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【2022夏】ヨルシカ「盗作」の楽曲ストーリーをまとめました。
こんにちは。
前回(と言っても3年前)の記事で、「だから僕は音楽を辞めた」「エルマ」という二つのアルバムの楽曲ストーリーを解説しました。そこから3年、ヨルシカが出した新しいアルバム「盗作」「創作」、そしてライブツアー「盗作」で進んだ新たなヨルシカの物語と、前作「だから僕は音楽を辞めた」「エルマ」ライブツアー「月光」に登場するエルマとエイミーのつながりが新たに見えてきました。
この記事では、今までのアルバム全てを振り返りヨルシカが展開する壮大な物語を考察するとともに、盗作をはじめとする一連の物語の解説をしていきます。
「盗作」の登場人物
・俺
音楽を、盗む。
作曲家。
自身のすぐれた才能を用い、名曲と呼ばれるさまざまな音楽を盗作する。その曲はことごとく大ヒット。元空き巣。
・少年
俺に懐いた、10歳くらいの少年。
・俺の妻
故人。
「俺」の七つ年上。
・「俺」の父親
よくレコードを聴いていた。「俺」が音楽を始めるきっかけになった人物。
あらすじ
音楽との出会い
「俺」の父は、音楽の評論家でした。父が音楽に精通していることは、楽曲「盗作」の歌詞にも出てきます。
音楽の切っ掛けは何だっけ
父の持つレコードだったかな
音楽をはじめ、音楽をつくるきっかけを与えたのは父ですが、「俺」を歪めたのも紛れもなく父でした。酒に飲まれ、酔い潰れる毎日。そんな父に耐えられなくなった「俺」は、18のとき家を出ます。
青年期
上京した「俺」は、ある時道端で空き巣の誘い話を持ちかけられ、迷うものの引き受けます。そして、空き巣としての生活が始まりました。
このときの様子についての曲がinst「青年期、空き巣」です。
しばらくして、「俺」に空き巣の話を持ちかけた男が捕まりました。
妻との出会いと別れ
ある時、公共施設で女性が泣きながらピアノを弾いているのを目にします。なんとも言えない感覚に襲われ、「俺」は空き巣を辞め、音楽をはじめます。
音楽で生計を立てられるまでになった頃、またその女性と出会います。その女性は、「俺」が小学生のころ不思議と馬があった幼馴染でした。
その女性と交際をはじめ、やがて結婚します。
妻との想い出を描いた楽曲が「夜行」です。
幸せな暮らしでしたが、妻は、病気で亡くなってしまいます。
「花人局」には妻との別れを受け入れられない「俺」の様子が歌われています。
「俺」は数ヶ月分の仕事を全て断りました。
そして、目標を定め、音楽を再開し、
盗作をはじめます。
盗作
前置きはいいから話そう。ある時思いついたんだ。この歌が僕のものになれば、この穴は埋まるだろうか。だから、僕は盗んだ
「俺には盗みの才能がある。」
と、「俺」は書いています。
彼の言う盗みとは、名曲からそのメロディを剽窃することでした。
実際、何年もかけて音楽家としての地位を着実に築き、数年後には権威ある国際祭典のメインテーマを手掛けるまでになります。
しかし、心の奥では、自身の曲を褒めちぎる世間を常に見下していました。
売れたなんて当たり前さ。名作を盗んだものだからさぁ!彼奴も馬鹿だ。こいつも馬鹿だ。褒めちぎる奴らは皆馬鹿だ。
少年との出会い
ある時、小学生くらいの少年が万引きするところを目撃します。
少年は、「俺」の事務所を時々訪れるようになりました。「俺」は、少年にピアノを教えます。そのとき少年が弾いた曲「ピアノソナタ 月光」のカセットテープが、CD「盗作」の初回限定盤特典です。
少年も、「俺」に母親のステンドグラスの工房を見せます。
「おじさん、ピアノ好きなの?作ってあげるよ。」
という少年の言葉を受け、「俺」は「そろそろ潮時だな。」と感じます。
少年の万引きの真相
少年は、自分の母親が作った作品を壊していました。
少年はその理由を、「母親のステンドグラスが好きだったから、別のものを作っているのが嫌だった」と説明します。その説明を受けた「俺」は少年に、
「おまえが盗んだ商品の代金を、おまえの母親は支払っているんだ。もう事務所には来るな。」
と突き放します。
告白
あるインタビューで、「俺」は、自分の盗作行為を暴露します。
「最初から、俺自身の破滅が目的だった」とインタビュアーに話しました。
なぁいい記事を書いてくれよ。
俺はこの瞬間だけを楽しみにして生きてきたんだ。
inst「音楽泥棒の自白」はこのときのことです。
そのインタビューが世に出ると、もちろん「俺」は大炎上。
仕事を頼む人などいません。ドア前には罵詈雑言の書き殴られた紙が貼られる始末。
広場の公園に座っていると、少年がやってきました。
「ぼく、引っ越すんだ。遠いとこ。」と言い、「俺」に紙袋を手渡しました。
紙袋の中には、ピアノのステンドグラスが入っていました。
「盗作」と「だから僕は音楽を辞めた」「エルマ」の関係
盗作のストーリーは以上です。
しかし、ライブツアー「盗作」にて配られたブックレット「生まれ変わり」でヨルシカが繰り広げる物語全体の新たな局面が明かされることになりました。
ブックレット「生まれ変わり」は、2018年のアルバム「負け犬にアンコールはいらない」の初回限定盤に封入されていたものの再配布です。
「生まれ変わり」のあらすじ
ある朝停留所で、「私」は幽霊と出会います。会話を重ねるうちに、いつしか幽霊と停留所で話すことが私の日課になりました。
幽霊は、生まれ変わりを信じていました。
停留所にいるわけについて幽霊は、「彼女がもし生まれ変わっているのなら、きっとここへ来ているだろうから。」と言いました。
「私」は、夢を見ているような心地のまま、私もずっと貴方を待っていました、と返します。
幽霊はそうか、君だったのかと言いました。
「私」はそれ以来、生まれ変わりを信じます。
この物語は、「雲と幽霊」に通じます。
ヨルシカという物語
盗作ライブツアーで「生まれ変わり」が配布されたことから考えられるのは、ヨルシカという物語は、全て、ずっと同じ二人が生まれ変わって記憶を無くして、また出会う様子を描いた作品なのではないだろうかということです。前世で出会っていたから、盗作の「俺」と妻は、なぜか馬があったのではないでしょうか。「前世」は、ヨルシカオンラインライブのタイトルにもなっています。
盗作の「俺」と妻は、
エイミーとエルマは、
停留所の「私」と幽霊は、
ずっと、生まれ変わって、また出会うことを繰り返しているのではないでしょうか。
エイミーとエルマの物語を描いた「だから僕は音楽を辞めた」「エルマ」も、生まれ変わりが封入されている「負け犬にアンコールはいらない」も、雲と幽霊が入っている「夏草が邪魔をする」も、ヨルシカのアルバムは全て今回の「盗作」「創作」と繋がっている一つのストーリーだと考えられます。
そうであれば、ヨルシカの次の物語で二人はどのような出会い方をするのでしょうか。はやくも次の楽曲に期待が高まります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。