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ミステリ×学園×ラノベ!『シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する』感想

 皆様。お久しぶりです。いーちゃんです。noteの更新がかなり滞ってしまいました。これから、頑張って月1で更新できればと思っています。今回はライトノベル「シャーロック+アカデミー」の感想です。


 MF文庫Jより発行されている学園ミステリ。原作は「継母の連れ子が元カノだった」の紙城鏡介。イラストは「りゅうおうのおしごと!」のしらび。「このラノ」で取り上げられていたことから存在を知り、ミステリは好きなので読んでみた。

 本作はジャンルとしてはミステリだが、作品全体のトーンはMF文庫J的なものに寄せている。具体的には、「ようこそ実力至上主義の教室へ」をベースにして、お家芸であるハーレムものの要素を合体させた内容。舞台となる真理峰探偵学園のシステムは、独自の通貨、特異な試験がある、進学には実力が伴うなど、「よう実」の高度育成高等学校と非常に似通っている。しかし、「よう実」の学校は舞台である以上に、この非情な現実社会の隠喩になっていたのに対し、本作の真理峰探偵学園は学校という「舞台」の領域を出ない。あくまでも特殊な学校でしかないという点に違いがある。

 本作はミステリであり「ヒントが太字で書かれている」という、非常に親切なものになっている。更に、ヒントを大量に出しつつ、真相が読者の盲点を突いたもので、そこは面白かった。ただ、中心となる事件の真相は、何となく読めてしまった。これは作劇が下手というより、丁寧な伏線張りが上手くいっている結果だと思うが。いちばん騙されたのは最後の一押し。ラノベのお約束を逆手に取ったもので、これはうまい具合に騙されたな。

 本作の最大の特徴は、ミステリという体裁を取りつつ、「相手を論破する」ことに焦点を当てている点だと思う。ミステリの解決パートで、相手のトリックを見抜き、自供まで持っていく流れを「相手を論破する」と解釈し、その様をさながらバトルもののように描写している。これによって、途中から屁理屈合戦になっている気がしなくもないが、描写自体は流石のアツさだった。

 難点としては、女性キャラの扱いについて。ヒロインをはじめ、基本的に主人公に甘く、彼を立てるために存在しており、令和の女性の描かれ方として、読んでて疑問符が浮かんだ。一応、時代に合わせようとした形跡は見られるのだけど、そもそも「ハーレムもの」と喰い合わせが悪いため、そこに苦労している感じを受けた。

 また、主人公のモチベーションがよく分からないのが気になった。彼はラノベ主人公ではよくいる感じの、出自のせいで偏見を持たれていた生い立ちがあり、それ故に探偵を憎み、同時に憧れている存在(はみ出し者が女性にモテる、という、男性の心をくすぐる設定である)。そんな矛盾の存在を通して探偵王の孫であるヒロインを対称化させるという構造自体はいい。しかし、最初コイツ、普通に嫌な奴なのだ。そこからヒロインと友情を結ぶ下りは良かったが、私の読解力不足のせいか、その感情の流れを上手く汲み取れなかった。そのせいで、ヒロインの株があまり上がっていないという事態になってる。

 また、彼の実力がよく分からないという問題もある。落ちこぼれと言われているが、台詞で説明されるだけなので、彼がどの程度の落ちこぼれなのか分からない。彼はきちんと推理できているので、そんなに無能と思えないのだ。彼が「犯罪王の孫」であるからこそ活躍できている理由(それこそロジック)を提示してほしかった。

 以上、「シャーロック+アカデミー」の感想でした。色々書きましたが、読んでいて詰まらなくはなかったので、2巻も読んでみようと思います。それでは。


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