日本でエステートプランニングが必要とされる理由は?
日本では、資産承継に係る税制は厳しくなる一方であり、適切なエステートプランニング(資産承継計画)を早い段階から講じておかないと、3代の相続を待たないうちに財産の多くが税金として消えてしまいます。
よって、諸外国以上に日本の富裕層はエステートプランニングに早期に着手することが必要になります。
(1) エステートプランニングの手順
エステートプランニングの手順は大きく分けて以下の4つに分かれます。
① 顧客情報の整理
顧客情報として、資産・負債の状況などの定量的な情報だけでなく、定性的な情報が必要となります。なぜなら財産の承継というのは、財務的側面のみならず感情的側面を多分に持っているからです。
② 顧客財産の現状分析
PBの仕事の1つが、多様な情報を整理して顧客に提示し、顧客が全体を俯瞰することで現状の問題点を理解する手助けをすることであることから、顧客財産の現状分析は非常に重要になります。
③ エステートプランニングの立案
富裕層にも、上場企業オーナー、不動産オーナー、など様々なタイプの方が見えますので、それぞれに合ったエステートプランニングを立案することが必要になります。
④ 定期的なフォローアップ
エステートプランニングは作成すれば終わりではなく、ファミリーや経済環境の変化に対応しながら、最低3年から5年ごとに、また、ファミリー内で大きなイベント(本人の病気、親族の死去、事業売却、株式公開など)があればその都度見直しが必要となります。
(2) 顧客タイプによるエステートプランニングの基本的考え方
前項の③で述べたように、富裕層にも様々なタイプがあります。ここでは、中小企業オーナー、上場企業オーナーなどの大株主、不動産オーナー、プロフェッショナル、キャッシュリッチの5パターンについて、それぞれのエステートプランニングの基本的な考え方を見てみましょう。
●中小企業オーナー
日本の富裕層の多くが中小企業オーナーです。中小企業オーナーのエステートプランニングでは、自社株式の承継をどうするかを第一に考える必要があります。
●上場企業オーナー
上場企業オーナー株主では、相続税の納税資金対策が最重要課題となります。また、オーナー株主が経営から勇退を考え始める場合には、計画的な売却、贈与などにより財産内容の組替えを行うことが重要となります。
●不動産オーナー
不動産の場合には相続時の遺産分割が大きな問題となります。また、不動産比率が高い場合や物納が困難な場合には、相続税の納税原資の準備が必要です。
●プロフェッショナル(弁護士、会計士、医師など)
このタイプの富裕層は、収入が主として事業所得ないしは給与所得であり、所得税などの限界税率近くで課税されるために税引き後の手取り金額の最大化、収入源泉の分散化が重要になります。
●キャッシュリッチ
財産の中核が現預金であるキャッシュリッチに対しては、金融商品税制をうまく使いながら将来の生活費、相続税納税原資を確保した上での生前贈与や借入金による不動産取得、生命保険の検討などが考えられます。
(3) エステートプランニングの担い手
エステートプランニングの立案には、様々な視点からの分析、提案が不可欠であり、以下のような専門家の特性を考えてチームを編成することが重要となります。
① 会計士、税理士
② 弁護士
③ ファイナンシャルプランナー
④ 保険仲立人、代理店
⑤ 成年後見人候補
以上、今回は日本のエステートプランニングについて見てみました。
資産承継計画を早い段階から考えておくことによって、多くの財産が税金で消えてしまわないようにしていきたいものですね。
エステートプランニングについてもご相談を承りますので、お気軽にお声を掛けてください。日本の税制は厳しくなる一方ですが、適切な方法で自分の資産をしっかりと守りながら資産を承継していきましょう。先日のお客さまも、『日本だけではなく海外に目を向けると、意外にもこんな方法があったんですね。』という声もありました。いろいろ勉強していき、法律に則ったやり方で、効率的に資産を守っていきましょう。