右手の受難

家時間の充実という表向きな理由と、大和撫子を目指すという野心のもと、刺繍を始めた。やりすぎて、右手は腱鞘炎になった。

朝起きたら、親指と手首が痛くて曲げられず、翌日も治っていない。むしろ可動域が狭くなり、悪化している気がする。この日から半年以上、腱鞘炎は完治しなかった。
歯磨きに始まり、炊事洗濯掃除、日常生活のできないことややりづらくなったことは数知れず、本当に辛かった。大和撫子どころか、自炊もままならないワガママボディになってしまった。ビール瓶を持って注ごうとしたら、手が震えた。「今日もまだだめか。」と、思うことから始まる1日の積み重ねは、精神的ダメージが大きかった。通院・マッサージ・民間療法も試し、できる限りのことをサボって、右手を休めた。

少し良くなってきたときには、嬉しくて、ニヤニヤしながら右手を見つめていた。そんなある日、テーブルの角に右手首をぶつけたのである。
“ギーン”という音がしたように記憶している。しびれたような感覚があり、右手が動かない。即病院へ行ったが、幸い骨折はしておらず、また始めからやり直しの“右手安静タイム”へ突入した。なぜ私はあんなにルンルンして、手を振り回したのか。今思い出しても自己嫌悪になる。

かなり用心して過ごし、なんとか治ったある日、右手親指の関節をやけどした。がっかりした。今度は皮膚科へ通院だ。

そして私は、神社へお祓いに行った。自分の注意力は信用ならないため、他力に助けていただくことにしたのだ。その後、冬にひびわれは経験したものの、無事に過ごしている。

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