エステートプランニングとは?
エステートプランニング(資産承継計画)とは、狭義では相続発生時の相続対策を指しますが、プライベートバンカーが通常業務で行っていることは、次の通りです。
従来の税金中心の相続対策にとどまらず、生前からの贈与計画、資産運用の戦略構築・運用の実施・運用結果の継続的なモニタリング、資産をめぐるリスクの管理などを包括的に行う業務のことと定義します。
エステートプランニングの基本的なポイントをいくつか見てみましょう。
1. 財産は何のために活用したいのか?
2. 財産によって将来の世代と社会に何を残したいのか?
3. 誰が財産を引き継ぐのか?親族以外に財産を承継させるのか?配分割合はどうするのか?
4. どの財産を引き継ぐのか?自社株、自宅など分割承継が難しい財産をどうするのか?贈与後も会社の支配権を保持したいのか?
5. いつの時点で資産を移転するのか?子どもが未成年の場合はいつの時点から使用できるようにしたいのか?贈与か譲渡か相続か?
以上のようなことがあると思います。
次に『プライベートバンカーにおけるエステートプランニングの意味』を見ていきます。
(1) 資産管理業務の必要性
プライベートバンカー(PB)の主たる業務は、これまでは顧客の資産をインフレによる価値の減少から保全することでした。しかし、近年、先進国ではインフレからデフレとなり、運用商品メニューの増加や先進国から新興国への資金シフトの増大などにより、顧客資産の運用のリスク管理は非常に複雑になっています。そんな中で、顧客の金融資産の運用効率を上げる重要性はますます高くなっています。
(2) 日本においての資産承継上の制約
① 相続税率が突出して高い
日本では、相続税の最高税率がこれまでの50%から2015年から55%に引き上げられました。欧米各国に比べて高い税率に加え、金融商品税制が複雑なこともあり、税引き後の手取り金額を最大化するためには様々な工夫が必要となります。
② 投資リテラシーの問題
欧米では資産規模が一定以上になると外部の専門家に運用を任せ、彼らからの運用報告を受ける中で投資に対する理解度、リテラシーが醸成されてきましたが、日本では、戦後急激に形成された富の多くが不動産投資に向かったため、金融教育が疎かにされ、したがって投資リテラシーが低いケースが多く見られます。
(3) プライベートバンカーの役割
エステートプランニングにかかわる者は、PB以外に、弁護士、会計士、税理士、成年後見人の候補者、信託の受託者、遺言執行者など顧客の状況により多岐にわたっています。PBは、エステートプランニングの立案とその実施に関するこれらの専門家たちのコーディネーターとして働くことも求められています。
以上、エステートプランニングについて見てみました。今後は日本でもさらに重要性が増すと言われています。次回は、『日本でエステートプランニングが必要とされる理由』について見ていきたいと思います。
次回の日本で『エステートプランニングが必要とされる理由は?』は、
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