんですが、削除せず残します!訂正コメント下さった方ありがとうございます!)拠点にしてたカントンの指導体制のごちゃつきとかなんかかんかあった気がするけど、結局はっきりした事情は判らないままだった。そのタイミングできちんとした取材があったなたら、特に問題なくどちらかの口から明快な理由が語られたかも知れないんだけど…何となく、変に腫物触るみたいな感じになっちゃった結果、本人たちすら言い出しづらくなってしまった雰囲気があって今に至る、と。

 かなだいの船出、外野が沸き立つ一方でアイスダンスに深くかかわっている方面から不思議な逆風が吹いていたのって、大ちゃんに対する僻みや嫉妬、「大輔が来たからって即座に手のひら返しかよ」という報道姿勢への鬱屈に加えて、その辺のこともあるんじゃないかと私は邪推してて。かなクリ「ああ、これからどうなるんだろう!どこまで行ってくれるんだろう!」という期待感でいっぱいだった上に、下に居るKOKOも結成したてだけどそれぞれが経験値高くて伸び盛り。界隈には、「ここでかなクリが2枠取ってくれたら」という皮算用がものすごくあったと思うのですよ。それが、漠然とした「方向性の違い」での解散とあって、外から見るといわば「ほいっと投げ捨てて逃げちゃった」ように見えてしまった。

 練習拠点のゴタゴタ、経済的な苦労。そういえば、当時哉中ちゃんが、「強化はしてもらっていても、毎月100万円近く実家から送ってもらっている。とても大変です」って答えているインタビューがありました(そういやこれも、あくまでも正直に現状を述べただけなのに「強化指定されてるのに!感謝が足りない!」と騒いでた人たちが居たなあ…)。そして、今回の大ちゃん同様膝に爆弾を抱えたクリス。むしろ、「続ける方が困難」ともいえる状況での中の、突然の解散。けれど、世に出たのはまるで選手の我がままだったかのようなニュアンスばかり。「本当の事情」については調べる事も報道することもなかった界隈に、あの時の私は、「勝手な期待を裏切られた怨念」を感じていたのでした(ちなみに、色々な発言で物議を醸しているコーチのあの方は、1年で解散した哉中ちゃんの最初のパートナーと関りがおありだった筈。あの解散の時にネットにばら撒かれた哉中ちゃんへの誹謗中傷は度し難く、いくら何でも訴えて良いのでは?と思ってた。ご本人はその後しっかり学業を修められ、家業を継がれておられます)。

 会見の冒頭で、一番つらい筈の膝についていきなりスパッと言及したことによって、「ミラノ」とか「二枠」とか「勿体ない」、果ては「さすがに年齢が」などの余計なコトバが全部吹っ飛んだ。憶測の余地のない理由が提示された事で、パートナーのこともこれ以上ない形で守り切った。膝の辛さは今までおくびにも出さなかったけれど、明かされてみれば「ああ…」っていう、あの嘆息にも似た空気。そして、「そうだよね、仕方が無かった」と皆が寂しく納得して、前を向いた。高橋「選手」、最後の最後までしなやかに全てのもやもやを回収していったなあ…と感嘆しきりなのであります。

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