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第7夜 極細木に教わった2つの教え

我々プレーヤーにとって、プレイを公平に判断してくれるコーチであり、交渉人であり、友人である「マネージャー」。

ところが肝心の「マネージャー」がどういうものなのか。ほとんどの人がマネージャーが求めるところを知ろうとはしなかったし、教えてももらえなかった。

そこで私は、これまで表には決して出てこなかった「マネージャー」を知るため、声業界の女帝と呼ばれるマネージャー・極細木スガ子(ごくぼそきすがこ)にインタビューを試みたのだ。

が…!

『きっぱり』言いすぎて、「新人がぶつかる3つの壁」を教え終わる前に、力つきてしまった女帝…。

「ご、極細木先生だいじょうぶですか?せ、先生?!ああ~!寝る前に三つめの壁を私におしえて下さい!」

「すぴー」

私は足もとに横たわる女帝を見る。

女帝・極細木(ごくぼそき)スガ子ー。

「きっぱり」言うには女帝といえどもこれほど疲れきるのか。いかに貴重でギリギリの話をしてもらったのかを今さらながらに実感する。

またご無理をさせてしまった…これまで教わったことは、全て消化しきらねば申し訳がたたぬ。

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極細木が個人的な本音として語りだした、これまでの『2つの教え』だけでも、私にとっては驚きの発言ばかりだった。

かつて極細木が、養成所の所属オーディションで選んでいた基準とは「服装だけでも目立ってる子」だったという。そして所属オーディションは最後の5分で選んでいた…。

極細木によれば「既存の教育ではナレーションは教われない」ということだ。

今、テレビで流れるナレーションは、音声表現の全てが含まれているといっても言いすぎではない。

古典やアナウンスを尊重しながらも、どんどん新しいものを吸収し常に進化しているのがナレーションだ。

テレビの現場から離れて、売れるための試行錯誤をやめてしまった講師たちに〈時代の求めるナレーション〉が教えられるのか…

私には、極細木の本音《既成のナレーション教育には問題点がたくさんある。まったく新しく「ナレーションを教える場」が必要になってきた時代だと私は思うワ》という言葉が胸に突き刺さったままだ。

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もう一つの教えは、マネージャーに対する時のものの考え方だ。

『プレーヤーもリサーチをして、マネージャーを実績で見抜かねばならない』。

この言葉で、私は私の中の依存心に気がついた。

だから今では《優秀なマネージャー》を見いだす力を持つためにも《自立しなければ》と考えている。

人としてあたり前のことだが、同時にとても難しい「自立」…。

極細木は、言った。

『やっぱりね、心うたれる事も、ある訳ヨね』と。

「自立」したプレーヤーこそマネージャーの心をうつことができる。

いや、マネージャーだけではないはず。ディレクターやプロデューサーそして視聴者の心をもうつのだ。

私も「自立」してこの女帝の心をうちたい…!

だからこそ私にはまだまだ聞かねばならぬことがある。

もそもそと体を起こし始めた女帝に、私は最後の質問をぶつける。

「先生、3つ目の壁というのは!?」

「それは…アレよ…ぼ……ぼえ~~」

「だ、大丈夫ですか先生!ト、トイレで吐きましょう!て、店員さーん!!おしぼりと水~!」

空は、白み始めていた…

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