自由な「転職」は、この国を変える特効薬だ。(『転職の思考法』)
しばらくnoteから遠ざかっていた。
お世話になっている先輩に、
「ごちゃごちゃ書いてんと、仕事で語らんかい!」
と言われたからだ。
たしかに、編集者ほど仕事を通じて何かを「語れる」職業もそうはない。
ようやく、「語る」ときがきた。
今日、編集を担当したこんな本が発売される。
『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』
一言で言えば、
「転職が当たり前になった時代に、僕たちはどんな判断軸をもって働く場所を選んで行くべきなのか」
を明らかにした本だ。
この本をつくったのは、もちろん転職に悩む読者に「読んでよかった!」と言ってもらうため。でも、著者の北野さんには(そして、著者を応援する編集者としての自分にも)もうひとつ大きな「野望」がある。
世の中の働き方の問題の多くは、「転職」で解決できる
日本は「仕事の満足度・やりがいが世界一低い国」というデータがある。
初めて聞いたとき、ああ、そうかもな、と思った。
飲み屋に行けば「いやあ、うちの会社はさ」と、愛着混じりの愚痴を言う。
でも、オフィスに戻れば、その言葉は酔いとともになかったことにされてしまう。愚痴を言う余裕があればまだいい。何も言えなかったがゆえの過労死だってなくなっていない。
僕らの働き方には、数々の「なんでこうなっちゃったの?」が、今も溢れている。
一人で考えると「なんで?」と思うことも、みんなで考えると、「とはいえさ」の声に押されて、発言するのが怖くなる。
そんな「わかりやすい悪者がいない悲劇」をこの世から一発でなくす、とっておきの方法がある。
そう、転職だ。
「転職できる」つまり、「いつでも違う場所へ行く自由がある」状態をつくることこそ、著者の北野さんの野望だ。
転職できる状態で社員が働いていれば、度を超えた理不尽は起こらない。逆に、理不尽が理不尽なまま改善されないとしたら、それは、従業員が「どうせ転職しないだろう」と思われているから、とも言える。
問題は、「なぜ転職できないか」
目新しい意見ではないかもしれない。
「移動の自由」が、組織の歪みから個人を救うだなんて、それこそ小学校のいじめにはじまり、たくさんの人がこれまで指摘してきたはずだ。
問題は、なぜたくさんの人が指摘してきたのに、今も「自分には移動の自由がない」と思いこんでいる社会人が一定数いるのかだ。
理由は大きくふたつある。
ひとつは「不安」。
著者の北野さんは、打ち合わせで「井上さん、転職って童貞みたいなもんなんですよ」と冗談交じりに言っていた。
たしかに、「一回経験したら、なんてことはなかった」という意味で、痛快なほど的確な比喩だ。これは自分も最近転職をしたばかりだから、(事前の不安も含めて)本当によくわかる。
もうひとつは、「今いる場所の居心地がいい」から。
こいつが、じつにやっかいだ。
たぶん、転職を迷っている人で、いまいる会社が嫌いでしかたがない、という人は案外少ないはずだ。「そんなに悪いもんじゃないよな、ここも」という気持ちがあるからこそ、答えが出ないんじゃないだろうか。
お世話になった人を、いつか責めてしまわないために
それでも、僕は思う。転職できる状態をつくっておくのは、働く人の「義務」なんだよ、と。
もちろん、育ててもらった上司に恩義を感じるのもわかる。会社に愛着があるのもわかる。
でも、だからこそ、いつかその人たちの「せいで」何かを諦めたと言わないために、いつでも転職できる切り札を持った状態でいることは、恩義のある人に対するある種の「筋」だと思うのだ。
社会はつながっている。どこかでいい仕事をしていれば、巡り巡ってどこかの誰かに、かつて受けた「恩義」を贈ることはできる(そして、恩義を感じた人に報いる方法は、人と人としてつながっているかぎり、いくらでも考えられる)。
逆に、一番の裏切りは、愚痴を言いながらずっと会社に留まることだろう。
僕は会社の愚痴を言うことほどダサい行為はないと本気で思っている。
愚痴を言うなら、変えればいい。どうしても変えられないなら、場所を移るのもひとつの選択肢だ。
もちろん、闇雲に「辞めろ」と煽りたいわけじゃない(むしろ、北野さんはこの本が「煽り本」と誤解されないことに、誰よりも注意を払っていた)
具体論のない煽りは「悪」だ。
『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』というタイトルの本が最近出版されていたがまさにそのとおりで、「辞めれば」で辞められるなら、ブラック企業なんてとっくに全部つぶれている。
だから僕は、著者の北野さんに聞きにいった。
「転職に対する不安をなくし、働く人全員に移動の自由を確保するには、具体的にどうしたらいいですか」と。
そうして生まれたのが、この『転職の思考法』だ。
ストーリー形式にすることで、「論理」だけじゃなく、不安などの「感情」にまで寄り添ったこの本は、「転職できない」つまり、「ここにしか居場所がない」という思い込みを、軽やかにあしらってくれる。
この本が売れた先にあるもの
この本が売れた先には何があるか。
ブラック企業がなくなり、
過労死がなくなり、
育ててもらった恩義を感じていた会社をいつか罵ることもなくなり、
「まあまあ、そうは言っても変わらないさ、何も」という無力感がなくなり、
正々堂々、公明正大、元気ハツラツで働けるようになる(くどいようが、たとえ転職しなくても、だ)。
僕はその未来に本当にワクワクしている。
長くなったけれど、僕がこの記事で言いたかったことは、『転職の思考法』のメインキャタクラー、黒岩のセリフにすべて集約されている。
「いつでも転職できる人間がそれでも転職しない会社こそ、最高の会社だ」
「いいか。転職が悪だというのは、新たな選択肢を手に入れる努力を放棄した人間が発明した、姑息な言い訳にすぎない。人間には居場所を選ぶ権利がある。転職は『善』なんだよ。 個人にとっても、社会にとっても」
「個人にとって」だけでなく、「社会にとっても」いい本だけをこれからもつくっていきたい。
『転職の思考法』、どうかよろしくお願いします。
(できればリアル書店で買ってくださると嬉しいです)。
※お誘いです。
Facebook上に秘密のグループをつくっています。冒頭50ページを試し読みできるようになっているので、興味がある方はいつでも井上までお声がけください(コメントを残すのでもOKです)。また、もし共感してくださったなら、周囲の悩んでいる友人にも、直接『転職の思考法』の存在(www.amazon.co.jp/dp/4478105553)を伝えてあげてください。友人をグループへ招待するのも大歓迎します。「転職」は、SNSでなかなか広めづらいテーマだと思うので。
編集担当代表作:
『「学力」の経済学』
『持続可能な資本主義』
『日本につけるクスリ』
『未来に先回りする思考法』(すべてディスカヴァー・トゥエンティワン刊)