創刊1周年。ミッション定めました。
早いものだ。
NewsPicksパブリッシングはこの10月に、創刊1周年を迎えた。
文化祭前日の勢いで走り続けた一年だった。
死ぬ前に、この時期のことをなんと思い出すだろう。
立ち上げの一年目こそが命だと思って、すべてを出し切った。
創刊時の丸善丸の内本店。創刊著者の宇田川さんと佐々木さんと営業の岡元さんと一緒に、ビラを手で配ったのが懐かしい。
創刊『他者と働く』「先頭打者ホームラン」に始まり、『世界は贈与でできている』の山本七平賞(奨励賞)受賞、『シン・ニホン』『STARTUP』などのヒット作の誕生。
創刊、成功しました。
今日だけは言わせてくれ。
創刊、成功したよ!!!!!!
**ミッション:大人に、新しい「問い」を。
**
1周年を機に、ミッションを定めた。
大人に、新しい「問い」を。
ミッションが決まった後に過去自分たちがやってきたことを振り返ると、
「なんだ、全部『問い』だったのか」
と思う。
最初から思いついてよさそうなものだけど、本のタイトルもだいたいこんな感じで決まる。何時間もうんうん考えた末、「あれ、なんでこんなシンプルなことを思いつかなかったんだ?」と不思議になる。
**あなたは、どんな「問い」に答えを出そうとしているのか?
**
インパクトのある「問い」は常に世界を変えてきた。
なぜ、りんごは地面に落ちるのに月は落ちないのか。
本当に太陽は地球の周りを回っているのか?
答えの前には、必ず問いがある。
でも、僕たちは仕事をしているとそんな大事なことを忘れそうになる。
自分の仕事は、なんのためにあるのだろう?
その目的を成し遂げる方法は今のやり方だけなのか?
問いが上流にあり、答えが下流にあるとすれば、僕たちはつい下流の「答え」のことばかりに目を奪われてしまう。そして、「答え」を出すためのコンテンツ(あるいは「答え」そのもの)は、ニーズに応じて量産される。
新しい「問い」なんて言おうものなら、めんどくさいやつだなあ、と冷ややかな目線を浴びかねないのだ。
それでも、答えがめまぐるしく変わる世界だからこそ、僕たちはその川の流れを問いに向かって意識的に遡りたいと考えた。
「答え」は、人を安定させる。
答えを与えられた瞬間、人は「もう考えなくてよい」と判断するからだ。
一方、「問い」は人を不安定にする。
答えのない問いに対峙するとき、人はずっと不安の中にいる。
知性と呼ばれるものの実体は、不安であり続ける勇気だ。知識の量じゃない。
断定したくなるところを、「本当にそうなのか?」と留保する。
自分が拠って立つ足場を、「そもそも、そうなんだっけ?」と揺さぶり続ける。
そんな不安定さを楽しむ粋な人々を、僕たちは大人と呼びたい。
(余談だが、リリー・フランキーの「若いときに答えのないことを考えなかったやつは、大人になったら空っぽになっちゃう」という言葉に、思春期の理屈っぽい自分はたいそう救われたんだったな…)
さて。
そんなめんどくさい「問う」という行為に、いったい何の意味があるのか。
ビジネスの論理は、僕たちに問うことの生産性を突きつける。
これは文系の学問が理系の学問に対して抱える課題感となんだか似ている気がする。
哲学や文学なんてする暇があれば、新しい素材を開発したり、医学を進歩させるほうが「役に立つ」だろうと。
これに、僕は反論したい。
時代はきっと、答えのない問いについて考え続けられる人を求めている。
デザイナーベイビーは許されるのか。許されないとしたらその根拠は何か。
デジタルプラットフォーマーは、自らリスクを追って投資をしたことを理由に、市場の寡占を正当化できるのか。
感染症を予防するためには、自らのプライバシーに関わるデータを他者に手渡すべきなのか。それをどこまで強制できるのか。
フィルターバブルの中にいて「自分は幸せなのでこれで満足です」という人に、どう対峙するか。
AIの発展に規制は必要なのか。必要だとしたら、どのような体制が望ましいのか。
課題は日々複雑化する(上記の課題は50年前には存在しなかったか、存在しても他の課題の優先度が高く課題として認識されていなかった)。
僕たちは常に、自らが生み出したテクノロジーによって問われている。
あえていえば、「問うことの生産性」はかつてなく高まっているはずなのだ。
「いかに安くいい車をつくるか」という問いに答えれば付加価値が出た時代がゆるやかに終わり、トヨタは「移動の本質とは何か?」という新しい問いについて、まちをつくるという答えを出した。そして人々がいまテスラに熱狂しているのは、彼らが「人類にとって持続可能な移動手段はいかにして可能か」という別次元の問いに立ち向かっているからだ。
答えのインパクトは、問いこそが決めている。
ここまであえて経済的モノサシを軸に語ってきたが、僕は個人的にそのモノサシすらも問い直してみたい。「そもそも、目指すべき経済はどんな形をしてるのか?」と。
経済は、ときに暴力的なまでに個人の暮らしや社会のあり方を規定する。
だからこそ、人間とは何か、我々の生きる社会とは何か……といった経済から離れた文脈の問いから、経済自体を捉えなおしていきたい。だから自分は今日も経済メディアの中で本を作り続けている。
(ブループリントは副編集長富川直泰の担当作)
言葉「だけ」の価値は軽くなった。
行動が伴わないなら、耳障りのいいミッションだけを掲げることに意味はない。
その行動の手段としてビジネスはある。
仲間と顧客を巻き込み、自分なりの言葉をもって社会と対話するもっとも有効な方法は、事業をつくり、成立させることだ。そう信じ以下の2冊をつくった。
僕たちも、アクションを起こし続けていく。
「今すぐ役立つわけではない遅効性のアイデアが必要だ」という問題提起をするために、月一発行のメールマガジン、「スローディスカッション」を立ち上げた。
「静的なインプットではなくダイナミックな対話こそ豊かな読書体験だ」という問題提起をするために「アウトプット読書ゼミ」を立ち上げた。
その原型となったのは、対話型読書会のあり方を探求する「シン・ニホンアンバサダー」も、「読者から読者に本が伝わるのがもっとも自然な形のはずだ」という問題提起から生まれたものだ。
最後に:営業&新規事業メンバー募集します
今もまた別の新規事業を考えている。
ただ、ちょっとまずい。さすがに人が足りない。
このミッションをおもしろがってくれる、新しい仲間も募集することにした。
2年目にはどんな仲間が増えているのか・・・楽しみだ!(楽しいよ!)
最後になりましたが、創刊一年目からこれらの成果を残すことができたのは、僕たちの「問い」を受け取ってくださった読者、原稿を預けてくれた著者、書店をはじめとする関係者の方々のおかげです。
あらためて、ありがとうございます。
そしてこれからも、よろしくお願いします!
答えはいつも、問いを受け取ったあなたの中にあります。
(バナー写真:吉田和生)
おまけ:NewsPicksパブリッシングメンバー紹介
営業
岡元小夜さん(セールスマネジャー)
Twitterの「100日後にやせるさよ」をたんたんとアップし続けるクリエイターの顔を持つ我らが営業部長。ハロプロを何よりも愛す。鬼の実行力で、何もかも、必ず最後までやりとげる。
鈴木ちほさん
岡元さんと並んで全国の書店とのコミュニケーションを一手に担う。本と書店をこよなく愛し、そのにじみ出る出版愛で社内外に信頼される。実は空手が黒帯なので、本気で怒らせるとたぶん相当まずいことになる。
編集
富川直泰さん(副編集長)
海外のBIG IDEA BOOKを次々発掘する、日本屈指の翻訳書のプロ。編集者としてのポリシーは「ラディカルオプティミズム(合理的楽観主義)」。内輪ノリが好きじゃないので、このnoteのことも言ってない。気づかれないことを祈る。
中島洋一さん
NewsPicksパブリッシングのブレイン。他部署と兼務(というかそちらがメイン)ながら、いつも会議では鋭い発言を投げ込み、司令塔の役割を務める。頭が良くて、適度にくだけてて、最高。
企画管理(事務・制作)
中野薫さん
裏方として抜群の事務処理能力と進行管理能力ですべてのボールを拾う。仕事はめっちゃしっかりしてるのに酔うと「今日は泣かへんって決めてたのに〜」と言いながら泣く。
半田拓さん
頭脳にインテルが入ってるとしか思えないほど的確に状況を見渡し、数歩先のリスクをつぶす激しく優秀なビジネスパーソン。ただ、根回しが完璧すぎるがゆえに裏社会の人の雰囲気が漂ってしまう。(もっといい写真ないのかって?本人に言ってください)
インターン
中村孔大さん
人と人の集まる「場」をこよなく愛する。道に猫が捨てられていたら確実に拾って帰るであろう優しい心を持つ。もうすぐ卒業してしまうのがひたすら寂しい。きみはどこにいっても大丈夫だ。
山崎隼さん
NewsPicks編集部の仕事がしたくてインターンに応募したらなぜかパブリッシングの仕事をさせられて、よくわからないままに頑張ってくれている。実はライティングスキルがめちゃくちゃ高いことが判明したので引き抜かれないかビビっている。
ボス
金泉俊輔さん
頼れる番長。困っているときに必ず助けてくれるが、助けてあげた感をまったく出さない器の大きい人。誰とでも必ず仲良くなれるという特殊スキルを持つ。実は昔相当なワルだったらしい。